2017/08/19 06:04:57
(QR24dYjm)
ゆうの部屋に入った。僕たちは、つないでいた手を離し、
並んでベッドに腰を掛けた。
今日は何か、いつもとは空気が違う感じがした。
いつも見慣れているゆうの部屋は、いつものように、きちんと整理整頓がされ、
まるで女の子の部屋みたいだと、当時はいつも思っていた。
でも、この日は、ゆうは女の子の格好だったので、その部屋の雰囲気が、
ゆうの今の格好と、違和感なく見事に溶け合っているような印象を受けていた。
「それにしても、しっかり女の子の格好にしたんだな…」
僕はそう言いながら、隣に座っているゆうのスカートを、おもむろにめくった。
一方では、今はゆうはこんな格好をしてはいるが、親友の僕にだけ、
私服の上からただ着て見せたかっただけなんだと思っていた。
スカートをめくり上げたその視線の先に、下着のスリップと、
女の子用の純白の無地のパンツが飛び込んできた。
「あん…嫌ん…ひろ君、恥ずかしいよ、今、スカートの下は下着なんだから」
ゆうが、顔を真っ赤にしながら言った。ゆうは、ここまで本格的なんだ、
ここまで本気なんだ、僕はそう思った。
「ご、ごめん…」僕は、ゆうがここまでするとは全然思ってなくて、
女子の洋服に興味がある男子が、ちょっとだけ着てみる…そんな感じかと思っていた。
「ゆう、下着まで全部、女の子と同じにしたんだね…」そう言うと、ゆうはこっくりと頷いた。
「そうだよ…せっかく女の子のお洋服を着るんだから、全部女の子にしなかったら、
意味がないでしょ」そう言いながら、ゆうは自分で自分のスカートをめくって、
中を見せながら、にっこりと笑った。女の子の洋服や下着は、
母親が買ってくれたらしい。
「それでね、この衣装を、コンクールの本番に着るんだよ…」
ゆうが、カーディガンを脱いで、僕の前に立つと、自分の着ている白いブラウスと、
紺色のプリーツスカートを示しながら言った。
「そうなんだね、かわいい格好だね…本番には、みんなで見に行くね」
「うん、入賞できるように頑張るから、応援してね」
僕は今は、そんなゆうをクラスの女の子の、誰よりもかわいいとさえ思っていた。
その時、ゆうの母親が入ってきた。
「ゆうちゃん、ステージ衣装、そろそろ着替えましょうか。
スカート丈とかサスペンダーの長さとか、大丈夫?
動きにくいところとかはない?」
「うん、大丈夫だよ、ママ…」
「さあ、今度は、スカートとブラウスとスリップ、自分で脱いでみて。
しわにならないように、このハンガーにかけるのよ」
「うん、わかった」
「着替え、ここでいいわよね、ひろ君なら見られても恥ずかしくないわよね」
「うん、大丈夫…」
ゆうが、座っていたベッドから立ち上がった、
スカートやブラウス、スリップをさっと脱いで、手早くハンガーにかけるゆう。
たちまち、パンツ1枚に姿になったゆうの姿が、なぜかすごくまぶしく思えて、
見てはいけないものを見ているような、そんな気持ちもしてきた。
「ママ、パンツも脱ぐんだよね」
そのゆうの言葉を聞き、すごくどきっとする僕。
同じ男なのに、どうしてだろう…。
「ゆうちゃん、着替えはおズボンにする?スカートにする?」母親が言う。
「それによって、パンツもはきかえましょうか…」
僕は、ゆうがどんな答えをするか、ドキドキしていた。ゆうは、
「ママ、スカートはきたい…この間買ってもらったワンピース、あるでしょ」
「いいわよ、今日は少し暑いから、ワンピース、いい気持ちよ。
でも、もうすぐ夕方だから、涼しくなるかもしれないから、キャミソール、
中に着ましょうか…」
「うん…ママ、お髪、解いてもいいでしょ」
「いいわよ…」
まるで、1人の女の子が母親と会話をするような、そんな感じに思える僕だった。
男子ではクラスで一番大人しく、言葉遣いも女の子っぽいところがあるゆう、
それはもう、幼い頃からの話ですっかり慣れっこだが、
今日は何だか、本物の女の子が目の前にいるような、特別な気分がしていた。
ステージ衣装とスリップがかかったハンガーを受け取ると、母親は下に降りて行き、
部屋にはまた、僕とゆうの2人だけとなった。
数分間の沈黙が漂った。
「ひろ君、どうかしら…」
その声の方を見ると、クリーム色の花柄のワンピースを着た1人の女の子が、
目の前にかわいらしい微笑みを浮かべながら立っていた。
僕は、女の子になったゆうに、しばし見とれていた…。
感動で、言葉が出てこない…こんな気持ちになったのは、今日が初めてだ。
「ゆう、すごくかわいい…何だか、本物の女の子みたい」
すると、ゆうが言った。
「だって、わたし、女の子だもん…」