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2016/05/25 13:11:17 (feoiTMgb)
この前のゴールデンウィーク、あたしは、女になりました。
中年女装子の「ロスト・バージン」としては、考えられないほどしあわせな体験だったと思います。
今もそのしあわせ感がつづいてて、誰かに話したくてしかたありません。
でもまさか、家族や友人に話すわけにもいかず、それで、ここに貼りつけようと、書いてみました。
ただ、あたしにとっては、その瞬間瞬間が心ふるえることばかりだったので、ディテールまで思い出して書いてたら、とんでもない長文になっちゃいました。
その上、いい齢して、若い娘のようなひとりよがりの乱文。
腹立たしかったり、イライラさせたりするかもしれません。
でも、寛大でお暇な方なら、その暇つぶしくらいにはなるかと思います。

――――――――――――――――――――――――

無趣味なあたしにとって、女装は唯一の楽しみ。20年近く前からのめりこんでいて、今では、家族にナイショで「女装部屋」(賃貸の安アパートですが)まで持ってます。
といっても、あたしの場合、ひとりでメイクやお洋服を楽しんで、あとは写真を撮るくらい。女の子姿で表に出た経験もなければ、同好の人と交流する機会もなく、ましてや男性との恋愛やセックスなんて別世界のこと(じつは妻子もいますし)と思ってました。というか、正直、嫌悪感さえ抱いてました。
でも、4ヶ月ほど前、これまででいちばん出来のいい女装写真が撮れた気がして、無性に誰かに見てもらいたくなったんです。
それで、つい、ある女装系交流サイトに(人からの評価を知るにはいちばん手っ取り早いと思って)アップしちゃいました。
そしたら、思ってた以上にたくさんメールが来て‥‥。
ほとんどは(予想どおり)いやらしい言葉を並べた一行メールとかだったんですが、中に一通、かなりマジな調子で「恋人としてつきあってくれませんか」っていうのがあったんです。
それは、本当の女の人に宛てたラブレターのような文面で、「初めて理想の女性に会えた気がします」なんて書いてあるし、なんか勘違いしてるんじゃないかと思って「私は、実際には、地味な40男ですよ」と、野暮な返信をしたりしました。
そしたら、ずぐまたメールが来ました。
「もちろんそれは承知の上です。これまで、何人かの女性とつきあってきましたが、どうもしっくりこなくて、いつもすぐに熱が冷めてしまいます。じつは結婚もしているのですが、それは、いわば体面上つづいているだけ。同居はしていても、生活上どうしても必要なこと以外会話はなく、心の面でも肉体面でも、何年も前から完全に離れています。最近では、僕は恋愛とか結婚に向かない人間なんじゃないかとさえ思い始めていました。というか、どうも僕は女性というものへの幻想が強すぎて、現実の女性にはない『女らしさ』を追い求めているんじゃないかと。そう思ったのは、女装さんたちが集まるサイトを見て、妙にどきどきしている自分を発見したからでもあります。心情としては、やっぱりかわいい女の子が好きだし、男の体に惹かれるわけではないので、自分ではホモではないと思っているんですが‥‥。そんなふうに自分自身がわからなくなっている時、かおるさんの写真に出合ったんです。瞬間、『かわいい!』と思い、僕が探していたのはこの人だという気がしたんです。ひとめぼれというのは、こういうことなのか、と。それで、ずいぶん迷った末、矢も盾もたまらなくなり、あんなメールを出しました」
やっぱりまじめな文面(ちょっとマジすぎて怖い?)だし、一方で、結婚云々を考えると、けっして「まじめ」とは言えないし、でも、それはまあ、こっちだってほとんどいっしょだし‥‥。あたしもあれこれ迷いましたが、無視するのも悪い気がして「そんなふうに言っていただけるのはうれしいのですが、それに、あんなサイトに写真を載せておいて、今さらこんなこと言うのは申し訳ないのですが、あたしは女装が好きなだけで、今のところ、男性とおつきあいする気はありません」と返信しました。
と、彼からは「じゃあ、メールだけでも」と言ってきて、それをきっかけに、ぼちぼちと、メールのやりとりが始まったんです。でも、あたしがメールするとすぐ返事をくれるので、(やっぱり悪い気がして)あたしの方もだんだん、返信のペースが頻繁になっていきました。
そんな中で、お互いのことも知っていきました。
彼は、あたしより3つ年下の、それなりに名の知れた企業の会社員でした。
最初こそ「ほんとは、からかって遊んでるだけだろう」とか、「けっきょくはエッチ目的で、安上がりそうな中年女装者を誘ってくる変態なんじゃないか」とか、そんな疑いも持ってたんですが、メールの中味は、いつも、やさしくてまじめ。とはいえ、堅物というわけでもなく、品のいいユーモアもあって、人柄の良さも伝わってきます。
リクエストに応えて送った他の写真にも、いちいち「きれいだ」「かわいい」と書いてくれるし‥‥、あたしもだんだん「彼」にラブレターを書く女の子みたいな気分になっていきました。
ちなみに、彼も写真を送ってくれたんですが、文面どおりまじめそうで、その上、スポーツマンタイプのイケメン(少なくとも、あたしにはそう見えました)。これまで男性をそんな目で見たことのなかったあたしは、彼の写真を眺めてはドキドキしている自分に驚きました。
でももちろん、実際に会う勇気はなく、彼が何度となく誘ってくる「デート」も、あれこれ言って断りつづけてました。
で、2ヶ月前、「じゃあ、せめてLINEでも」ということになり、あわてて「かおる」名義のアカウントを取って、1日何回もLINEするようになったんです。
「元カノや奥さんからは、なんて呼ばれてた(る)の?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「あたしも、おんなじように呼ぼうかなって」
「女房からは、新婚時代までは「マアくん」だったけど」
「じゃあ、あたしもこれからそう呼ぶね、マアくん」
‥‥とかあって、お互いに対する呼び名も「かおちゃん」「マアくん」へと変わっていきました。
さらに、お互い、書くこともないときは‥‥
「愛してるよ、かおちゃん」
「あたしの方が、マアくんのこと、何倍も愛してるもん」
なんて、冗談めかしたやりとりもするようになり‥‥。
そのうち、彼が「LINEなら電話もできるよね」と言い出して、(あたしが「女装部屋」にいるときは)直接話すことにもなったんです。
彼は「声や話し方もかわいいじゃん」と言ってくれて(ホントのこと言えば、そんな展開になるのを予想して、発声やしゃべり方の練習もしてたんですけどね)、ついには「これだけお互いのこと知り合えたんだから、もう警戒したり恥ずかしがることもないだろ。一度でいいから会おうよ」とか「街でかおちゃんがいやな思いをしないように、必ず僕が守るから」とか、さかんに口説かれ、あたしも折れてしまったというわけです。

で、ゴールデンウィークのある日の夕方、お気に入りの(だけどおとなしめであまり目立たない)ワンピースを着て、出かけました。
なにしろ初めての女装外出です。「女装部屋」を出るときも、地下鉄で目的地に向かう間も、びくびくドキドキしどおしでした。(おびえてたほど人からじろじろ見られることもなく、ちょっと肩すかしを食らった気もしましたが。)
待ち合わせに選んだのは、ある大型商業ビルの吹き抜けロビー。そこの二階にテラスのようにつきだしたティーラウンジです。おびえてるのに、わざわざそんな見通しのいいところを指定したのは、事前に「あたしは10分前に行ってます。もし実物のあたしを見て幻滅したら、近づく前に、そのまま帰って。お願いだから、気を使って声をかけるなんてしないで。マアくんが現れなかったら、あたしもそれで、すべて忘れるから」とLINEしてたからです。
