僕は父と大喧嘩をした。
高校2年の夏休みのある日の夜のことだ。
そもそものきかっけは、生活態度を注意されたことだった
そのうちだんだん、日ごろのあれこれ(ケータイの料金のこととか成績の
こととか)
を、くどくどと、延々と、説教が続いて盛り上がっていった
父はビールを飲んで、少し酔っていた
さいしょは黙って聞いていたけど、あんまりしつこいので、つい言い返し
てしまった
「ちゃんとやってるよ」とかなんとか……
売り言葉に買い言葉というのか、そのあとけっこうきつい口論になった
結局のところ、父の
「じゃあ、学校なんかやめろ。受験なんかやめろ」
という言葉に
「わかったよやめるよ」と捨て台詞を残して、僕は家出した
「家出」といっても、じつは行先は決まっていて、
電車で一時間ぐらいのところに住んでいる祖母の家だ
そこは母の実家で、古い一軒家で、祖母が一人で暮らしている
途中のコンビニで買った300円ぐらいのスイーツを手土産にして
祖母の家を訪ねた
「こんにちは」
少し照れて安物のスイーツを差し出しながら挨拶すると、
祖母はもう母から電話をもらっていたらしく
「また家出してきたの」とあきれていた
普段は翌日ぐらいに帰るのだけど、夏休みということもあって
僕はそのまま祖母の家に泊まり続けた
四日目ぐらいに、母が様子を見に来た
父の夕食を済ませてきたらしく、時刻はすでに夜になっていた
「いいかげんに帰ってきなさいよ」
と母が言った
少し怖いところがあるけど、根はやさしい母だ
(ここで本当は「母は美人でスタイルがいい」とか書けばいいのかもしれ
ないけど、
でも、普通にそのへんにいるおばさんだ。
あえて言うと、「ビズリーチ!」の人に少し似ている)
僕は、父は大嫌いだが、母のことは本当は少し好きだった
だから、少しごねてみた
「いやだ。帰らない。学校やめる。受験もしない」
「何、バカなこと言ってるの」
「だって、クソおやじがそういった」
「お父さんも少し反省してるし」
「だったら、本人が謝ってくれよ」
そんなことを言い合っているうちに、母も泊まっていくことになった
たしか、翌日は土曜で親父も休みだったと思う