仕事終わり、兄と待ち合わせする。
ここは巨大な歓楽街。
誰も私達の事など気に止めるわけもなく、少し楽な気持ちで歩いた。
「腹減った~」
「何食べる?」
「俺の知ってる店でいい?」
「うん」
兄の行きつけに連れてって貰えるのが何だか嬉しい。
着いた店は、和モダンのシックな居酒屋だった。
「祐君、渋いね」
「そうか?」
私達は、二人掛けのテーブル席に案内された。
薄暗い店内は、上品かつお洒落な感じだった。
二人同時にメニューを手に取る。
店員さんがドリンクのオーダーを取りに来たので二人ともお酒を頼んだ。
「適当でいい?」
「ポテト食べたいな~」
これだけ聞いてれば普通の兄妹の会話。
ふと思う、私達は周りから見たらカップルに見えるかな?
ドリンクが届くと兄はオーダーした。
可愛い店員さんが
「今日のオススメは自家製のおぼろ豆腐です」
ニコニコ笑顔で言うと兄は少し考えてから
「じゃあ、それも」
と追加注文した。
「祐君さ、店員さんが可愛いかったから注文したでしょ?」
「食べたかったから」
兄はニヤニヤしながら答える。
「祐君てさ、本当に女好きだよね~」
「うん、男だからね」
頑張っても兄には勝てないような気がした。
「とりあえず乾杯しよ」
「うん、お疲れ~」
グラスを重ねると兄はビールを煽った。
「美味しい?」
「うん、み~のは?」
私のカンパリオレンジを渡すと一口飲んで「薬の味だ」と笑った。
料理が届いて食べ始めたが、兄はいつもの兄だった。
1時間経ち、私は何だか拍子抜けして
「祐君、食べたら帰る?」
「俺、カラオケに行きたい」
私達は居酒屋を出るとカラオケに向かった。