「係長、取引先の○○工業様からメールの件どうされますか?」
「毎年恒例の、訪問商談だろう、人選しないといけないな。咲月さん案出しといてくれる?」
「わかりました。」
私の会社と○○工業は、互いに多数の商材を仕入れており、10年以上友好的な関係を、
築きあげてきた。
来季の発注量の確認や仕入れる商材の品質確認のための出張を、訪問出張の名のもとに実施している。
自社は北陸、○○工業は関東ということで、二泊三日の出張となるが、夏に○○工業から2名が来社
し、我々が接待した。
今秋は自社から2名出張することになるが、その事前打ち合わせのメールが、○○工業から入って
いたのだ。
まずは、出張する人員を決めないといけないが、咲月が、
「先方から、できれば、私と係長が来てほしいとのことです。どうも夏に来社された際の接待に
感動されたようです。」
と言った。
夏に○○工業の、業務課長と係長が来社された際、初日に手早く商談を済ませ、軽く歓迎
の宴会を行った。
翌日、私と咲月で県内の景勝地をご案内し、夕方には私が馴染みにしている、
造り酒屋の見学を行い、ここで少々日本酒を試飲し宴会場に移動、北陸の珍味と先ほど見学した
造り酒屋の日本酒を数種類注文し、飲み比べた。
翌日、業務課長と係長が帰られる際、宴会の時に気に入った日本酒をお土産として、手渡したのだ。
出張してきた二人が、日本酒大好きということを、事前に聞いておいたのが幸いしたと思う。
私は咲月に、
「二人で出張する?、日程は問題ない?、都合が悪ければ他の人でも大丈夫だよ」
と聞くと、咲月は、
「大丈夫です。私も○○工業さんに行ってみたいと思ってましたから。」
こうして、私と咲月は二人で出張することになった。
私は、33歳独身で係長になって2年目、身長は約170cmで体型も標準的で、昇格の速さも
標準的、趣味は軽い筋トレ。
咲月は28歳独身、身長は155cmほどで、体型は胸と尻が制服から見る限り大きめだ、
髪の長さは肩に着くくらい、顔立ちは丸い目とちょっと厚い唇が特徴的だけど、咲月の性格は固い、担当する業務や言われたことは、
生真面目に処理し、時に細かく考えすぎ悩んでいることもあり、私が、
「リラックスして行こうよ」
とか、
「今の段階では、アバウトでいいと思うよ」
と声をかけることが度々ある。
当然、プライベートにはふれる雰囲気にはならないので、私にとって、
彼女の正体はある意味不明だ。
そんな性格のせいか、笑顔が少なく、男性に対する愛想もないので、
社内の男性陣から女性としての人気は高いほうではない。
また、酒席にはつきあうが、お酒もほとんど飲まず、物静かにしている置物タイプで、
飲んだ勢いで誘い、誘われたという話も聞いたことがない。