イトコと体験した時の話なので、かれこれ10年は経過してしまいました…
突然ですが、幽霊って信じますか?
当時の俺は信じてました。
今は…存在しているとは思いますが、テレビや本にあるような不気味な存在とは考えていません。
いずれは科学が証明する、今は証明できないだけの存在だと思っています。
そんな体験から始まるので、嫌いな方は飛ばして下さい。
冬休みと夏休みは母の実家に泊まりに行っていた。
母と弟の三人で冬休みは二泊位、夏休みは四泊位だ。
俺が中三の夏休み、その年も変わらず泊まりに行った。
既に親と行動を共にする事が恥ずかしく、本来は嫌なのだが祖父母と伯父さん夫婦からお小遣いが頂ける(笑)
バイトも出来ない俺からしたら貴重な現金収入だ。
イトコは既に高校生、昔は遊んでくれたが中学に上がる頃にはあまり遊ばなくなっていた。
さて、先にも書いたが俺は幽霊を信じていた。
忘れもしない小学三年生で初の金縛り、というか一年生の頃からおかしな事はあったのだ。
一年生の頃に自転車に乗っていて原チャリの大学生だか高校生と正面衝突、顔面強打で歯は折れるし大出血、暫くは鏡も見せてくれない一ヶ月の寝た切り生活だった。
一日布団から出して貰えず、食事も噛めないから流動食、ずっと布団だから日中も寝てるから朝は誰より早く目が覚めた。
朝日が差し込む寝室の障子の向こう側にいつも人影が見えていた。
その影を何故か怖いと思わずひたすら眺めていたのだ。
障子の端から端へと行ったり来たり、何かを持ち上げる様にしゃがんでは何かを持ち上げ下ろす。
そんな事を繰り返す影を見ながら『あぁ…紙の束を持ち上げてるんだ…』と考えていた。
(障子の向こう側に俺の落書き用の紙の束があったから)
これを毎日見ていた…。
とりあえずこの影を大人の男とだけ理解していた。
当時の親父と同じ位の歳、そしてその人はこちらに気付いていない、と。
邪魔しちゃいけないから覗いて確認するのは止めておこうとも考え、というよりそう決めていた。
体が普通に戻ると以前のリズムに戻り、俺はそんな事をすっかり忘れていた。
そして三年生の時に金縛りに合うまで忘れていたのだ。
そこから時々金縛り、人の話し声、変な気配と段々酷くなって来た。
時々視界にも誰かがチラリと見えたりもした。
親に話すも神経質だから、と取り合わない。
埒があかずにいた。
気にしない、寝る前には念仏を唱える、中学に上がる頃には家を建て替えて自分の部屋も貰ったので音楽やラジオを掛けながら寝るという事を日課にしていた。
母の実家に泊まりに行く時も念仏を小声でモゴモゴ唱える事だけは忘れなかった。
母の実家は大きい、そして古い。
今は建て替えてしまったが、当時は茅葺き屋根の田舎屋敷という感じだった。
トイレは汲み取り式、しかもトイレも風呂も屋敷の外に建っている。
トイレも風呂も一度外に出なければならない。
イトコはそんな家が嫌で嫌でしょうがなかったらしい。
ま、当たり前だ。
イトコは綺麗な顔立ちで、親戚の間でも美人と言われていた。
中学に上がる頃には表に干してあるイトコの下着を見てはちょっと下心も湧いていた(笑)
『ちょっと欲しいかも…』
という感じだった。
その日はなかなか寝付けなかった。
空気がザワザワする、というか今日は金縛りとか何かあるかも…と感じてしょうがなかった。
しかもトイレにも行きたくなって来た。
『無理無理…行けないって』
朝まで我慢しよう…だから早く寝てしまおう、と考えれば考える程眠れないし限界が近づく。
『漏れるから行くか…』
我慢を諦め、俺はコソコソとトイレに向かった。
サンダルを履いて玄関から猛ダッシュ、何も起こらない事を祈りながら駆け込み、一番抵抗できない放尿の時間が苛立たしく感じていた。
やっと無事に終わり、ホッとしながらトイレの扉を開けると外に出た。
すると左手にあるかつては豚小屋だったらしい物置小屋が視界に入る。
しかも物置小屋の出入口に人が立っている。
『嘘だろ…』
そう思い、全身から冷や汗が出そうになりながら努めて冷静に右を向く。
あくまで気付かないフリを…自然に、自然に家に戻るぞ…
多分今見たらギクシャクしながらかなり怪しい歩き方をしていただろう。
ギッチョンガッチョンとロボットの様だったかも知れない(笑)
視界はなるだく足下に、走りたい、叫びたいのを我慢していた。
やっと玄関前にたどり着き、足下を見ながら手探りの様に玄関の取っ手に手を掛けようとした時だ。
ガラガラガラ…
ゆっくり玄関が勝手に開いた。
とうとう俺は我慢出来ずに「ひっ!」だか「ウォッ!」と声を上げた。
そこには白い二本の足、青いサンダル。
妙に生々しい足に顔を上げればそこにはイトコの由美ちゃんがいた。
「あっ…驚いた?ゴメンねww」
俺は安心したのと驚いた余韻とで何と言えば良いか解らず、口をパクパクさせて咄嗟に言葉が出なかった。
「トイレ行ってたの?」
いつまでも立ち尽くす俺に由美は聞いてきた。
「ウン、ウン」
ちょっとカタカタ震えながら短く返事をすると由美は口を押さえて笑だした。
「ウフフフフ!!もうそんなに驚いて~!」
どうやら由美は俺がガタガタ外に出た音で目が覚めて自分もトイレに行こうとしていたらしい。
「や、あ…だってアソコに誰かが…」
よせば良いのに笑われたけど俺にも理由があるんだ!と弁解したかったのだ。
「え!?ヤダ…どこどこ?泥棒?」
由美は俺が振り向いた方に顔を向けた。
「いや!居ない!誰も居ないよ!」
俺は自分の勘違いかも知れないし、何を見たとは肯定出来ないので適当に誤魔化した
しかしこれは逆効果だった。
「え?何?人じゃないって何?」
「お化けかと思って…」
「や、やめてよ!私はこれからトイレなんだから…」
由美は眉を寄せて驚いていた。
「いや、大丈夫!勘違いだったから」
慌て否定するすると、もう遅いよ!と返された。
結局気味悪がる由美に付いて再びトイレへ行くことにした。
水洗では無いから水の音では消せないがここは野外トイレ、虫の鳴く音が聞こえている。
しかしそれでも微かに(シャーッ)と音がした。
「聞こえた?」
「誰の声も聞こえてないよ!」
幽霊の事かと思ったが話が上手く噛み合わず、由美のオシッコの音だと気付いたのはその直後の会話からだった。
お互いに目が冴えてしまい、屋敷に戻ると居間に豆電気だけを灯して二人で座っ。