去年の11月俺は上司からいきなり「屋敷(俺)、来年から出張いけるか?」と言われた。わが社でいう「出張」という言葉の意味は、海外出張の事を意味している。(国内出張は一切ないから)
俺「出張ですか??」
いつかは出張がある。というのは面接の段階聞いていた。「早ければ入社後1年くらいで出張はいりますが、対応できますか?」という面接での問だった。もちろんそれに対し、「いつでも対応可能です」と答えたからこそ、仕事の面接に合格したようなものなんだが。つまり断る訳にはいかない。
基本的に電子部品を作っているわが社では、中国、シンガポール、ベトナムに工場があって、その工場への管理職ということで毎年何名かの社員が交代で出張に出ているのだった。そして入社して2年目の俺にも、とうとうその役割がやってきたのだ。
ただ、長いのか短いのか、救いは短くて4か月。長くて6か月程度との事。俺はどれくらいの期間になるのかはわからないが、問題はいく場所である。
俺「場所はどこなんです?」と聞いたところ、場所は「大連だ」との事だった。
よかった・・・w と思た。というのも先輩社員から海外出張の話は聞いていたが、シンガポールは英語がなければだめ。ベトナムも英語はいるが、さらに不衛生なので、それに対応できる柔軟な性質が必要との事。しかし中国はハードルが低く、、「大連は日本語だけでok どこあるいても日本人いるし、スーパーでもある程度日本語で書かれてるし、飲み屋も日本語でいけるからw」と聞いていたからだ。
英語も話せない、中国語も話せない俺にとっては大連がどういう場所かは知らないが、とにかく大連でよかったと思った。ただ冬場は凍死するほど寒いぞ。とだけは言われたのだった。
そして今年の1月 正月休みが終わった瞬間、俺は旅行用トランクに荷物を詰めて、大連国際空港へと到着した。なんっていうのか中国の北側って、イメージが北朝鮮と似ているというか、やたら無機質な感じだったのを覚えている。そして、とにかく寒い。寒い。寒い。
降り口のゲートには既に同じ会社の社員が2名で俺を待っており、「よく来たなww」と歓迎してくれるのだった。ここでついでに俺の年齢も紹介がてら、俺33歳 先輩社員2名は35歳、40歳くらいの人だった。
それから俺はこれから最低4か月は生活する会社の寮へと連れていかれた。都会部分から車で離れ、風景がさらに無機質な感じになっていく12階建てアパートに連れていかれ、建物に入る前は、なんて大きい建物なんだ。と思ったが、不思議だったのは異常なまでに多い玄関ドアの数。実際に中にはいってみると、やはりハチの巣のように多数の部屋があるもので、1部屋1部屋は狭かった。(俺の部屋は4畳6畳の2間だけ)先輩に「日本のマンションと違いますね」と聞いたら、「ま、中国の言っても大連だからな。人口密度は半端ないぞ」との事だった。
その部屋に俺は旅行用トランクを置き、それから工場への出社方法(つまり通勤方法)等を聞いたり、そして実際に工場へと視察に行き、工場内でこれから俺が配属する部署の事務所等を案内されているうちに、到着1日目はあっという間に過ぎていった。
先輩社員は「明日と明後日は工場もないからゆっくり休んでくれ。そして明日、どこか飲みにでも行くか。生活の部分も教えとかないといけないからな」
ということでその日はゆっくり休み、翌日、俺は先輩社員に連れられて近所のスーパー、駅、銀行、病院等を案内された後、大連の繁華街にある飲み屋へと連れていかれたのだった。
飲み屋では日本語が日本人と変わらないくらい上手なママと、その手伝いがいる、スナック形式のところだった。そして俺はこれから、そのスナックを拠点として、仕事が休みの時は飲みに行くという生活が始まっていくのだった。
週5日仕事して、その5日目に大連市内に繰り出し飲みに行く。そして翌日の1時、2時くらいまで飲み歩いてタクシーで家に帰ってゆっくり休む。次の休みは生活用品をそろえたりして家で過ごす。そんなライフスタイルが確立されていくのだった。
そして慣れてきた大連生活1か月目。俺はいつも行ってた飲み屋に、初めて見る女の子がカウンターに座っているのを見かけたのだ。どうやら、この店のママや手伝いとは仲が良いらしく、中国語であれだこれだとペラペラ話しているのである。
もうママとも仲が良くなっていた俺は、その女の子が、けっこう美人なために下心満載でカウンター席を移動し接近し、俺は酒によった気の大きさもあって「どうもw」と握手を求めていったのだった。
女の子は最初、お前、誰? みたいな感じで一応、握手はしてきたが、正直(声かけなきゃよかったかな)と俺も少したじろいた。するとママがすぐに、「こちらの方はね。」と俺の事を紹介し、女の子は「ふーん」と言っていた。なにか印象悪いこの女。
年齢は20代半ばくらい。身長168cm(高く見える)体は細い。髪の毛の色は黒で長さは肩の下までのストレート。顔はちょっとツンとした感じではあるが、よく見れば見るほど、(美人だな・・)と思う、そんなイメージの子だった。
服装は黒のセーターにジーンズ色のデニミニ。それに上着は寒いので長い白のダウンコートを着ている感じだった。服装は水商売女に見えない事もないが、顔立ちがしっかりしているので、その系の仕事をしている風には見えなかった。まったくもって正体不明。
