日曜の朝でも人の出入りがあまりない田舎の寂れた駅だから、1人で立ってると目立ちますし、それっぽい人が来ればこちらもすぐに気付きます。
だけど約束の時間を過ぎても誰も現れませんでした。
そろそろ帰ろうかと悩んでた時、1台の高級外車がゆっくり僕の方に近付いてきて停まりました。
やっぱり騙されてたのかなと逃げる体勢をとりながら、車内を覗いてみたけど、DMの画像の女装子が1人しか乗っていなくて、ぎこちなくドアを開けようとしていました。
「あ、そ、そらさんですか?」
「Aさんのアレの人ですよね?」
「はい、りなって言います
迎えに行くように言われてきたんですけど、途中で迷ってしまって」
第一印象は、可愛い。
そしてやっぱり、この人が変態達に虐められる姿が生で見れるなんて楽しみ過ぎると言う、好奇心と性欲。
さらに、普通に女装してるけど普段から女性として生活してる人なのかなって疑問と、この人だったら喋らない限り女装ってバレないだろうなって敗北感。
あとは、明らかに洋服のコーディネートと合ってない真っ赤な首輪と、手の甲に書かれた「臭いチンポ付いてます」って文字が目についたけど、見てないこととして処理しました。
「あの、どうしますか?
来てもらえなかったらお仕置きって言われてるから来てほしいんですけど」
「あ、見学だけですけど行きます
犯罪に巻き込まれるとかないですよね?」
「ちゃんとした人だからそれは大丈夫です」
なんだか鼻で笑われた気がしたけど、乗りなれない右側の助手席に座っていました。
「すいません。
今そっちに車線変更して大丈夫ですよね?」
「う、うん」
「運転下手でごめんなさい。
迎えに行けって鍵を渡されたけど、免許とったばかりだし、左ハンドルも大きい車も初めてなんですよ」
「そ、そうなんだ」
この時間が一番怖い時間だったかもしれません。
免許取りたての人間に平気で高級外車を貸すAさんって何者なんだって疑問もあったけど、それより事故らないことを祈ってました。
「てか、そらさんってB面もやっぱり美形ですね
僕ずっと前からフォローしてて、そらさんがオススメしてた化粧品とかだいたい買ってるし、化粧のやり方とかだいぶ真似してます」
「絶対嘘だ
こんなに可愛い人にフォローされてたら普通に気付くし、フォロバしてますよ」
「僕、身バレ怖いんで画像は1枚もないです」
女装して駅まできて手に恥ずかしい落書きしてるくせに、身バレも糞もあるかって感じでしたけど、誰か気になってSNSを開いていました。
「◯◯ってわからないですか?」
「えぇ、あれりなさんなんですか?」
「はい、何度かリプで」
いつもイイネしてくれて、しかもSNS内で何度か絡んだことがある人でした。
これ偶然じゃないんじゃないかと、あれこれ疑い始めていました。
「もしかしてAさんに僕のこと教えたのりなさん?」
「そんなことしませんよ。
たぶん住んでるとこ同じだなって思って、ワンチャンあるかもって絡んでたのは認めますけど、今回のは偶然です。
このアカウント誰にも教えてないし、AさんがそらさんフォローしてることどころかSNSやってることも知りませんでしたから。
僕もさっきそらさんの画像見せられてビックリしたんです」
「本当ですか?
てか僕とワンチャン期待してたんですか?」
「だから、今日そらさんが居ることに一番緊張してて、他の人はこう言うの見慣れてる変態ばかりだろからまだいいけど、そらさんに見られるとか考えたら、死にたいくらい恥ずかしいんですよ」
「やっぱり僕、帰りましょうか?」
「それはそれでお仕置きが怖いんで困るんです。
それに会えて嬉しいのもあるし、もしかしたらワンチャンあるかも」
「りなさんとならありかな?
でも僕Sでもないし、今日は見学だけってことできてますからね。
てかAさんとこう言う関係になって長いんですか?」
「ちょうど1年です。
それでパーティーとか言って複数することになったんです」
最初は可愛いから調子に乗ってる話にくい人なのかなとか、何を話したらいいんだろうとか心配してたけど、予想外の展開に思いのほか盛り上がってしまって、Aさんのマンションに到着した頃には普通に仲良くなっていました。
そのせいで、可愛い後輩みたいな感情が少しだけ芽生えていて、変態達に虐められて大丈夫なのかな、でも見ないと勿体ないよねって複雑な気分でした。
「少し震えてない?
大丈夫ですか?」
「武者震いです。
てか、これから僕のどんな姿見てもひかないでくれますか?
せっかくリアルで会えたのに、いきなり嫌われるとか嫌だし、ワンチャンは冗談だけど、そらさんと仲良くなりたかったのは本当なんで」
「けっこうハードな動画見ても興奮するからひいたりはしないと思いますよ」
何が始まるの?
そんなに凶悪な変態達が待ち構えてるの?
りなの様子を見て、不安を覚えながらエレベーターを降りました。
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