でも彼は、待ち合わせ時刻の8分前には、目の前に立ってました。
「なんだ。あんなこと書いてくるから、覚悟して来たのに、写真よりずっとかわいいじゃない」
そう言って前の席に腰掛けた彼に、いきなり動悸が速まり、目も合わせられず、あたしは、顔を真っ赤にしてたと思います。
ただ、どうしても心配になり、小さな声でききました。
「ホントに、あたしみたいなのといっしょにいて、恥ずかしくないですか?」
「なんで? 全然だいじょぶだって。まわりにも、変な目で見てくる人なんていないし。かおちゃん、ふつうに女の子に見えるから。っていうか、その辺の女の子よりずっとかわいい20代半ばの美人って感じだよ」
40過ぎの女装男に、いくらなんでもそれはないだろうと思いながらも、そんなふうに言ってくれる彼のやさしさに、いよいよ顔が火照りました。
そのラウンジでしばらくおしゃべりして(といっても、あたしの方はまだ緊張してて、まともにしゃべれませんでしたけど)、そのあと席を立って彼の車に。
駐車場まで向かう間も、ハイヒールの足がもつれそうで、歩くのもおぼつかない感じでした。それで、思い切って(さらに動悸を速めながら)ききました。
「あの、腕につかまらせてもらってもいいですか?」
と、彼はにっこり笑って「もちろん。デートなんだから。それに、そんな他人行儀な言い方じゃなく、いつものLINEや電話みたいに気軽にしゃべってよ」と言ってくれました。
それで、彼の腕に手をかけると、不思議に心が落ち着いて、緊張もいくぶん解けていく気がしました。
ヒールのぶんを含めても彼の方が背が高く、その上、ブレザーの肩幅や胸板もあたしよりがっちりしていて、(彼が約束してくれたとおり)「守られてる」という感覚になれたんです。
そんなこともあり、それに2人だけの空間に入ったこともあって、彼の車の助手席では、あたしも、だんだんLINE電話しているときのしゃべり方に近づいていきました。
「かおちゃん、なに食べたい?」
「最初から、厚かましくて出しゃばりな女だと思われたくないから、『マアくんにお任せします』っていうのが、正解かなって」
「へえ、あんなに渋ってたのに、今日のこと、いろいろシミュレーションしてきたんだ」
「‥‥もぉ。イジワル」
「まあ、それは僕も同じだけどね」
「ふふ、4ヶ月かけてやっと口説き落とした彼女だもんね」
「ああ。最初のデートで、ダサいとかガッついてるとか思われたくないから」
そんな会話を交わしながら、彼が連れていってくれたのは、街なかを少しはずれたところにあるおしゃれなスパニッシュレストランでした。小さなバル風のお店で、照明も薄暗かったのは、彼が気を使ってくれたんだなと感じました。
そんな彼のやさしさに感謝しながらも、一方で、彼自身、こんなあたしを明るいところで目の当たりにするのがいやなのかなと心配になり、食事しながら、あらためて聞いてみました。
「今夜、あたし、本気で女の子のつもりになっちゃってもいいの?」
「僕は最初から、かおちゃんのこと、女の子だと思ってるよ。実際に会って、ますますそう感じてるし」
「そんなふうに言ってくれると、あたしきっと、図にのって、どんどん甘えんぼになっちゃうよ。いい齢した男がアホかって、笑ったりしない?」
「笑うわけないだろ。まあ、こんなかわいい子に甘えられたら、うれしすぎてニヤニヤしちゃうかもしれないけど」
「またあ。そんな無理しないで」
「だから、無理なんてしてないって。それにさ、そんなふうに僕の気持ちを気にして、びくびくしたりするとこって、すごく女の子じゃん。最近の女にはない、そんなかわいさを、僕は、あの写真見た時からずっと感じてるんだから」
緊張の上に、そんな言葉で胸がいっぱいになり、まともに食べれなかった食事のあと、近くの公園を散歩しました。
もう日が暮れていて人影はなく、街灯はあるものの木陰は暗かったし、あたしは、もしかしたら‥‥と予感(期待?)してました。
だから、大きな樹の陰で彼が抱いてきたとき(そこまでで、やっぱり誠実な人だと思えたこともあって)、さほどの動揺も抵抗もしませんでした。
ただ、キスしたことはあっても「される」のは初めてだから、唇が触れた瞬間、やっぱりちょっと体が震えました。
「‥‥ふふ、びくついたりして。どうやらまちがいなく、かおちゃんの、女の子としてのファーストキスだったみたいだね」
「‥‥もぉ。でも、その言い方、もしかして疑ってた? あたしほんとに、マアくんが初めてよ‥‥男の人は」
「じゃあ、逆の立場としてなら、いっぱいあるわけだ。なんか、『ヘタクソ』とか、思われてそう」
「もお! うぶな女の子をいじめるのが趣味? キライ!‥‥大好きだけど」
抱き合ったまま、そんな、なんだか芝居じみたセリフ(お互い、やっぱり演技して気分を高めようとしている部分はあるので)を交わしながら、さらに何度かキスしました。
「‥‥うふ、正直な感想としてはね、初めての人が、こんなにキスの上手な人だと、これから先、かおるって女の子は、他の人とキスできなくなっちゃうなって‥‥」
その言葉にかぶせるように彼がしてきた長くてディープなキスのあと、お互いの体に腕をまわしたまま、車のところまで戻りました。あたしは完全に彼の厚い肩に頭を預け、頬に触れる彼の顎に「う~ん、おひげがチクチクする」とか言って、甘えてました。
そんなふうにして、助手席のドアを開けてくれたところで、彼がまた見つめてきました。
またキスするのかと思っていると、彼が言いました。
「かおちゃんは、このあとのこともシミュレーションしてきた?」
「‥‥えっ?」
一瞬なにを言われたかわからなかったんですが、すぐに気づき、あたしはおたおたと目を泳がせました。
どう答えるべきか迷い、黙っていると、彼がさらにつづけました。
「初デートでいきなりっていうのは、マナー違反かもしれないけど‥‥」
彼があたしの顔色を探るように(というか、ちょっと不安そうな表情さえ浮かべ)言ったので、そのことで逆になんだか気持ちが落ち着き(正直な人だなと思えて)、あたしはうなずきました。
「うん。いちおう、いろんな心づもり‥‥っていうか、覚悟はしてきたけど‥‥」
と、彼は、ちょっと安心したようにほほえみ、「ラブホテルでいい?」と聞いてきました。
もしかしたら、このまま公園で、とか、車の中で、ということも考えていたあたしは、思わずほほえみ返し、もう一度うなずいてました。

彼の方こそ、どうやらそこまでのコースをシミュレーションしてたらしく、ナビに頼ることもなく近くのラブホまで車を走らせました。
車庫から直接部屋に入れる形式だったので誰かと顔を合わせることもなく、動揺する間もないうちに、あたしは男性と2人でその部屋の中にいました。
そんな自分にあらためて呆然とし、ドアの近くで固くなっていると、彼がまたキスしてきました。そのキスは、公園で交わした最後のキスよりさらに濃厚で、口の中に強引に入ってきた彼の舌に、あたしも鼻声を漏らしながら舌を絡めました。
でも、もうちょっとで大きなベッドに押し倒されそうになったところで、あたしは逃げるように口を離しました。
「ねえ、待って。ちょっとだけ時間もらってもいい? 準備するから」
「準備?」
「うん。マアくんにいやな思いさせたくないから、いろいろきれいにしときたいの」
「‥‥わかった。初めてだしね。僕も、きれいなかおちゃんを抱きたい」
その「抱く」という言葉に、また無性に恥ずかしさが募り、あたしは逃げるようにトイレに駆け込んでました。
