姉貴が結婚して早2か月が経とうとしている。
それまで当たり前のように一緒に暮らしていた家族がいなくなるのは寂しいものだ。
姉貴は僕より5歳年上だったけど、共働きだった両親に代わり、僕にとっては母親みたいな存在でもあった。
勉強が苦手だった僕がそれなりの高校へ進学できたのも、時折勉強を教えてくれた姉貴のお陰だと感謝している。
話はかれこれ5年ほど前の、僕にとって忘れられない出来事の話だ。
当時、僕は中学1年で、姉貴は高校で吹奏楽をやっている、割とどこにでもいるような普通の高校生だった。
夏休みが終わりに差し掛かった夏の日の事だ。
午後3時頃だったか、コンビニへ出掛けた僕が帰宅するのと同時に、汗だくの姉貴が部活から帰って来た。
「あれ、友は部活じゃなかったん?」
「今日は午前で終わりやったから・・・」
あまりの外の暑さに一言二言会話をしながら家の中に入ると、着替えの準備をした姉貴は真っ先に脱衣所へと消えて行った。
そこまでは普段と何一つ変わらない日常風景だった。
しばらく僕は自分の部屋でエアコンを全開にして涼みつつ、途中だったTVゲームを再開していた時だった。
「友~~~!」
初めのうちはテレビの音で気付かずにいたのだが、
「ねぇ!!友~~~~!!!」
ようやく浴室の方から姉貴の声がする事に気付いた。
僕は脱衣所の前で姉貴に声を掛けた。
「どうした?」
「クモがおんねん・・・」
「クモ?」
「そう、おっきいクモ・・・」
大の虫嫌いな姉貴が大きなクモを見つけて右往左往しているようだった。
「大丈夫だって、噛まないからwww」
「嫌だよ、友、捕ってくれない?」
どうやら、浴室から出ようとした姉貴の目に飛び込んで来たのは、脱衣所の壁に張り付く大きなクモだったようで、浴室から出るに出られない状態のようだった。
「洗濯機の隣の辺におんねん・・・捕ってってば。」
「じゃあ入るからね。」
僕が脱衣所の引き戸を開けて辺りの壁を見回してみた。
「クモ?どこにもおらへんけど・・・」
「嘘ぉ、よく見てってば。」
僕が戸を開ける音で陰に隠れてしまったのか、クモらしき姿が見当たらない。
「・・・どこにおるん?」
「だから洗濯機の隣の辺だってば・・・」
それまでは遠慮して目を背けていたが、そこで初めて浴室の方へと僕は目を向けた。
すりガラス越しに僕の目に映ったのは、両胸を腕で隠した姉貴のシルエットだった。
両胸こそ隠してはいるものの、姉貴の股間部分にはぼんやりと黒い影が見て取れる。
(うわっ・・・姉ちゃんのマン毛や・・・)
異性に対して興味を持ち始めた時期だった事もあり、姉貴の裸のシルエットを見ただけで僕は勃起していた。
僕は平静を装いつつ、
「クモなんかおらんて。」
「ホンマなん?ホンマにおらん??」
「どっか逃げちゃったんじゃない?」
「・・・ちょっと、バスタオル取って。」
袂においてあったバスタオルを僕が手に取ると、少しだけ開いた浴室の扉が開いて姉貴の手だけが伸びて来た。
「もう・・・外で着替えるから出て行って、ありがと・・・」
姉貴にバスタオルを手渡すと、すぐさま浴室の扉が閉じた。
脱衣所を出ながらそっと僕が浴室の方を振り返ると、こちらに背を向けた姉貴が身体にバスタオルを巻いている。
(姉ちゃん、いつの間にあんなに大人っぽくなったんだろう・・・)
すりガラス越しとはいえ、初めて見た姉貴の裸体は思春期の少年には刺激的過ぎた。
それで興奮したのか、やたら喉が渇いた僕がキッチンへ行って冷たい麦茶を飲もうとしていると、バスタオルを身体に巻いた姉貴が脱衣所から足早に出て来た。
「友~~~、もっかいクモ探しといてなぁ!!」
そう言い残しながら、着替えを抱えたバスタオル姿の姉貴が自室へと消えて行った。
(姉ちゃんのおっぱい、どんなんだろう・・・)
(姉ちゃんのマン毛、結構毛深そうだったな・・・)
部屋に戻ってからもやりかけのゲームの事など忘れた僕は、ただたださっき見た姉貴の裸体を思い返していた。
(こんな身近に生身の女の子がいるじゃないか・・・)
高校3年とはいえ、まだまだ子供っぽい容姿をした姉貴だったので、この出来事こそ、すっかり大人のボディラインに成長した姉貴をひとりの異性として見始めたきっかけとなった。
(いっその事、生で姉ちゃんの裸見てみたいなぁ・・・)
そんな思いを抱いたまま悶々とした日々を過ごしていたが、新展開があったのはそれから僅か数日後の事だった。
新学期を迎え、友達の家に寄り道した僕が学校から帰宅すると、姉貴がシャワーを浴びる音が聞こえてきた。
