裕美、咲月と知り合う前の話しをします。
私はなぜか、交際に至る女性は処女、なぜそうなるのか、ちょっと考えてみた。
友人たちとグラビアアイドルの写真を見て、各々好みをいうと、私が選ぶのは、
決まって、あまり色気がない、清楚系か地味系。
会社の男性たちのみで飲み会をやった時、社内の女性について、あれこれ話しをすると、
私は決まって、性格固い系、でしゃばらない系の女性について話題にしがちだ。
プロポーションについては、極端な体型以外は、あまり評価の対象にはならない。
一緒に飲んでいる連中は、口々に、
「そんな地味な女興味湧かない、色気こそ大事、プロポーションが全て」
とか言うけど、私はピンとこない。
前置きはこのくらいにして、裕美、咲月と知り合う前の話しをします。
私が大学を卒業してすぐの、22歳の頃、親から就職祝いに車を買ってもらい、
有頂天になっていた頃の話。
仲の良かった大学の同期が公務員になって、私に連絡してきた。
彼いわく、
「職場内に女性の臨時職員がいっぱいいて、遊びに誘うとすぐOKしてくれるから、
今度ダブルデートしないか?」
とのこと。
大学の同期が言うには、臨時職員は18歳から20代前半の女性が大半で、公務員との結婚目当てで、
勤務している子が多いらしく、実際、臨時職員と結婚した職員も多く、公務員の妻で専業主婦を、
目指す女性が、1年契約の臨時職員を希望するとのこと。
1年契約といっても、特に問題なければ自動で更新され、給料も独身であれば、そこそこの額
をもらえるので、新卒の女子高生が応募してくる場合もあるという。
同期との事前打ち合わせによると、臨時職員の女性二人の内一人と同期は、
交際を始めたばかりで、もう一人の女性は、特に交際している男性はいないので、
私が気に入らなくても、ドライブに連れて行ってくれとのこと。
同期が職場内の臨時職員達に悪い印象を与えないためにも、かなり真剣にお願いされた。
そんなわけで、就職し職場環境にも慣れた7月の土曜日午後、同期とその同僚の臨時職員2人と、
私がカフェで待ち合わせした。
同期の車と女性が二人が乗った車がやってきて、カフェに降り立った。
カフェで女性二人を見ると、同期の彼女はいわゆる美人系、手足が長くスラリとした体型、
同期と親しく話す様は、私ともう一人の女性に親密さをアピールしている感じ。
二人とも20歳とのことで、私とこれからドライブする予定の女性は、理紗といい、
卵型の顔立ちで、目は大きめ、背は低め、女子アナでいうと、大島由香里を、
ちょい下膨れにした感じ。
話をしてみると、自ら話題を出し積極的に会話のきっかけを作るタイプと感じた。
30分ほど、自己紹介したり、私と同期の近況を冗談交じりに女性たちにして、カフェを出た。
私は、理紗をドライブに誘うと、
「はい」
と快活な口調でOKをもらった。
マイカーは、所詮ファミリーカーではあるが、車の免許は大学3年の夏休みに取得し、
実家の車で訓練してたので、それなりにスムーズに運転できる。
土曜日の午後という微妙な時間の出発だったけど、私は、
「ちょっと夕日を日本海で見ようか?」
と言うと、理紗は、
「よろしくお願いします」
と応えてくれた。
海までのドライブ所要時間は、約1時間、車中での会話は、話し好きの理紗のおかげで、
そこそこ楽しかった。
彼女曰く、
「同期と彼女は、これからお泊りデート、だから、この土曜日の午後を選んだんですよ」
ドヤ顔っぽい表情で、運転している私に向かって言う。
「良く知っているね。同期とその子、そんな親密な交際しているんだ?」
「だって、午前中に私が彼女の家に迎えに行って、ご両親に、これから旅行に行ってきます。
って挨拶したんだもん」
「それって、完璧なアリバイ工作?」
「そう、ご両親に笑顔で、お見送りされされたんだよ」
どうやら、同期は彼女とお泊りデートをするために、私と理紗を使ったらしい。
もし、私が理紗をデートに誘わないと、計画が破綻する可能性があるので、
真剣にカフェ後のドライブについて、私に頼んだのだろう。
なかなかの策士の同期に苦笑してしまうが、誓って同期は腹黒ではない、どちらかというと、
真面目で誠実な奴である。
そんな同期が、私を使ってまで策を練ったということは、マジ彼女に惚れていて、
このお泊りデートを絶対成功させてやるという思いが感じられた。
こんな話しをしているうち、車は海水浴場に着いたが、まだ日没には早いので、
海岸脇の駐車場に車を停め、理紗と一緒に砂浜を散歩することにした。
7月といっても、まだ海開き前なので、人影はまばら、駐車場にも車は数台だけだった。
波打ち際を歩いていると、理紗は寄せる波に、
「きゃ」
と言い、私に抱きつくようにして、腕をつかんだ。
私も、
「大丈夫?」
と言いながら、理紗の手を引っ張りながら手の平を握り、その後は、手を繋いだまま、
波打ち際を歩き、綺麗な貝を拾ってはレジ袋に入れた。
その後車に戻り、互いのシートを倒し手を握りあったが、特に会話はなく、
車のフロントガラスの先から日没を待っている状況だった。
たぶん、私の想像だけど、理紗は自分の両親に対し、同期の彼女と挨拶し、
一緒に旅行する旨を伝えていて、互いにアリバイ工作をしていると思う。
だから、今日理紗はお泊りOK、けど、同期から聞いた、臨時職員は結婚相手を求めていると、
いう言葉が気にかかる。
私はまだ22歳、同期のように、結婚を覚悟しながら、同僚の臨時職員と、
お泊りデートをする気にはなれない、かと言って、遊びで理紗の身体を奪うのも、
私の趣旨に反する。
やがて、太陽が日本海に接近し、水平線と接触する。
「じゅっという音がするから、よく聞くんだよ」
と言うと、
「海面、大爆発」
と理紗が興奮気味に言う。
その後、太陽がゆっくり海面に接触し、やがて姿を隠し、代わって徐々に星々が姿を現した。
私は、
「そろそろ帰ろうか」
と理紗に言い、二人で車に乗った。
途中、理紗は、
「実は、今日、親には友達と旅行すると言ってあるから、家に送ってもらわなくていいよ」
と言った。
「え、じゃあ、これから夜通しドライブしようか?」
冗談っぽく言うと、
「おまかせします」
と、海に来るまでの陽気な話し方とは正反対の、ちょっと緊張している物言いだった。
とりあえず、行くあてもないので、海岸近くのファミレスで食事し、食べ終わる頃には、
夜の9時頃になっていた。