そこで軽く浣腸をし、しばらくお腹の張りをこらえてから思い切り息んで中のものを出し、次に、彼の目を避けるようにバスルームに向かいました。
ただ、困ったのは、そのバスルームが(こういうホテルにありがちな)ガラス張りだったこと。
彼が今座っているベッドの位置から、ほぼ丸見えです。
ことを始める前から、あられもない(しかも男の)姿を見られるのは、すごくいやだと感じたあたしは、ワンピとパンティ、それにガーターベルトとストッキングだけをとり、上半身はブレストフォームを入れたブラをつけたまま、さらにその上からバスローブを羽織って、バスルームに入りました。セミロングのウィッグも(シャワーキャップがあったので、その中に髪をまとめて)、つけたままです。
その日は朝から「女装部屋」へ行き、出かけるぎりぎりまで時間をかけ、脱毛し、丹念に入浴し、肌の手入れもしたので、体はまだそんなに汚れてないはず。とりあえず問題の「下半身」だけ洗えばいいと思ったんです。
とはいえ、もちろん、そんなとこを洗っている姿を見られるのはいやで、排水口近くの、部屋から見えにくい位置で後ろを向いてしゃが込むようにして(つまり、彼からは、バスローブの後ろ姿しか見えないようにして)、お尻を洗いました。この手のホテルらしく、シャワーヘッドとはべつにビデもついていたので、それをおそるおそる穴に挿入してお湯を送り込み、それから、マニキュアの爪で傷つけないよう用心しながら指をつっこんで、中も洗いました。もちろん初めてのことで、うまくできたかどうかはわからなかったんですが、なんとかそれを終え、そのあと、その指や局部、しずくがかかったかもしれない内腿や脚もボディソープで洗い、最後に、バスルームの床や壁、排水口も(臭いとかが残らないよう)シャワーで丁寧に流してから、バスを出ました。
下半身をタオルで拭いて、持ってきたローズヒップのデオドラントをその部分に軽くふり、それから、やはり持ってきていた新しいパンティとストッキング、そして、さっき脱いだガーターベルトやワンピをふたたび身につけました。
「ごめんね。思ったより時間がかかっちゃって。お化粧も直したいから、その間にマアくんもシャワー浴びて」
あたしがそう言いながら出て行くと、彼が見つめてきました。そのまなざしに、ちょっと不安そうというか、不審そうというか、そんな感じがあるのが気になりました。
「‥‥どう、したの?」
「さっきはバスローブ着てたのに、また、それ着たんだ?」
どうやら、自分がシャワーを浴びている間に、あたしが逃げ出すのではないかと心配になったようです。
それで、あたしは言いました。
「バスローブは裾がびしょびしょになっちゃったから」
そして、恥ずかしさをこらえ、つづけました。
「それに‥‥この服、マアくんに脱がしてほしいと思って、選んできたのよ」
と、彼は納得したようで(ちょっとにんまりし)、バスルームに向かいました。
あたしが洗うのを下半身だけにしたのは、昼間、時間をかけてやったメイクをダメにしたくなかったこともあったんです。でも、バスルームの湿気と、それにやはり汗もかいたようで(あそこを洗ったのは熱いお湯じゃなく、体温くらいのぬるま湯だったんですけどね)、鏡を見ると思ったより崩れている感じでした。つけまやアイラインなどはまだだいじょぶそうでしたが、ファンデが浮き、チークやシャドーも、それと混じってくすんでいる感じ。
それで、あぶらとり紙で押さえたあと、パウダーファンデをはたき、もう一度、シャドーとチークをつけ直しました。もちろんクレンジグする余裕もなく上から重ねたので、どうしても濃い感じになってしまいましたが、寝室の化粧としては、このくらいセクシーでもいいかなと思いました。
とはいえ、その間、じつはなかなかメイクに集中できませんでした。
あたしが隠れるように洗っていたのとちがい、バスルームの彼は、ガラス張りになった真っ正面でシャワーを浴びているんです。湯気の向こうに見える彼の分厚い肩や太い腕、ちょっと胸毛のある胸、それに、下腹部の黒い繁みが、どうしても目に入ってきます。
男性の裸にこんなにドキドキしているという、普段なら考えられない感覚への驚きも重なって、あたしの心境は、またふつうではなくなっていました。
怖いような、それこそ逃げ出したいような気持ちになってきたんです。
そんな動揺を抑え、最後の口紅を塗り終えたところで、シャワーの音がやみ、やがてバスローブ姿の彼が現れました。
その顔をまともに見ることもできず、また動悸が極限まで速まってました。
「かおちゃん、おいで」
メイクミラーの前に座ったあたしに近づいた彼が、手をさしのべました。
そんな彼の顔を見返すこともできないまま、あたしはその手に触れ、そっと握りました。
と、彼は強く握り返してきて、引っ張るようにあたしを立たせると、やはり強い力で肩を抱き、ベッドのところまで連れて行きました。
ぴったりと体をくっつけたまま、二人でそこに腰掛けると、すぐに彼がキスしてきました。
そのキスは、飢えている‥‥というか、これまででいちばん性急な感じがしました。
あたしがあれこれ言って、待たせすぎたせいかもしれません。
その激しいキスに、さっきからの怖いような気持ちが増幅され、あたしは体を固くして、されるままになってました。
‥‥やっぱり、男の人って、強い。
そんな感じを抱いてもいました。
口の中を舌でこねくりまわすようにしていた彼のキスが、やがて唇を離れ、頬から耳、そして首筋へと移動していきます。
それに合わせるように、背中にあった彼の手が動き、ワンピのジッパーをつまんで下ろしました。
もともと、ある程度ネックラインが開いている服だったこともあり、後ろが開くとすぐに、生地が肩を滑り落ち、さらに大きく肌が露出しました。と、今度はそこに彼の口が移動し、唇でくすぐったり、吸ったりなめたりしてきました。
「ぁッ、ん~ん」
ブラのストラップだけがかった肩を這うその動きに、あたしは、知らず知らず甘えた鼻声を漏らしてました。
そんな自分自身の声に、男の時にはこんなところでこんなに感じたりしないのにと思いながらも、あたしも次第に興奮していきました。
‥‥あたし、今、彼に服を脱がされて、そこにキスされてるんだ。
それは、さっきから心に抱く「怖い」とか「男の人って、強い」とかいう(つまり、自分は弱いんだという)感覚からくる興奮でした。
あっという間に、ワンピースを引き下ろされ、袖も抜かれて、ブラだけの上半身が露わになりました。
肌の上を動く彼の唇は、そのストラップに沿って下りていきます。
あたしは、単に鼻声を漏らすだけでなく、「うぅ~ん、だめ‥‥」とか「ぁッ、いや」とか口走ってました。
彼の方も、そんなあたしの気持ちを煽るように、「肌も若くてきれいだね」とか「このブラ、かわいいよ」とか言ってきます。
ブレストフォームで膨らませたカップに顔を寄せた彼が、鼻先でその弾力をこねるようにしたときには、「ん~ん」と体をふるわせ、さらにそこを手のひらで包み、握るようにしてきたときには、自分でも驚くほど大きな声を上げてのけぞってました。
やはり、なんで「ニセもの」でこんなに感じてるんだと思いつつも、「強い男の人からこんなことをされているか弱い自分」というイメージに、あたしは本気で感じてました。
そんなふうに「胸」を揉みながら、ふたたびキスしてきた彼に応えていると、その手が今度は下に向かい、ウエストのあたりに引っかかったままのワンピを下ろそうとしてきました。
それであたしは、ちょっと腰を浮かせ、そのあと、横座りするように、脚をそろえたまま上げ、彼がそれを抜き取るのに協力しました。
「へえ、パンストでなく、ガーターベルトなんだね」
露出したあたしの太股あたりを見ながら、彼が言いました。