するとママは「この人はね、うちの用心棒w」とか意味の分からない紹介をしてきたのだった。女の子も日本語で、「ヨウジンボウ?何それ、ガードマンの意味?」とママに答えた。どうやらこの子もママ程ではないが、日本語が話せるらしい。
そしてよくよく話を聞いていると、この女の子は、この店にたまにではあるが顔を出す警察官との事だった。俺は何も悪い事してないが、(け、、警官!?)とちょっとビビった。
もちろん飲みに来ている訳なので非番であるそうだった。何かこの店に注意人物がいて、張り込む為に来ている訳ではないとの事。
そして話しているうちに、女の子とも打ち解けていき、女の子の名前が「王朝麗」という名前であることをしった。なんだ、この王族貴族のような名前は・・・、と思った。
この王さんは、日本が実は大好きで、ドラえもん、ドラゴンボール等から日本語を覚え、後は学生時代にそれなりに勉強したとの事。日本にも何度も来た事があり、日本語検定2級も持っているとの事だった。
こうしてママを挟んで話しているうちに、俺たちは少しづつ打ち解けていき、気が付けば、政治的な話でも盛り上がりを見せていた。
この王さんは、かなり頭の良い方らしく、その時に話していたキーワードは、マニアックだが、「満州鉄道 蒋介石政権 柳条湖事件 張作霖の息子、張学良、満州事変から上海事変」こんな戦争時代の話を、中国人としての立場からの見解をはっきりと言える気の強い方でもあった。
結局、戦争の話をしたからどう。とかそういうのは一切なく、王さんのほうもそのテーマを話せる俺に対し、「あなた、意外とかしこいね」と上から目線で言ってきたのを覚えている。(基本、王さんは上から目線。)
そして話は戦争の堅い話をやめて、もっと簡単な話をしようwwという感じになり、「中国が世界に誇るベスト3は何?」みたいな質問をしてからは空気が一気に明るくなった。王さんいわく、「1:中国料理 2:本物の麻雀 3:功夫」 といっていた。この3つだけは中国人以外の民族ではできないとの事。本物の麻雀は中国麻雀の事
俺はその質問返しに、「1:礼儀作法 2:寿司 3:堅いちんちんw」と答えた。すると王さんは「中国人だって堅いわよw」と答えてきたのだった。こんな会話をしているくらいなので、どれだけ打ち解けてきたか感じ取ってくれたかと思う。
そんな感じで気が付けば、翌日の3時になっていた。ママも本来ならもっと前に店を閉めているが、他のお客さんもいないし、俺たちだけの為に店を開けてくれているような感じだった。
俺が時計を見て時間を知り、ママに迷惑をかけている事に気が付いたので、俺は「そろそろ出ようかな」と言った。
そして俺と王さんは、そのままの流れで、「明日休みだし、どこかで飲もう」という流れになって、俺と王さん、そして店のアルバイトの女の子の3人を連れて、どこかまだ空いてる店を探す事になった。
そして夜の大連を歩いているうちに、俺は、衝撃的なものを見てしまったのだった。
そもそも、まえがきにしてはずいぶんと長くなっているので、ここらへんで次回に続く。ってしたいが、この衝撃的なものだけは紹介してから終わりたいと思う。
3人で手頃な店を探しながら歩いている時、中国の繁華街といっても土地が広いので、いろんな場所があり、Aブロックの繁華街から、Bブロックの繁華街に行くまでのの間、高速道路の高架下などの薄暗い場所を通って歩いていく事もよくある。普段はタクシーなどで通り過ぎるような場所なのだが。
そこを3人で歩いていたら、高架下にある薄暗い建物の影で何か、怪しい動く物体があったんだ。もちろん人間だった。
俺がふと王さんを見ると、彼女は仕事モードにの目つきになっており、俺は思わずアルバイトの女の子に、「何あれ・・?」とその怪しい人影の事を聞いてみた。女の子は「たぶん・・・バイク泥棒、、、だと思う」と答えた。
よく見ると1台の海外製のバイクが止まっており、それに一人の男がまたがって、カチャカチャと何かキーボックスをいじっているのだった。
王さんは一人、歩く速度を速めてその物陰に接近しており、中国語で何かを言った。多分「こら!!何してる!!!」だと思う。
驚いたのはその直後。てっきり男(10代後半くらい)2名は、驚いて逃げるのかと思ったら、ここが日本とまったく違うところ。男一人はファイティングポーズを取り、もう一人は小さな折り畳みナイフをパチッと広げて構えてきたのだった。
すると歩きながら接近する王さんは、ダウンコートの腰に手をまわすと、そこから小さな筒のようなものを取り出し、シャキン!とそれを飛び出させたのだった。特殊警棒だった。
それを見た男2組は王さんが警官だとわかったのか、すぐさま飛び出して反対方向へと逃げていったのだった。
それを追いかける事はしなかったが、すぐさま王さんは携帯電話で警察に電話をし、警官が来るようにと指示を出していた(風に見えた)それが終わると王さんは「あとで警察くるって。だからもう行こう」ということで、また飲み屋街へとてくてくと歩いていくのだった。ポカーンとした表情でそれを見る俺だった。
相手は2組、しかも男。それにナイフ。それでも一切、恐れずに特殊警棒を引き抜いて戦おうとする王さん。。。。 めっちゃかっこよかったけど、正直、かなり怖かった・・・w
そんな・・・衝撃があった。ともかく何事もなくてよかった。そしてそのまま俺たちは2件目へと飲みに行き、、俺は酔いつぶれた王さんをお持ち帰りする事になるのだが・・・。
つづいていい?