あれからもう、5年が経ってしまったんですね。和雄は、高校を卒業してす
ぐ働いて母さんを助けるんだと言ってくれましたが、私は和雄を説得して、
まだまだ母さんは大丈夫だから、お金のことは心配しなくていいからと、大
学へ行かせました。アルバイトにも勉強にも精出して、とうとう今年の春に
は、結構いいところに就職できたんですよ。これで私もひと安心、肩の荷が
下りた感じです。和雄も、もうこれからは僕がしっかり働いて、母さんに楽
をさせるからねと、嬉しいことを言ってくれます。
和雄と二人で、二人だけで、信じ合い、愛し合いながら、暮らしてきたこの
5年間、長いようで短かった気もします。もう、人目も気にすることもなく
お互いを見詰めあいながら、前を向いてやってきた積りです。でも、でも、
私の心の中には、もう一つ満たされない思いがあったのでした。
それは・・・・・・
つい先日の夜のことでした。和雄と私はいつものように寝床の中で、しっか
りと抱き合って、愛し合っていました。和雄の分身が私の膣の中に納まって
二人でゆっくりと体を動かしながら、互いの感触を確かめ合っていた時のこ
とです。和雄は私の上になって、私の目をじっと見詰めながら、言ったので
す。
「母さん、僕と結婚しよう」
私は一瞬びっくりして、返事が出来ませんでした。和雄は続けました。
「今まで、何度か、言おう、言おうと思っていたんだけど、僕も就職できて
もう、生活のことも一応心配ないし、母さんのこと、一生面倒みてあげられ
る自信がついたから・・・・」
知らず知らずに涙が溢れてきて、私に覆いかぶさっている和雄の顔が滲んで
しまいました。
「母さん、泣かないで」
和雄はやさしく私の涙を唇で吸い取ってくれます。私は和雄の体をぎゅっと
抱き締めました。
「和雄、ありがとう、でも、結婚するならこんなおばさんじゃなくて、もっ
と和雄にふさわしい若い女の人がいるんじゃないの」
私は涙声でそう言いましたが、和雄は首を振って
「僕、母さんが好きなんだ。母さんじゃないとダメなんだ。年のことなんか
気にすることないよ。ほんとに愛し合っているかどうかだよ、大切なのは。
結婚届なんか出さなくったって、かまわないよ」
私は涙でぐしょぐしょになった顔で、和雄の目を見詰めて、うなずいていま
した。感動と嬉しさで、声にならなかったのです。
「じゃ、いいよね、これから母さんは僕の妻だよ」
「ああ、和雄さん、あなたはあたしの旦那さまね」
「美佐子、美佐子って呼んでいいよね」
「ええ、もう、あたし、あなたの妻ですもの」
「美佐子、可愛い美佐子、愛してるよ」
「あなた、あたしはもう、からだもこころもあなたのものよ。うんと愛して
ね」
和雄さんは、いいえ、私の旦那さまは、ぐいぐいと腰を動かして、私の気持
のいいところを突き上げてきます。私も、新しく私の主人となった和雄さん
の腰に脚を巻きつけるようにして、それに応えて行きます。永遠の愛を誓い
あった二人の体は、もう一つに溶け合って、夢の世界を漂っていくのでした
やがて、二人ともぐったりとなって、並んで横たわりました。私の体には
快い余韻が漂っています。このなんとも言えないまったりとした時間が大好
きです。
その時和雄さんが言いました。
「今度ボーナスが出るんだ。そしたら、どこか山奥の静かな温泉に二人で
行こうよ。僕たちの新婚旅行だよ」
「えっ、新婚旅行? うれしいっ、いこ、いこ」
「2,3泊して、いっぱい愛し合おうよ。誰にも遠慮しないで」
私はうなずきながら、和雄さんの顔をじっと見詰めました。すてきな顔、私
の大好きな顔、男らしくて、それでいて、とっても優しさが籠っていて、い
くら見ていても見飽きることなんかありません。和雄さんの頬を両手ではさ
んで、唇にちゅっとしてあげました。
「あたし、もう、しあわせ、こんなにしあわせになって、いいのかしらって
思うほどしあわせよ。もう、このまま、死んじゃってもいいくらい」
「死んじゃっちゃダメだよ。まだまだこれから、いくらでもいいことあるん
だから」
和雄さんは私のことを「可愛い美佐子」と呼んでくれます。私は和雄さんに
「ウフーン、あなたぁ」と甘えます。
私はとうとう一つだけ満たされない思いだったことを、おねだりすることに
しました。いままで心の中では思っていたんですけど、口にはどうしても出
せなかったことでした。
「ねえ、あなた、あたし、和雄さんの赤ちゃん、生みたい」
「えっ、赤ちゃん?、でも、大丈夫なの、美佐子?」
「ええ、あたし、まだ赤ちゃん生む力は、残っているのよ。それに最近の医
学なら、すこしくらい高齢出産でも大丈夫よ」
「じゃ、僕の赤ちゃん、生んでくれる? 僕と美佐子の赤ちゃん」
「ええ、あたし、がんばるわ、あなたの赤ちゃん、生むからね、あたたも
がんばって」
私は和雄さんにいまでも恋しているのです。その和雄さんの赤ちゃんを生み
たい、それは女としての願いです。愛しているひとの赤ちゃんをみごもるの
は、女としていちばんの願いです。私はその思いをついに現実のものにする
決心をしたのでした。
一応、ここで終わらさせていただきます。このあとのことは、もしご報告す
るようなことがあったら、させていただきます。私のつたない告白を読んで
いただいたみなさま、ほんとに有難うございました。