その言葉に、あたしはまた、ちょっと不安になりました。彼がさかんに言ってくる「かわいい」というのとは、イメージがずれていたのかなと思ったんです。
「期待してたのと、ちがった?」
「ふふ、でも、恥ずかしがり屋でうぶな女の子が、じつは下に、こんなセクシーなのを着けてたって、最高に興奮するパターンだろ」
そう言って太腿をなでてきた彼の大きな手に、あたしはまた、甘え声を漏らしてました。
でも、その手がパンティに掛かったところで、あたしは両手でそれを止めました。
「まだ、だめ」
パンティの生地を持ち上げ、先がはみ出しかけている自分のものを意識されるのが恥ずかしかったこともありますが、さっきから、あたしばかりがしてもらっているのが、申し訳ないような気がしたんです。
それで、ベッドを滑り落ちるように下り、床にひざまづいて、彼の顔を見上げました。
「引っ込み思案だったあたしを、こんなすてきなデートに連れ出してくれたマアくんに、まず、あたしの方からお礼がしたいの」
そして、腰掛ける彼の股の間に割り込むように体を入れ、バスローブのある部分に向かって手を伸ばしました。
そこが突っ張るように飛び出していることはさっきから気づいてましたし、その突っ張り方から見て、下になにもはいてないのもわかってました。
正直なことを言えば、あたしはそこで、ちょっとだけためらいました。なにしろ、他の男性のものをさわるなんて(たとえバスローブのタオル地ごしにしても)初めてです。
そんなためらいを振り切り、おずおずと握ると、あたしの手の中で、それがピクンと跳ね、太くなる感じが伝わりました。そして、彼が「ううッ」とうなるような声を漏らしました。
その声を聞いたとたん、なぜだかあたしは、「本体」を見てみたいという衝動にかられました。
それで、すぐに目の前のローブの帯を解き、裾をはだけてました。
と、それは、生い繁る真っ黒な陰毛の中からそびえ、ヒクヒクと揺れてました。
といっても、巨根というほどじゃなく、太さも長さも、標準的(?‥‥たぶん)なサイズでした。(これも正直に言えば、「あとのこと」を考え、あたしはちょっとほっとしました)。
ただ、勃起した「かたち」が標準より(少なくともあたしのより)、ずっと反り返っている気がしました。
ふたたび手を伸ばし、じかに握ってまず感じたのは、「堅くて熱い」ということでした。ドクドクいう鼓動も伝わってきましたから、今、大量の血液が送り込まれているにちがいありません。
そんなことを思い、あたしはちょっとの間、手の中のものを見つめてました。
と、それが気になった(というか、誤解した)ようで、彼が声をかけてきました。
「無理、しなくていいよ」
それで、あたしはあわてて、上目づかいに彼を見て言いました。
「ちがうの。あたし、うれしいの」
「‥‥うれしい?」
「だって、こんなあたしに、こんなに感じてくれてるんだもん」
「そりゃ、かおちゃんがこんなに‥‥」
彼がまた気を使って「かわいい」とか言いそうだったので、そこであたしは、握った手を上下に激しく動かし、黙らせました。
「‥‥うッ、うううッ」
彼がさっきより大きな声を上げ、身をのけぞらせました。そして、手の中のものが、またぐいっと太さを増しました。
それを、さらに「うれしい」と感じたあたしは、今度はためらうことなく、彼のものに顔を近づけ、その先にキスしました。さらに、亀頭全体をなめ、舌先でカリの部分を刺激したりもしました。
と、彼が、今度は「あああッ」と感にたえないという声を上げ、それと同時に、彼のものの先から、なにかが染み出したのがわかりました。
そのちょっとしょっぱい味と、口から鼻に抜けてきた生臭い臭いに、また多少たじろいだのですが、でもそれは、自分のものでもよく知っている臭いだったし、だからこそ、彼が今なにを求めているかもよくわかり、すぐに、その欲望をかなえてあげたいという気持ちになりました。
それであたしは、亀頭をくわえて口にふくみ、さらに頭を沈めて、シャフト全体を飲み込んでいきました。
そして、彼がふたたび「あーッ」という声を漏らしたのをきっかけに、頭を上下に振るようにしました。
その速さや振幅を次第に増していき、思い切り頭を下ろした時には(同時に、彼が身震いするように腰を突き上げたこともあって)、さらに堅くなった亀頭がのどの奥にはまりこんで息がつまりました。そのえずくような苦しさに、一瞬また我に返ったりもしましたが、そこで今の自分の姿を客観視し、「ブラとパンティとガーターベルトを身につけ、男に奉仕している」という像に、逆に興奮が高まって、さらに首の動きを速めてました。
と、彼が、荒い息をしながらも、片手をあたしのウイッグにかけ、指先で、前に垂れた髪を持ち上げるようにしてきました。あたしがくわえているところを、見たくなったにちがいありません。
それであたしも、視線を上げ、彼の表情をうかがいました。
彼は、自分の中で起こっている爆発の衝動に耐えるように、口を半開きにし、瞳孔の開いた瞳を揺れさせてましたが、それでも、あたしと視線が合うと、笑いかけようとしてきました。
だからあたしも、首の上下運動をつづけながら(つまり、のどの奥を断続的に襲う嘔吐感をこらえながら)笑い返そうとしました。
と、そこで彼の表情がかわり、あたしの両方の二の腕をつかんで、強く持ち上げるようにしてきました。
そのせいで、あたしの口から彼のペニスがはずれ、あたしは思わず、大好きなおやつを取り上げられた子供のように、体全体でイヤイヤをしてました。
すると、彼が言いました。
「こんなのは、ダメだよ」
「‥‥え?」
その言葉の意味がわからず(それにまた、不安にもなり)、あたしは、あらがうのをやめ、彼の顔を見返しました。
「だって今夜は、かおちゃんと僕の初めての夜だろ。それなのに、かおちゃんだけが苦しい思いをして、僕を一方的にイカそうなんて、やっぱりダメだ」
「苦しい思いなんて‥‥。さっきも言ったように、あたしはマアくんが感じてくれるのが‥‥」
言い終わる前に、彼は、中腰になっていたあたしの背中に片腕をまわして抱き寄せ、もう一方の腕で腿のあたりをすくい上げるようにしました。そして、そのまま、ベッドから立ち上がりました。
気がつくとあたしは宙に浮き、彼の両腕の上に寝そべるように横抱きされてました。
「‥‥あっ、お姫様だっこ」
思わずそう口走ったあたしに、彼はおかしそうに笑い返し、「ふふ、今度は僕の番だよ、お姫様」とキスしてきました。そのままの体勢では、そのキスに強く応えることができなかったので、あたしも、彼の首に両腕をまわし、抱きつくようにしてキスを返しました。
そんなふうに抱かれたまま、しばらくの間、舌先をからめ、じらし合うようなキスをつづけていたのですが、さすがに彼も(痩せてるとはいえ男である)あたしを抱え上げているのに疲れたらしく、腰を曲げ、ベッドの真ん中あたりにやさしく降ろしてくれました。
そこに身を横たえて見ていると、彼は、前がはだけたままになっているバスローブを脱ぎ捨て、全裸になってベッドに上がってきました。
その動きに連れ、体の真ん中で未だ反り返るように立っているものが大きく揺れました。あたしの視線は、どうしてもそこに向かってしまいます。
でも、その視線を遮るように、裸の体が、あたしの上に覆い被さってきました。
胸毛の生えた胸がブラの中のブレストフォームを押しつぶすのを感じ、こちらの息を止めそうな勢いで押しつけてきたキスに必死で応え、筋肉でごつごつし、すね毛でざらついた脚が、脱毛してすべすべのあたしの太股にこすりつけられるのに震え、さらに、それらの感覚に耐えきれずすがりついた胸板の厚さに驚き、あたしはまた「男の人の強さ」を全身で感じてました。
