兄がいます。
むかしからこの兄には逆らえませんでした。
10歳も年が離れていて兄というよりは父親のような存在のひとでした。
お互いが家族を持つようになった今でも関係はつづいていて、兄に呼び出されれば夫や我が子よりも優先して出掛けてしまう私です。
本当にひどいことをされます。口では言えないような恥ずかしいことや眉をひそめたくなるような汚らしいことだって当たり前のようにされます。
兄は性倒錯者で私にもそれを求めるのです。
介護用のおむつをあてられて大きい方のお漏らしをしたまま街中を歩かされたこともあります。
兄は大いにたのしんでいましたが、私は生きた心地がしませんでした。
でも、それを心のどこかで嬉しがっている私もたしかにいるんです。
小学生の低学年のころからいたずらが始まり、ナプキンを必要とするころにはすでに兄のものを受け入れる身体になっていました。
兄が怖かったこともありましたが、淫らなことをされていると気持ちよくて口には出しませんでしたが、自分からしてもらいたがっているようなところもありました。そういういやらしいところがあるのは、やっぱり兄妹なんだなって思います。
先月、兄の連れ合いがガンで亡くなりました。
兄の子供たちは大きくなってひとり立ちしているし、義姉のいなくなった家に兄はひとりきりです。
その家に来て一緒に住め、と兄から言われました。つまり、夫と別れて兄と暮らせと言われたんです。
普通なら悩むはずなんかありません。
家族を捨てることになるんです。
でも、私は悩んでいます。
すぐにでも兄のところに行きたい気持ちが日に日に強くなって、この気持ちが抑えられそうにありません。
おかしいですよね。そんなのあり得ないと思う人たちのほうが圧倒的に多いと思ます。
でも、理屈じゃないんです。
私のことを心底理解して心から愛してくれる。
身体の相性だって兄以上に肌に合うひとを私は他に知りません。
夫よりも兄に抱かれるほうが、はるかに気持ちいいんです。
ひどいことばかりされるけど、兄を嫌いじゃありません。むしろ、こんなに強く激しく束縛してくれる兄がこの上なく好きでなりません。
ずっとそうでした。
だから、兄との関係は今まで一度として切れたことがないんです。
異常者と思われてもいいです。
子供の頃からずっと長いことそばにいて、夫などよりも全然頼りにできて、親のことでも気兼ねなく話せて、そして私のいやらしい本性を十分に承知している男が私の兄なのです。
多分、答えは決まっています。
私に兄を捨てることなんてできません。
ひとつだけ心配事があるとすれば、それは娘のことです。
まだ小学校に入ったばかりで一番可愛い盛りです。離れたくはありません。
一緒に連れて行きたいけれど、でも兄には前科があります。
まだ本当に子供でしかなかった私を裸にしておもちゃにしていました。
私の股間に顔を埋めて息を荒げていた兄の姿は今でも脳裏に焼き付いています。
自分でもそういう女の子が好きだと平然と私に言います。
娘を見るときの目つきには、私にいたずらをしていた頃の兄の顔を思い出すことが何度もありました。
娘も同じ目にあったらと思うと足が震えます。
でも、兄に逆らえない自分の姿も見えているんです。
それが怖くてならないんです。