他の人達より先に昼休みに入ったA子と俺。
いつものように社員食堂へ向かおうとすると、A子に作業着の腰の辺りを引っ張られ、
「・・・お弁当作ってきたの・・・もし良かったら、いつも仕事してるとこで一緒に・・・」
A子に誘われ、断る理由もなくA子の作ってきた弁当を頂くことに。
いつも仕事している場所に行くと、他には誰もいなくて、いつも動いている機械も止まっていて、静まり返っている。
床に広げたダンボールを敷き、その真ん中に小さめの通い箱を置いて、テーブル代わりに。
向き合うようにすわり、A子が作ってきたという弁当を・・・
いつもなら、冗談を言い合ったりしているのに、この時ばかりは言葉少なめ。
俺が先に弁当を食べ終え、弁当箱を渡された時のように包んでいると、
「・・・軽蔑・・・した・・・?」
小さな声で聞いてきた。
「・・・なんで・・・?、前に話してた中でそう言う事させてみたいって言った事あるよね?」
A子は俺の言葉を聞くと、まだ食べきっていない弁当に蓋をし、その弁当箱を持ってきた時の様に包み直して、
自分のバックの中に、俺が食べた弁当箱と一緒に戻し、大きく息をした後、軽く背伸びをして周りを見回し、
誰もいないことを確認し、テーブル代わりにしていた通い箱をよけて、
作業着のボタンを一個一個・・・
「・・・上はこんな感じ・・・」
作業着の下には何もつけておらず、服を着ていると気が付かなかった、手のひらには収まりきれない大きさの胸が・・・。
恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いているA子。
A子は俺を誘っている・・・でも今は・・・妙に冷静な俺がそこにいた。
ゆっくりA子を抱き寄せ耳元で。
「今はまだ・・・A子を抱く勇気がないんだ・・・ごめん」
A子は小さく頷き。
「謝るのは私のほうだよ。困らせるような事してごめんね」
10年も前の事、この辺りは少しうる覚え・・・。
だが、この日の午後の事は今でも鮮明に覚えている。
昼休み終了のベルが鳴り、部署ごとに一旦集合し社員からもう一度担当割を決められた。
ペアは午前中と同じで、棚卸しをする場所が違った。
俺とA子は、自分達が検査をした製品の一時置き場を担当することに。
棚卸し前1週間、後工程で様々な不良が発生していたので、いつも置く場所とは別に、
工場2階の製品仮置き場の一部にも置かれていた。
自分達が常に作業していることもあって、1箱に何個入っているかは把握済み。
箱数を数え、一箱の入り数を掛け算すればいいだけ。
いつもの置き場は、10分足らずで終わり、2階に上がろうとエレベーターのあるところへ良くと、
故障中のため使用禁止の張り紙。
仕方なく階段で2階に上がろうとすると、A子が躊躇っている。
「A子に、手に持ってるもの俺が持つから」
そう言ったところで、A子は階段を上ろうとしない。
それもそのはず。
階段の下で他の部署の人が、必死に螺子の数を数えている。
踏み板が網になっているので、階段を上っているとき、下で作業をしている人が上を見上げたら・・・。
「一緒に上るから壁側」
そう言って、A子の動きに合わせて、
「行くよ」
そう声をかけて、一気に階段を2人同時に上り、仮置き場に。
奥の方に仮置き場があり、そこにいくまで、製品に棚卸し終了の札が付いているのを見ていた。
自分達が検査した物が積み上げられたその場所。
よく見ると、いくつかの箱の入り数の所にボールペンで-1、-2と書かれていた。
「これ、全部箱の中身見て、詰め替えしないと駄目かも」
A子が不思議そうに俺の顔を見て
「何で?」
俺は、入り数の所に書かれた。-1やー2という数字を指差した。
「何これ、1個とか2個抜いてるって事?」
少し不機嫌になるA子。
「多分そうだよ。だから1箱1箱中身確かめないと」
そういって、1つ目の箱を下ろし中をあけてみると、
案の定というか、中身が1個少ない状態になっている。
さらに、-2と書いてある箱を下ろし中を開いてみると、-2ではなく-4になっている。
A子は、-4の箱から1個をー1の箱に入れ箱を閉じ、入り数を訂正している。
自然と作業が分担され、3時の休憩時間までに3分の2位の箱の入り数検査を終えた。
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