私はTさんのメモが見たくて足早にビルの影に駆け込んだ。
開いたメモには番号が書かれていた。
ネオンに照らしながら電話をかけた。
「あ、ちょっと待ってて」
出るには出たが電話はすぐに切れた。
何分待てばいいのかと考えてると折り返しかかってきた。
「もうタクシー乗った?」
「まだ」
私は隠れてるビル名を告げた。
「俺もそっち行くから待ってて」
五分程でTさんが小走りでやってきた。
「ごめん、ごめん」
「絡まれた?」
「そう。もう一軒行きましょうって」
「Tさんイケメンだから」
Tさんは、ハハッと空笑いをした。
「どうする?どっか行く?」
「もうお腹いっぱい」
「だよな」
二人とも暫く考えた。
「ホテル…行く?」
Tさんが様子を伺うように聞いてきた。
「いいよ」
「マジで?」
「うん」
夜の繁華街を手を繋ぎホテルまで歩いた。
右手に大きな花束を持っているせいか、たまに人に見られた。
「ねーねーこれさ、Tさんからのプレゼントに見えるかな」
「そうかもな」
「本当は幸せな花束じゃないのにね」
Tさんはそれに対して何か言ったけど、騒音に掻き消されよく聞こえなかった。
ホテルに入ると花束をソファーに放り投げた。
「ひでー」
「ひどくないよ」
ベットに並んで座った。
何を話したかあまり覚えていない。
ただ、辞めた理由はまだ言わなかった。
余りにも自分が惨めで同情をかいたくなかった。
「お風呂入れて来まーす」
私はおどけてお風呂場に入った。
敷居を跨ぐ時にふらついた。
「おい、大丈夫かよ」
「大丈夫、大丈夫」
「俺が入れるから星さんは座ってな」
「Tさん優しいねー」
完全に酔っ払いの私はヨタヨタとベットに戻った。
Tさんも戻ってきて横に座る。
私達は自然にキスをしてた。
Tさんがベットに立ち膝になりスーツを脱いでいった。
下着を下ろす前
「俺、あまり自信ないけど」
そう言って全裸になった。
Tさんは半立ちだった。
「星さんも脱いで」
「やだ」
「ちょっと」
「名前で呼んで」
「下の名前で?」
「うん、名前なんだっけ?」
「星子」
「星子も脱いで」
「うん」
私も全裸になった。
お風呂は意味なく、私達は体も流さずに貪りあい愛し合った。
不思議と抱かれたら気持ちが楽になって全て話せた。
「そんな酷い事…今度会ったら睨んでおくわ」
「いいっていいって。あんなやつ」
「健気だね」
「だってTさんの方がイケメンだもーん」
抱きついて横になった。
「寝るか?」
「だね」
私達は、気持ちよく眠りについた。
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