と、彼の手があたしの体をちょっと持ち上げるようにしながら、背中に侵入してきました。
背すじをまさぐるその手にも感じ、あたしが「ぁあ~ん」とさらに抱きつくと、その指先がなにかをつまむように動きました。
それで、あたしは焦りました。
「うう~ん、ダメ。ブラは、とらないで」
どうやら、ブラのホックをはずそうとしているようなのです。
「どうして?」
「だってぇ、おっぱいないのが、わかっちゃうもん」
「ふふ、この大きなおっぱいも好きだけど、僕は、かおちゃんの本物の乳首が吸いたいんだ」
「ダメ、だめだったらぁ」
ホックがはずれたのがわかり、あたしは、あわてて彼の背中を抱いていた手を離し、両方のカップを押さえました。でも、そのことで逆に、ストラップが簡単に肩や肘からはずされてしまいました。あらがう私の手の下のカップも、強い力ではぎ取られ、はずみで、ブレストフォームもベッドの上にふにゃふにゃと転げ落ちました。
あたしの手先からブラを引き抜くため上体を起こした彼は、お腹あたりに馬乗りになる形で見下ろしてきます。
その目に、あたしの平らな胸が晒されました。
「ほら、こんなにかわいい乳首。まるで、これから胸がふくらんでくる10代の女の子みたいだよ」
彼はそんなことを言いながら、両手で、そこをつまんできました。
「あッ、ぁ~ん」
その瞬間、全身を駆けめぐったしびれに驚きながら、あたしは体を大きくのけぞらせました。
と、あたしの上から下りて、傍らに寝そべった彼が、今度はそこに唇を寄せ、吸ってきました。
「‥‥ぁ、あん、ダメぇ」
吸いながら、彼は、近くに添えた手のひらで、あたしの肌を盛り上げるような揉み方をしてきます。
そのせいで(それに、さっき彼が言ったことのせいで)、目をつぶって悶えるあたしには、まるで自分の本物のおっぱいが、彼の行為によって発育していくような感じがしました。
それがしばらく続いたところで、彼は、あたしの胸の上で唇を這わせ、もう一方の乳首にも、同じようにしてきました。
「う~ん、‥‥やん」
そのころにはあたしも、平らな胸を晒していることへの抵抗感を忘れ、乳首を転がす彼の舌技に甘え声をあげてました。
右、左、右‥‥と、そんなことがしばらく繰り返されたところで、彼の片方の手があたしのウエストやおへそあたりをなで、ガーターベルトのレースと戯れたあと、さらに下へと伸びてきました。
そして、その手がパンティに掛かったところで、彼はまた、乳首を強く吸いました。
「‥‥やんッ!」
あたしがアーチするようにのけぞり、腰を浮かせた瞬間、彼は、パンティをずり下げました。
胸を吸っている彼の頭であたしには見えなかったのですが、下腹部で、その下着に抑えられていたものが勢いよく立ち上がったのがわかりました。
ガーターベルトのストラップは下に通してありましたから、パンティは抵抗もなくストッキングの上を滑り、あっという間に足先から抜かれてました。
でも、それを抜き取るためにあたしの胸から口をはなし、上体を起こした彼の動きが、そこではたと止まりました。
そして、なんだか妙な間がありました。
‥‥ん?
のけぞっていた首をもたげ、そちらを見やると、彼は、勃起して揺れているあたしのものを見つめていました。
その表情には、なんだか複雑なためらいがあるように感じました。
それであたしは、さっき、彼が言ってくれたのと同じことを言ってました。
「マアくんこそ、無理しなくてもいいのよ」
と、彼はあたしの方を見て、ちょっと首を振りました。
「いや、そういうことじゃなく‥‥」
そこで彼は、さらに複雑な表情で言葉をとぎれさせました。
「‥‥?」
あたしが問いかけるように見返すと、彼は、消え入りそうなほど恥ずかしげな顔でつぶやきました。
「かおちゃんの方が‥‥僕のより大きいんだなと思って」
その言葉を聞いて、あたしは、彼の複雑な表情の意味を覚りました。
と同時に「なんて正直でナイーブな人なんだろう」と感じました。さらに、「もしかしたら、彼が、恋人や奥さんとうまくいかなかったのは、彼女たちが、そんな男のナイーブさを、わかってあげられなかったせいなのかも」という思いが頭をよぎりました。
いずれにしても、こんなシーンで、男の人にそんなことを思わせるのは、絶対によくないことだという気がしました。ちらりと見ると、さっきまで奮い立っていた彼のものも、萎えかけています。
それであたしは、必死で頭を巡らせました。この状況を、なんとか打開する方法はないものかと。
そして、思い切り悲しそうな顔をつくりました。
「そんなこと‥‥言っちゃ、イヤ」
甘え声で言うことまでは考えていたんですが、そこに泣き声めいた響きが混じったのに、自分でも驚きました。さらに、彼を見つめる目に涙までたまってきたことには、本当にびっくりしました。
「‥‥あっ、いや。そんなつもりで言ったんじゃないんだ」
彼はそう言って倒れ込むようにあたしの顔に口を寄せると、その唇で、たまった涙を拭うようにしました。
「ごめん。ごめんね」
どうやら、さっきの彼の言葉で、あたしが(女の子として)傷ついたと思ってくれたようです。それは、とっさに演技したあたしの、いわば、ねらいどおりだったんですが、そんな彼の反応に、あたしの目からは、さらに涙があふれました。
それが、か弱い女の子を守りたいという彼のナイト精神の復活に、さらに力を貸してくれました。
「変なこと言って、ほんとにごめんね」
でも、彼をもっと「立ち直らせたい」と思ったあたしは、彼の耳に口を寄せ、ささやきました。
「やっぱり‥‥クリトリスの大きな女は、イヤ?」
と、すぐ近くから私を見つめた彼が、言いました。
「そうか、これは、かおちゃんのクリトリスなんだよね」
そこに、やさしい笑顔が戻っていることに、あたしはほっとしました。
「‥‥うん」
今度はあどけない顔をつくってうなずきました。
でもそこで、彼の手がまた下半身に伸び、探るように動いて、空中で揺れるあたしの亀頭を捕まえました。
「‥‥あんッ」
それをやさしく握られ、あたしはまた、大きくのけぞりました。
「じゃあ、思い切りかわいがってあげなきゃね」
その言葉とともに、彼の頭が移動し、そこに近づくと、先端に「チュッ」と音を立ててキスしてきました。
「‥‥ぅ、ん~んっ」
‥‥今、あたし、男の人からクリトリスにキスされたんだ。
自分から仕掛けたトリックに、あたし自身がはまり、全身が震えました。
彼はさらに、あたしのシャフトをゆっくりとしごきながら言いました。
「ほんとだ。かおちゃんのって、ピンク色してるんだね。こんなにかわいくてきれいなクリちゃん、見たことないよ」
‥‥たしかに、黒ずんでるマアくんのに比べれば、あたしのって、色素の沈着もしてないし‥‥。
そんな思いも頭をよぎりましたが、なんにせよ、ものを考えられたのは、そこまででした。
あたしのものをしごいていた彼の手の動きが、急に速まったのです。
その太くてごつい指に強く握られ、激しくしごかれ、さらに、彼の唇できつくくわえられ、吸われ、あたしのそこは(そして、あたし自身も)我を忘れて身悶えてました。
「あッ、あッ、あッ、あ‥‥」
全身が、自分でも信じられないくらい、大きく波打ちました。
「あッ、んッ、ん~ん、‥‥あたしも‥‥ほしい」
なにかにすがらないといられない気がして、あたしが言うと、彼は体の位置を変え、下半身をこちらにして寝そべりました。
それで、あたしもちょっと寝返るようにして、ふたりで、体の側面を下にした69の体勢に入りました。
どうやら元気を取り戻し、またいきり立っている彼のものを両手で握り、口を寄せ、フェラすると、それに感じたらしく、彼の首の動きがさらに激しくなりました。
そのせいで、あたしは、すぐに臨界点に達してました。
あわてて彼のものから口を離し、あたしは叫ぶように言ってました。
