(1)昨年6月の恥ずかしい体験
夏至の日の夜、ご近所のお風呂屋さんに行きました。
スーパー銭湯ではなく、住宅街にある昔ながらの銭湯です。
その日は仕事が忙しく残業だったので、お風呂屋さんの広い浴槽にゆったり浸かって疲れを癒そうと、9時頃に出かけました。
アパートから100m弱の夜道ですから、ノーブラです。
私が銭湯に通うようになったのは、郷里の大学を卒業して都内に本店がある会社に就職し、一人暮らしを始めてからのことです。
5月まで住んでいた都内でも心身のリフレッシュのために、週末は商店街にあるお風呂屋さんに通っていました。
そのお店は建物に入ると待合室があり、そこのフロントで代金を払って男湯と女湯に分かれる造りでしたが、現在利用しているお店は入り口が男女別々で、入ってすぐの所にある番台で代金を払う造りです。
支店に異動となり、先月末に引っ越してきてからすでに2度利用していました。
いずれも番台は女将さんだったのですが、その日は時間が遅かったせいか、番台には年輩のご主人が座っているではありませんか。
「エー、男の人が見てる前で裸になるの!」と思うと、愕然としました。
一瞬、Uターンして帰ろうかとも思いましたが、いかにも毛嫌いしたようで「悪いな」と思うと、決心がつきません。
「男の人とはいってもお年寄りだし…」と自分に言い聞かせながら、代金を払って中に入りました。
脱衣場の客は私一人です。
番台からなるべく離れたロッカーを選び、ご主人に背中を向けて服を脱ぎました。
思春期以降、男の人の前で裸になるのは初めてだったので、すごく緊張しました。
最後にブラを外してショーツを脱ぐときは、心臓がドキドキしました。
背中を向けているので胸や下腹部は見えないまでも、お尻は番台から丸見えです。
気恥ずかしいので番台の方には目をやりませんでしたが、ご主人にお尻をずっと見られているような気がして、そそくさと洗い場に向かいました。
洗い場には二人の先客がいました。
一人は小さな女の子を連れた、30歳前後で色黒の水商売風の方。
割とキレイなのですが、ヘアを全て剃り落してワレメがくっきり見えているうえに、胸の膨らみがなくて乳首だけが異様に目立ちます。
もう一人は40歳代半ばくらいに見える、女優さんのようにキレイな方。
胸は大きくウエストも括れていて、私も「20年後もこんなふうでありたい!」と思いました。
カラダを丁寧に擦って顔と髪を洗い、熱めのお湯を湛えた広い浴槽に二度ゆったり浸かると、もう脱衣場に上がる時間が来てしまいました。
「ひょっとしたら、女将さんと交代してるかもしれない」という希望をもって洗い場から番台の様子を窺ったのですが、依然としてご主人が座っています。
仕方がありません、覚悟を決めて出入り口のガラス扉を開けました。
タオルで前を隠そうか少し迷いましたが、そんな真似をすれば相手を男性として意識しているというメッセージをご主人に送るようなものだと考え、そのまま脱衣場に出ました。
脱衣場に出たとき、番台のご主人と目が合いました。
ご主人は、前も隠していない全裸の私をジロッと見ました。
見ず知らずの男の人に乳房もヘアも正面からモロに見られてしまったのかと思うと、カラダを汚されたような気分に襲われました。
「やはりタオルで前を隠しておくべきだった!」と反省しましたが、もう後の祭りです。
前屈みになってロッカーまで辿り着くとバスタオルでカラダを覆い隠し、ドライヤーで髪の毛を乾かし始めました。
前方に目をやると、番台のすぐ近くに置かれた木製の広いベンチに私より先に上がっていた水商売風の方が座っており、素っ裸のままご主人と何か話しています。
そこへキレイな方が上がってきましたが、やはりタオルで胸や下腹部を隠したりはしていません。
その方は上体を屈めて、股間を丁寧にバスタオルで拭っています。
お二人のあっけらかんとした態度を近くで見ていると、女もお風呂屋さんでは、たとえ番台が男の人でも堂々と裸を晒しているのが自然で、「自分は自意識過剰だったのかな?」とも思えてきました。
それでも、番台の方にカラダの正面を向けてバスタオルを外したり、ショーツを穿いたりするような真似は恥ずかしくてとてもできませんでした。
閉店の10時が迫り、ご主人がお店の入り口の電気を消しました。
ベンチからは立ち上がった水商売風の方は、片付けのために番台から降りてきたご主人を目の前にしても素っ裸のままです。
とてもキレイな方と私は相前後してお店を出ました。
お店の外では先に出られていた様子の旦那さんが待っていて、かっこいいスポーツカーで帰っていきました。
「あんなにキレイな奥様の裸を番台のご主人に見られて、旦那さんはイヤじゃないのかしら?」と不思議に感じました。