2021/09/10 14:15:59
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パンツを履いて仕切り直そうとも思いましたが、人が少ないと聞いたことから、ノーパンのままでも大丈夫かもと変な自信を持って、滝へと向かいました。
先程の夫婦が言ってた通り、滝までは誰とも会いませんでした。
滝についた私は、流れる滝を眺めながら自然の壮大さに感激していました。水が流れ落ちて溜まっている水辺に近づき、両手をそっと水の中に入れて掬い上げました。冷たい感触が手のひらに伝わり、疲れも一気に吹き飛びました。
「こんにちは。お一人ですか?」
背後から声をかけられた私は、座ったまま首を後ろに回して「はい」と返事をしました。
私と同年代ぐらいだろう男性が立っていました。
「ここは本当に空気が澄んでいますね。」
「はい、本当に気持ちがいいです。」
「しばらくここで滝を見られるのですか?」
「そのつもりですよ。」
「もしよろしければご一緒してもいいですか?」
私は返答に迷いましたが、清潔感が感じられ丁寧な言葉遣いから、「私でよろしければ…」とついつい応えてしまいました。
「本当ですか?ここにはよく来られるのですか?」
「いえ、今日が初めてなんです。どこかいいところありますか?」
「ありますよ。でもあなたの格好では綺麗な服が汚れてしまうかもしれません。」
「服ぐらいクリーニングに出すので大丈夫ですよ。」
「少し歩きますが大丈夫ですか?」
「はい」
「じゃあ行きましょうか?」
私は彼の横に立ち、一緒に歩いて行きました。
「ところでお名前は何というのですか?私は青木と言います。」
「私はりんごと言います。お仕事は何をされているのですか?」
「自営業を営んでおります。コロナの影響で客足がばったり途絶えて、このように平日に時間が取れるようになったのです。りんごさんは主婦とかですか?」
「ううん、私は仕事が好きだから働いてますよ。でも、今日はお休みなんです。」
と何気ない会話を交わしながら、坂道を登って行きました。
「ここ危ないです。急な坂道になっているので滑らないように気をつけて下さい。先に私が登るので上から手を伸ばしますのでしっかりと握って下さい。」
男の人が大股で登らないと上がれないほどの岩、湿気で足元が滑りやすくなっていました。彼が先に登り私の方に手を差し伸べ、私はその手をギュッと握りしめてゆっくりと登って行きました。
しばらくすると
「りんごさん、着きました。どうですか?滝の上に登ってきました。」
「うわぁ初めて見た!」
「すごくないですか?ここに座れるので腰を落として少し休みませんか?」
「はい、ちょうど喉が渇いていたので」
滝が上から眺められ、しかも誰もいない。こんな絶景ポイントがあるなんて知りませんでした。
「ここは地元の人間でもほとんど知られていない場所なんです。登るルートを知ってる人しか登ることが出来ない、まさに秘密の場所なんです。」
目を輝かせながら笑顔でそう言った彼に、私は思わず笑顔になりました。
「隣に座ってもいいですか?」
「はい」
彼が座ると、私は少し彼の方へと身体を動かし、触れるか触れないかぐらいの距離に座りました。滝の音が思いのほか大きくて、会話の声が聞こえないかと思いましたので…