「ダメっ。だめだったらぁ。イッちゃうよぉ。あたし、マアくんと、もっとこうしてたいの」
と、彼は動きを止め、口も離してくれ、陰毛も脱毛しているあたしの股や内腿を、やさしくなめてくれました。どうやら、こっちの思いが伝わったようです。
そこから、かなり長い時間、あたしたちは、お互いをじらし合うようなフェラをつづけました。
あえてペチャペチャ音を立ててしゃぶり合い、相手の興奮をぎりぎりのところまで誘い出すと、その寸前で止めて、はぐらかす。
あたしも、くわえた口が痛くなるほど彼のものを太くし、それがピンと跳ねる前兆を感じたところで、さっと口を離し、黒々と繁る陰毛の中に顔を埋めて、ごわごわと頬に触れるその感触や(今や男らしいものととらえている)臭いを楽しみました。
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2
投稿者:かおる
2016/05/25 13:14:46    (feoiTMgb)
(つづき)
そんな、お互いの「程合い」がわかり、じらし合い長引かせ合える感覚は、これまでの(女性を相手にした)どんなセックスにもなかったものです。
そして、そんな感覚で、やがて、お互いがもう我慢の限界に達したことも、よくわかりました。
どちらからともなくその行為をやめ、上体を起こしたあたしたちは、どちらからともなく抱き合い、深いキスを交わし合いました。
お互いのものから分泌した「味」が、口の中で混じり合い、あたしはそれに、しあわせを感じました。
‥‥この人となら、こんなふうにわかり合えるんだ。
その「しあわせ」は、こちらをやさしく見つめてくる彼の瞳の中にもありました。
でも、うずきつづけている体に「決着」をつけなければならないことも、お互いよくわかってました。
「ちょっと、待っててね」
彼の体から離れたくないという思いを抑え、そう言ったあたしは、ベッドを立ち、さっき化粧直ししたときにミラーの前に置いたバッグをとって、急いで戻りました。
そして、ふたたび強く体を抱いてきた彼の腕の中で、バッグを開け、ふたつのものを取り出しました。
ひとつはコンドーム(そのホテルにも、当然備え付けのものはあったんですが、それより、あたしの買ってきたものの方が、グレードが高そうだったので)。
そしてもうひとつは‥‥。
「なに、それ?」
「ん? ‥‥ローション」
あたしが顔を赤くして小さな声で言うと、彼は「やっぱり、そこまでシミュレーションしてたんだ」とからかうように言いました。
「もお」
あたしは、キスでその口をふさいでから、「『ロストバージン』に怯えてる女の子の気持ちがわからないなんて、男の子って、デリカシーないのね。クスン」とふくれてみせました(今度は実際に泣いたわけでなく「クスン」まで含めてセリフです)。
「ふふ、ごめんね」
彼はそう言って、キスをお返ししてくれました。
そのあと、あたしが、コンドームの袋を破こうとしたところで、彼がまた言いました。
「それ、つけないと、やっぱり心配?」
LINEや電話でのやりとりで、お互い、ここ一年以上、(配偶者を含め)誰とも性交渉はなく、その手の病気も持っていないことは、よくわかってました。
「ううん、そういうことじゃなくて、マアくんにいやな思いさせたくないから」
「かおちゃんとなら、いやな思いなんてしないよ。それに、そのために、さっきかおちゃんは、きれいにしたんだろ」
「‥‥いいの?」
「ああ。僕は、かおちゃんをナマで感じたいし、かおちゃんの中に証拠を残したいんだ」
その言葉に、あたしは、ふたたび彼に抱きつき、キスしてました。
「じゃあ、あたしが塗ったげるね」
彼の唇から口を離したところで、あたしはそう言って、ローションの小瓶を手に取りました。
とろっとした液体を手のひらに出し、あぐらをかいた彼の真ん中で突っ立っているものを両手で包むようにして、塗っていきました。
ぬるぬる滑る手の中で、彼のものがまた、ぐいッ、ぐいッと、大きくなりました。
あたしはそれを、(まるで子供の頃やった粘土遊びのように)楽しいことだと感じてました。
彼の方は、後ろに両手をついて上体をそらし、天井を見上げるようにして、その刺激に耐えています。
塗り終えたあたしは、そんな彼のほっぺたに「チュッ」とキスし、ローションの瓶を手渡しました。
「ここから先は、男の子がリードしてくれなきゃ、女の子には、どうしていいか、わからないわ」
あたしがまた、冗談めかして言ったのに対し、彼の方は、真剣な顔で見つめてきました。
「ほんとに‥‥いいんだね?」
その言葉と表情に、あたしは、彼が、これからしようとしていることを、重大なことだととらえてくれていることに、つまり、あたしのことを(女として)大事に思ってくれていることに心が震え、真顔になってうなずきました。
と、彼はあたしの頬を両手で包むように持って、キスしてきました。
そのキスにも、真剣味がこもっているように感じ、あたしも唇を強く押しつけました。
でも、そこに、真剣さと同時に、緊張のようなものがあるのも感じ、やっぱり、彼をもっと気軽にしてあげようと思いました。
「そうだ。こういう時、女の子には言わなきゃいけないことがあるのよね」
「‥‥ん?」
彼が問い返すように見てきたので、あたしは、うつむいて、上目づかいにおびえた表情をつくり、言いました。
「初めてだから、やさしくしてね」
一瞬、彼はまた真剣な顔で見つめ返しましたが、あたしの芝居がかった表情に、「ふふ」と笑い、今度は強引なキスをしながら、あたしを押し倒しました。
そこからしばらく、また、お互いの体をまさぐり合い、じゃれ合うようなキスをつづけましたが、やがて、彼の唇が、あたしの首筋から乳首、おへそ、ガーターベルトへと下りていき、もう一度、あたしのものを軽くくわえたあと、さらにその下へと移動していきました。
「‥‥ぁんッ、ぃや‥‥んん」
彼の唇がアヌスに触れたところで、あたしは大きく体をふるわせました。
そんなところにキスされるのは、もちろん生まれて初めてのこと。
そこへの物理的な刺激に感じるというより、その事実を前に(変な言い方ですが)なんだか自分の人格が崩れていくような、そんな心のふるえが、あたしの全身をふるわせてました。
さらに彼は、そこをなめてきます。
「‥‥ぁあん、だめぇ」
あたしが、大きな声を上げて悶えている間に、彼は、ベッドの上に転がっていたローションの瓶をとったようで、気がつくと今度は、ぬるぬるした彼の指が、そこをなでたり揉んだりしはじめました。
「ん、ぅん~ん」
その刺激に、あたしがまた身をふるわせていると、穴のあたりをこねるようにしていた指先が、そこに侵入しようとする感覚がありました。
思わず力が入り、あたしは逆に、そこをぎゅっと閉じてました。
さっきはバスルームで、自分の指を突っ込んで洗ったのですから、そこをゆるめる感覚はわからなくないのですが、他の人の指が入ってくると思うと、どうしても恐怖心のようなものが湧き、そこをとりまく筋肉が収縮してしまいます。
そんなあたしの反応に懲りることなく、彼はそのあたりをマッサージしては指を入れようとする行為を何度か繰り返しました。
たぶん、力づくでねじ込めば、突き立てることもできたのでしょうが、彼はそうはしませんでした。
「ごめんね。ちょっと‥‥怖いの」
首をもたげたあたしが言うと、ひざを立てたあたしの脚の間で、彼はやさしい笑顔をこちらに向けました。
「うん、焦らなくてもいいよ。僕の方こそ、初めてで、うまくできなくてごめんね」
と、そこでちょっと考えるようにした彼は、ふたたび、ローションの瓶を手に取りました。
そして、手のひらに、それを大量に出しました。
‥‥もう一回、塗り直すんだろうか?