「姉ちゃん、帰ったでぇ!!」
「あ、お帰りぃ。」
浴室内に反響した姉貴の声が返ってきた。
どうしても数日前に見た姉貴の姿を思い返す。
こっそり脱衣所の扉を開けて覗きたくなる衝動を抑えつつ、姉貴がシャワーを浴びる音だけを脱衣所の前で聞いていた。
やがてシャワーの音が止み、しばらくして浴室の扉が開く音が聞こえた。
僕は足音を忍ばせながらその場を立ち去り、自室の扉に手を掛けたその時だった。
「キャッ!!!」
脱衣所の方から姉貴が叫ぶ声が聞こえてきた。
僕が慌てて脱衣所の方へ向かっていると、ガラッと引き戸が開き、無造作にバスタオルを身に纏った姉貴が飛び出してきた。
「嫌だ、もう・・・またクモおったしぃ・・・」
数日前に見たクモがまた現れたらしい。
泣きそうな表情の姉貴の方をよく見ると、よほど慌てていたのか、バスタオルを巻くというより、肩から羽織ったバスタオルを手で押さえて胸を隠し、ほとんど露わになった股間をもう片方の手で隠している状態でいる。
「どこにおるん??おらへんやん。」
「だから、洗濯機の横ら辺だってば、この間とおんなじ所・・・」
「ホンマどこにもおらんのだけど・・・」
「ほら、そこら辺におらん??」
指差ししながらそう言う姉貴の方を僕が横目で振り返ると、ガラ空きとなった姉貴の股間が僕の目に飛び込んできた。
シルエット越しに見て予想していたとはいえ、姉貴の股間には広範囲にびっしりと陰毛が生え揃っている。
「嘘やん、さっきまでおったのに・・・」
「ホンマおらんぞ・・・」
僕は平静を装うので精一杯だった。
再度僕が横目で姉貴の方を振り返ると、片手では覆い隠せないほどの陰毛が姉貴の手からはみ出して見えた。
まだ幼ささえ残る姉貴の容姿と濃いめな陰毛のアンバランスさは、ようやく性への目覚めが起き始めていた僕には刺激的過ぎたし、姉貴がもう子供じゃないと思えた瞬間でもあった。
僕がこっそり横目でチラ見している事に気付いたのか、姉貴は僕に背を向けてバスタオルを身体に巻き直し始めた。
その時、僕の悪戯心が瞬時に目覚めた。
「姉ちゃん!背中にクモ!!」
「えっ、えっ、嘘やんそんなの・・・」
僕がかけたカマに姉貴は見事に引っ掛かり、巻こうとしていたバスタオルをその場に投げ捨てて逃げて行った。
それまでベールに包まれていた姉貴のおっぱいが丸出しになっている。
お世辞にも決して大きなおっぱいではないが、それでも小刻みに揺らしながら逃げて行く姉貴のおっぱいを、僕はこれ一度きりのチャンスとばかりに凝視していた。
脱衣所の斜め向かいにあるリビングに身を隠した全裸の姉貴が、こちらを覗き込むように見ている。
全裸姿の姉貴を見た事には敢えて触れず、
「嘘だって、ハハハ・・・」
「嘘なん???ちょっとそういうの止めてやぁ!!!」
「そう簡単に背中に張り付くわけないやろ?」
「だってホンマにクモが現れたと思ったんやもん・・・」
「ホンマに??」
「いや、ホンマびっくりしてん・・・」
僕はもっと姉貴の裸を見たいという衝動を抑えつつ、バスタオルと着替えをリビングの入り口付近に置いてその場を立ち去った。
部屋に戻ってから僕が考えていたのは、ついに見た姉貴のおっぱいや濃すぎる陰毛ではなく、クモが出たというのは彼女のでっちあげなのではないかという事だった。
これまで家の中でクモが出た事は無くもないが、姉貴が大騒ぎするほどの大きなクモを見た事なんて無かったし、思い返せば返すほど彼女の行動に不自然さを感じた。
そう感じた理由のひとつが、いくら暑い日で汗だくで帰宅しても、面倒臭がりな一面がある姉貴が帰宅して早々にシャワーを浴びたりしないという事だ。
そして一番不可解だったのは、「背中にクモ」と僕がカマをかけバスタオルを捨てて逃げ去った後の姉貴の反応だ。
あれだけの虫嫌いの割に驚きの反応が薄い感じがしたのだ。
それに少々怒りっぽいところがある姉貴が、弱々しい姿で僕の目の前で全裸を曝け出した挙句、まったく怒って来なかった事だ。
むしろ、「大騒ぎしてごめん・・・」と言いたげに立ち去る僕を見る姉貴の表情が、今思えばどこか悦に浸っているように見えた気がしてならない。
弟である僕にワザと自分の裸を見せたかったのだろうか?
もしそうであるなら、僕から頼み込めばもっと裸を見せてくれたのだろうか?
その後は嘘のように、こんな夢のようなシチュエーションは一切起きず、今でもお互いにこの出来事は暗黙でアンタッチャブルになったまま今日に至っている。
やや黒ずんだ感のある小さ目な乳輪と豪快に生やした陰毛は未だに脳裏に焼き付いて離れない。