「いらっしゃいませ」
雑居ビルの地下1階の扉を開けると、そこは暗闇だった。
「段差あります、気をつけて下さい」
そう言われたとたん躓きそうになった。
先輩は、キャンドルの灯りを頼りに私の手をひく。
薄暗い通路を抜けると、いきなり空間が開けた。
目が慣れてきたせいか、店内の様子がぼんやり見える。
…ここはラウンジだろうか?
黒いソファーが何個か並んでいて薄いパープルのカーテンで仕切られてた。
店員さんが一つのソファーに私達を導くと、膝まずきペンライトをテーブルの上に置いた。
「これでメニューをご覧下さい。後程伺います」
そう言うと一礼して暗闇に消えた。
「え?ここ何?」
先輩のスーツの袖を引っ張って聞くと、耳打ちされる。
「ただのbarだよ」
「本当?」
心なしか口元が弛んでいる。
「何飲む?」
先輩は、ペンライトの灯りを頼りにメニューを開いた。