あたしがそう思った瞬間、彼は、そのローションが滴る手で、ちょっと萎えかけていたあたしのものをつかみました。
強い力で握られた刺激と、それがシャフトや亀頭をつるつる滑る刺激とで、あたしのものはまた強烈に勃ち上がり、あたし自身も、腰を跳ね上げるようにのけぞって、大きな声をあげていました。
「あ、ああ~あ」
そして、跳ね上げた腰が、ふたたびベッドに着地した瞬間、お尻の穴に、なにかがぬるっと滑り込みました。
あたしの力が抜けた一瞬をとらえ、彼が指を差し入れてきたようです。
「‥‥んっっ」
お尻の中に入ったものが、もぞもぞ動きながらさらに深く侵入してくる奇妙な感覚に、あたしは、というより、あたしの体自体が、戸惑いました。
いち早く、気味悪い他者ととらえたらしい括約筋は、それを排除しようと、また収縮しました。
「ぉッ! ‥‥へえ、かおちゃんのおまんこって、ほんとにきつく絞まるんだね」
「‥‥ぃやん」
彼があえて使ったらしいその言葉が恥ずかしくて、あたしはベッドに押しつけた肩を揺らしました。
そのことでまた力が抜け、瞬間、彼の指がさらにずぶずぶっと体の中に入ってきました。
「‥‥ぁあッ」
さっきからの奇妙な感覚に、ちょっと痛みも加わり、あたしはさらにのけぞりました。
でも、(明確な感触ではないものの)その指が体の中をもぞもぞと探るのを、なんだか気持ちいいものとも感じ始めていました。というか、これまで誰にも見せていなかった自分の内面を、初めて誰かに知られるくすぐったさ、とでも言ったらいいでしょうか。
と、その動きがある一点に触れた瞬間、体の奥がじんとしびれました。
「‥‥ぁ、あんッ」
痛みのせいでまたちょっと萎えかけていたあたしのものが、いきなり、ぴんッと勃ちました。
それであたしは、知識としては知っていた「前立腺」というものを、初めて実感しました。
あたしの体がピクンと震えたことで、彼も、それに気づいたようで、もう一度そこを探るようにしたあと、何度も攻めてきました。
「あ、ぁん、ぁん、ぁん‥‥」
あたしは頭の後ろをベッドに押しつけ、首を振るようにして悶えていました。
と、彼が言いました。
「かおちゃんって、ほんとに女の子だね」
男独自の機関を刺激され悶えるあたしを見て、彼は、そう感じたようです。
「そうか、ここが、かおちゃんのGスポットなんだ」
その言葉を恥ずかしいと思うことで、逆に、あたしの中に多少は残っていた男としての照れが完全に崩れ、あたしは、これまで自分でも聞いたことがない甲高い声をあげていました。
「あ、あ、あ~ッ、ぃや~ん」
「かわいいよ」
彼がまたそう言ったことで、今度は、お尻の絞まりがゆるんだのが自分でもわかりました。
その瞬間、そこにまた、痛みが走りました。
どうやら、二本目の指が入ってきたようです。
その二本の指で、中をかきまわされ(その上、何度も「Gスポット」をなでられ)、あたしはもう、誰はばかることなく大きな声を上げていました。
「あッ、アッ、ダメ‥‥ん~ン、イヤ~ん」
そんなことがしばらくつづいたあと、突然、二本の指が抜かれました。
ぽっかり穴が開いたままという感覚が残り、そして、そこが、去っていったものを追い求めるように、ヒクヒクと動くのもわかりました。
と、彼は、ひざを立てて開いていたあたしの両方の足首をつかみ、さらに開かせながら、肩の上に担ぎ上げました。
そして、あたしの股間ににじり寄り、覆い被さってきました。
あたしの体は、彼の体の下で大きく折り曲げられ、腰も持ち上げられて、その部分もちょっと上向き加減に晒されました。
と、そこに、なにかが押し当てられる感じがあり、次の瞬間、彼が腰をぐいっと突き出したのにあわせて、ずぼっと入ってきました。
その瞬間まず感じたのは、「痛い」というより「熱い」という感覚でした。なにか強烈に熱を発するものが、体の中に入ってきた気がしたのです。
実際あのとき、彼のペニスは、そうとう熱くなっていたんだろうと、今でも思います。
それが痛みに変わったのは、彼がさらに奥へと進もうとしてきたときです。
「‥‥痛ッ! ‥‥お、お願い。ちょっとの間、動かないで」
あたしが懇願すると、彼はその動きを止めてくれました。
でも、あたしの括約筋の方が、その痛みに耐えかね、けいれんするようにヒクヒク動いています。そして、そのけいれんごとに、断続的に痛みが襲います。
それで、なんとか心を静めようと、息を整えていると、あたしはちょっと奇妙なことに気づきました。
あたしが痛みを感じるごとに、つまり括約筋がけいれんするごとに、彼も、「うッ‥‥うッ‥‥」と小さな声を上げます。
どうやらそこが急激に絞まることで、あたしの方は痛みを感じ、彼の方は(短い)快感を得ているようなのです。
それに気づいたことで、あたしは、そこの「使い方」が、なんとなくわかった気がしました。
それで、けいれんのような速い動きをなんとか抑え、そのかわりに、そこをゆっくりと、でも、ぎゅーっと絞めてみました。
「あーッ」
彼が、さっきまでより大きな声を上げ、首をのけぞらせました。
あたしの方も、(まだ痛みはありましたが)さっきまでの激痛は感じずにすみました。
そこで力を緩め、もう一度同じことを繰り返しました。
さらにもう一度そうしたところで、彼も、あたしの変化に気づいたようです。「いいの?」という目を向けてきました。
あたしもそれに、うなずき返しました。
彼のものがまたゆっくりと前進し、あたしの中へと入ってきます。
その途中、一瞬、腰の中心が、というか、あたしの本来の性器からつながっている奥の方が、じんとしびれ、全身が震えました。彼の亀頭が、例の「Gスポット」をなでたにちがいありません。
そして、それが、さっき指では届かなかったところにまで侵入し、彼の腰があたしのお尻に密着して体重を伝えてきたことで、道程の最後までたどり着いたのがわかりました。
「ふーっ」
そこで、あたしは、思わず大きなため息をついてました。
「だいじょうぶ?」
そんなあたしの顔を見て、彼が聞いてきました。
そのやさしいまなざしに、あたしは、この人の願望を叶えてあげるためならどんなことでも我慢できる‥‥この人にならすべてを捧げてもいい、と(本気で)思いました。
「ぅん」
あたしも彼を見返しうなずいたあと、こうつづけました。
「‥‥して」
‥‥「犯して」と全部言うのは、やっぱり恥ずかしかったんです。
と、彼の体がゆっくりと後退していき、一拍おいて次の瞬間、さっきより速く、強く、突いてきました。
「ひ、あーッ!」
体全体を貫くような痛みが走り、あたしは、後頭部をベッドに押しつけるようにして、悲鳴に近い声を上げてました。
さらに、それが、二回三回と繰り返され、あたしは必死でその痛みを我慢しました。
‥‥こんなに‥‥痛いほど激しく、この人は、あたしのことを欲しがってるんだ。
そんな思いが、あたしを耐えさせました。
さらに彼の突きが速さと強さを増し、そのたびにのしかかってくる体重で、不自然に折り曲げられた腰あたりにも苦しさがたまってきました。
