前の彼氏の二股を知り、気持が沈んでいた頃の話です。
彼氏の空々しい嘘に気付かなかったことで自分が情けなく、夜も眠れずにいました。
仕事も身が入らず、何とか出社はしても、やる気などまったく沸いてきませんでした。
そのうえ、その日は朝から雨。お昼近くになっても止みそうには思えず、私は上司に申し出て、午後から早退することにしたんです。
会社を出てから、雨のオフィス街を暫く歩いてました。
雨はかなり強く、歩道の人通りもまばら。車道寄りに歩いてると、車に水しぶきを掛けられそうになる程でした。
そんな状況なのにも関わらず、傘もささずに前を歩く学生服を着た高校生らしき男の子が前を歩いてるのに気付きました。
私は少し急ぎ足になり、その子に追いつきました。
髪も制服の肩口や背中もすっかり濡れたその子を見て、ごくごく自然に声を掛けました。
「傘ないの…?入る…?」
その子は私の顔を数秒見てから無言で頷きました。
幼さの残る顔立ちから1年生1かな…?と思いました。そして、平日の昼間。試験の期間でもない時期に何故?とも。
小さな折り畳み傘。遠慮がちのその子は身体の半分以上はみ出てました。
「クスッ…君、大きいから傘に入りきれないね…」
私は彼氏にするようにその子に身体を密着し、寄り添いました。
その子はその瞬間、ぴくっとするのを感じました。
可愛い…。私はその子に対し、普段ならあり得ない感情を抱きました。
「ねぇ…、ドライブしない?…私、そんな気分なの…」
「え?…」
その子は当然のように驚いた反応を示しましたが、断ってはきませんでした。
二人はそのまま駅前まで歩き、私はレンタカーを借りました。
「何処か行きたい…?」
その子を助手席に乗せ、海の見える場所に向かいました。
車中は二人とも、殆ど喋らず、じっとラジオを聞いていました。
着いても雨はまだ降っていて、二人は車の中から海を見てました。
「誰もいないね…」
私はそう言ってリクライニングを倒しました。彼の唾を呑み込む音が聞こえました。
私がその子の手を握ると、その子も心に決めたようでした。
「優しくしてね…それと、制服とか…汚さないようにね…」
その子はぎこちなく震えながら私に近づいてきました
私はその子の最初の女になりました。
制服についていた名札。それ以外、その子の事は何も知りません。