無意識で頭の中で流したBGMを目の前の人が当然歌い出した。
そんな摩訶不思議な経験はありますか?
ーーー
私はその日、朝からとてもムラムラしていました。
きっと前日、飲みながら友達と話した女同士の猥談。
寝ていると時に見てしまったエッチな夢。
そして排卵日間近の生理前のホルモンバランス。
あらゆる条件が揃ってたのかもしれない。
でも朝のアラームは容赦なく鳴り続け、重力に逆らって重たい頭をなんとか持ち上げ私は会社へいく準備をした。
いつもの朝の満員電車の地下鉄。駅構内の「痴漢は犯罪です!見かけたら駅係員まで声をかけてください」との見慣れたポスター。
今まで私は電車での痴漢被被害に遭ったことはなかった。
それは元ヤンキーを思わせるキリっとした人相の悪い顔。
それか、最初から「私は痴漢なんて恐れてない」と気の強さをアピールするかのような挑発的な短いタイトスカートが私を守ってくれていたのかもしれない。
その日も私は見慣れた痴漢抑止ポスターに気を止めることはなく電車の中に乗り込んでいった。
すると満員電車の中、、私の前に男の人が立ってきた。
現場仕事の夜勤明けなのか、、すでに疲れた表情をしている20代くらいの作業員風の男。既に酒を飲んでいるのか頬が少し赤くなっている。
私はふと頭の中で、、(酔ってるのかな?今日は痴漢していい日だよ?笑)とその虚な表情をする男にテレパシーを送ってみた。
そして、、、電車が最も揺れるいつもの経路に差し掛かった途端、、
(あ!!!!!こいつ!!!!)
思わず私は全身がビクっと条件反射してしまった。
男は激しい電車の揺れドサクサに紛れて、、私のスカートの中に手を入れフロント部分を掴んできたのです、、。
周囲を見てもスマホをいじる人、Bluetoothイヤホンをつけて小刻みに頭からを揺らしながら天井を向いてる人、立ちながら眠ってる人、私の異変に誰も気がついていない。まるで1人の世界にはいって外界との接触をシャットアウトしているみたいだ。
(こ、声が出ない、、、!)
聞こえるのは自分の心臓部の鼓動。電車のアナウンスを始め、ありとあらゆる音が聞こえなくなる。
恐れを知らぬ「無敵の男」の指は私の下着の中まで侵入し、、クリトリスの位置まで到達してきた。
なんてタイミングの悪い、、朝からムラムラしていた私はエッチな妄想をしながら通勤していた為、あそこが若干湿っていたのかもしれない。男の指が、、男の指が、、、とても滑らかに私のクリの上を滑っている感じがした。
私は緊張や不安でドキドキしているのか、興奮とスリルでドキドキしているのか、もうわからなくなった。
思考回路が停止し頭の中が真っ白とはあの時の事をいうのだろうと思う。ただ性感帯を激しく愛撫され、、脳は感じていなくても、体は感じている。そんな不思議な感覚だった。
「次は◯◯前ー」
(!?もう◯◯前までついたんだ、、、!〉
時間の感覚もわからなくなっていた。
主要駅である◯◯前に到着すると、一気に乗客は雪崩のようにドアへと歩いていく。
その無敵の男も乗客の雪崩に乗って逃げようとしていった。
男から離れて我にかえった私は男の後をつけ、、、改札手前で手首を掴み声をかけた。やっと本来の気の強い自分に戻ったような気がした。
私「待ちなさいよ。なんで止められたかわかってるでしょ?」
男「あ、ああ」
私「ああじゃないわよ。、!酒くさ!飲んでるの?」
男「あぁ、、飲んでる」
なぜすぐに警察に突き出さなかったのか、、それはいざ相手を捕まえてみると、相手はまだあどけなさが残っている男の子だったからかもしれない。
私「酔ってるのか知らないけど、やっていいことダメな事くらいわかんないの?」
男「別にどうでもいいんだよ。捕まっても」
私「どういう事?もしかしてヤケクソになってるの?何だか知らないけど」
男「警察よべば?」
私「警察呼べばって、、、あなたの態度次第ではいつでも呼んであげるわよ」
男は不貞腐れて駅構内の柱にしゃがみだした。
そして、、それ以上の会話は何も出てこなかった。無駄に時間だけが経過していく。
このままでは会社に遅刻するのは間違いない。かといって私はせっかく捕まえた男をみすみす見逃してやる気持ちにもなれなかった。
私はしゃがむ男の目の前で会社に欠勤の連絡をし、、もう一度男を上から見下した。
男「結局どうすんの?いつまでここいるの?」
私「とりあえず、、、場所かえようか。逃げ出せると思わないでね?バッチリと駅構内のカメラにあなたの顔うってるよ?」
男「今更にげねーよ。逃げるならとっくの昔に逃げてるよ」
こうして私は男と駅の改札を出ていった。そして少し歩いた場所にある公園へと入っていった。
私「水とか飲んだほうがいいんじゃない?」
男「水を買う金がない」
私「はぁ?水買う金が無いってどんな生活してんのよ。酒飲む金はあるんでしょ?」
男「関係ないじゃん」
そして私は自販機でスポーツドリンクを購入し、男へ手渡した。男は私が警察へ被害届を出そうとしていない事を薄々感じてきたのか虚な表情から少し安堵のある表情へと戻っていた。
私「じゃ聞くけど、、いつも酒のんで女の人に痴漢してるの?今日が初めてじゃ無いでしょ?」
男「なに?取り調べ?」
私「ちゃんと答えろ」
男「初めてだよ」
私「初めてにしては随分と手慣れてたよね?」
男「手慣れてた?どういう意味で、、?」
ーーー
私は思わず顔が赤くなった。何気なく発した「手慣れてた」という表現だけど、捉えようによっては「上手かった」とも聞こえる。少なくとも男はそう捉えたようで少し笑っていた。
私「、、、ちゃんと真面目に答えろ。笑」
男「じゃ俺からからすれば、、オネーサンも痴漢され慣れてたよね?」
私「どこが!初めてだよこんな想いしたの!」
男「ぜんぜん抵抗してこなかったし、、むしろ濡れてたじゃん」
私「濡れてないよ!」
男「へー。まぁいいけど」
私「なんで私を選んだの?」
男「オーラ」
私「オーラ??」
男「うん。オーラ。自分では気がついてないんじゃない?ものスゲーエロいオーラ出してたから」
私はそんなものがあるのか不思議になった。確かに朝からムラムラしていたし、(今日は痴漢していい日だよ笑)などと頭をよぎったのは事実。でもオーラなんて信じられない。
私「そんな風に勝手に私の事を解釈するな」
男「そうだね。では、、コホン。。会社で嫌な事あってヤケクソなって酒飲んで、、そんな勢いで痴漢したのは謝ります。ごめん。。なさい、、」
私「へー。わりと素直に謝れるんだね」
ーーー
男「じゃ、、示談成立?」
私「ま、、改悛の情、反省の色も見えるし、まだ若いし未来があるから。。今回だけは特別に見逃してあげる」
男「やった!」
私「やったじゃない!喜ぶな!」
男「オネーサン仕事休んだのでしょ!?今から飲み行かない!?」
私「はぁ!?水買う金すらないっていってたでしょ!」
男「ATMいったらあるから!お詫びに酒おごるよ!!」
こうして奇妙な縁で知り合った若い男と私は公園で午前中からお酒を飲む事になってしまったのだ。
閑話休題、、、、、、