でも、その頃になると、一方で自然に、そしてもう一方では、さっきなんとなく会得したアヌスの「使い方」を思い出し、あたしはその突きに呼吸を合わせられるようになってました。
文字通り彼の呼吸に自分の呼吸を合わせ、突いてくるときにはそこを絞め、引くときには緩める。
そうすることで、痛みは薄らぎました。いえ、薄らいだというより、その痛みをコントロールするコツがつかめたと言った方がいいかもしれません。
痛みは相変わらず感じていましたが、その間合いがわかり、それを、ある意味“スリル”ととらえられるようになってました。“彼に犯されていくスリル”と。
と、そこで、腰の奥に、さっき一度感じた、しびれるような感覚が起こりました。
「‥‥あッ!」
全身が、跳ねるようにふるえました。
さらにそれから、何度も、その感覚が襲いました。
彼の腰が往ったり来たりする、そのピストン運動に合わせ‥‥往きも、帰りも‥‥。
全身の神経を駆けめぐり、しびれさせるその感覚に、さっきまでの痛みも忘れ、思考も停止し、あたしはただただ、「あッ、あッ、あッ、あッ‥‥」と、体を波打たせました。
でも、そんな状態がちょっとの間つづき、多少慣れたところで、あたしは唐突に、この刺激の正体がわかった気がしました。そして、あたしの中を往ったり来たりしている彼のペニスを実感しました。勃起すればするほど反り返るその「かたち」を。
反り返ったその先端が、例の「Gスポット」を、圧迫しながら往復しているにちがいありません。
これまでの人生で一度も味わったことのないその強烈で連続した刺激に、あたしは、また唐突に、相性ということを感じました。
あたしと彼との相性の良さを。
彼のペニスの形や角度と、あたしの前立腺の位置や感度は、奇跡的にぴったりなのにちがいない。そう思いました。
だから‥‥
‥‥もしかしてあたし、運命の人と出会えたのかもしれない。
そんなふうに思いました。そして‥‥
‥‥そうか。これが、セックスの悦びってことなのね。
そんなふうにも思いました。
その悦びをもっと完璧なものにしたくて、あたしは、あえぎながら、言ってました。
「‥‥あッ、あッ‥‥マアくん‥‥キス、して」
その言葉に、彼は、さらにあたしにのしかかり、顔を近づけようとしました。
でも、あたしの脚を両肩に担ぐようにしているせいで、ある程度以上は進めず、求め合う唇どうしに、微妙な距離が残りました。
それが、あたしの背骨や腰の柔軟性の限界でした。
そのきしむような痛み以上に、彼の唇に触れられないことが悲しくて、あたしは、必死で首をもたげ、さらに体を折り曲げようとしました。
と、速いピストン運動をつづけながら、そんなあたしを見ていた彼が、あたしの両脚を肩からはずし、その内側に腕を回してベッドに手をつき、顔を寄せてきました。
ところが、そのせいで、今度は、「重し」のなくなったあたしの体が伸び、持ち上げていた腰の角度が保てなくなりました。
そして、さらにそのせいで、体の中でつづいていた強烈な、でもしあわせな刺激が遠のき、ついには、彼のものが、あたしのそこからはずれそうになりました。
「‥‥あ」
あせったあたしは、両腕を自分の両腿にまわし、そこを強く引き寄せ、抱きかかえるようにして、なんとか元の姿勢に戻しました。
と、体の中の刺激も戻り、さらに、彼の唇があたしの唇に届いて押し当てられ、その舌が(腰の動きと連動して)口の中をかきまわしました。
体の上と下の粘膜でつながっているその感覚に、あたしはさらに大きなしあわせを感じました。
そして、その「しあわせ」を、さらに実感したくて、腰が伸びないように気をつけながら、腿を押さえている手を徐々にお尻の方に這わせ、彼の腰が激しくぶつかっている部分に差し入れました。
ごわごわした彼の陰毛を感じながら、指先をその位置まで持って行くと、指の間で、これまででいちばん太くなった彼のものが、あたしのそこを出たり入ったりしているのがわかりました。
「‥‥あッ、あッ、‥‥あたし、マアくんと、つながってる」
彼の口の中に向かってあえいでいたあたしは、ちょっと唇を離し、思ったままを声にしました。
でも、その言い方ではまだ、あたしが今感じている心のふるえをちゃんと言い表せてない気がして、より具体的な言葉で言い直しました。
「‥‥マアくんの、おちんちんが、あたしの中に、入ってる」
その言葉に、彼の動きが強まったのを感じ、あたしは、彼の耳元に口を寄せ、ききました。
「ああッ‥‥あたし‥‥あたし、女?」
「あ、ああ‥‥そうだよ。かおちゃんは、女の子、だよ」
その言葉に、あたしはさらにしあわせを感じましたが、それでもまだ物足りない気がして、首を振りました。
「だめぇ、‥‥かおるって、呼び捨てにして」
と、少し顔を上げ、こちらを見つめた彼は、腰の動きに合わせるように、言いました。
「そうだ!‥‥かおるは、‥‥俺の、‥‥女だ!」
「かおるちゃん」でなく「かおる」と呼ばれたことに、彼が、ふだんの「僕」でなく「俺」と言ったことに、そして「女の子」でなく「女」と認めてくれたことに、あたしは、さらに心のふるえを感じました。
そして、つづけました。
「もっと‥‥、もっと‥‥、かおるのこと、女にして」
さらに――
「マアくんの、おちんちんで‥‥男だってこと、全部、忘れさせて」
――と口走ってもいました。
と、そんなあたしの願いを忠実に実行するとでもいうように、つまり、あたしの中の男の要素を粉砕するとでもいうように、彼はそのハンマーを、強く、激しく、打ちこんできました。
それに合わせ、彼の睾丸が、あたしのお尻を、ひたひた打つのも感じ、あたしは大きくあえいでました。
「ああーーーッ」
と、彼も、「う、うッ‥‥」とうなったあと、言いました。
「‥‥イキ、そうだ」
「ああ‥‥、来て、来て。‥‥あたしの中に‥‥いっぱい、出して」
あたしは、ほとんど叫んでました。
その瞬間、彼の体が、折り曲げたあたしの全身を押しつぶすとでもいうように、強くぶつかってきました。あたしの体の中で、何かが跳ねるような、というか、はじけるような感覚が伝わりました。
彼はそこで、「うッ、うッ、うッ」といううなりとともに、これまでとはまたちょっとちがう、押しつけるようなピストン運動を数回しました。
そのせいで、あたしの体はさらに折り畳まれ、苦しい思いもしましたが、同時に、お腹の中に温かいものが満ちていくのも感じ、あたしの心は、文字通り満ち足りていきました。
この時点では、あたし自身は射精しませんでしたし、(たぶん)オルガスムには達してませんでしたが、それでもあたしは、じゅうぶんに満足してました。
突っ張っていた力が抜け、あたしの上に崩れるようにのしかかってきた彼の体を抱きしめ、汗がにじむその背中をなでながら、さっき、彼が言ってくれたことを、かみしめてました。
‥‥あたし、ほんとに、女になれたんだ。
そんな体勢になったせいで、彼のものがはずれ、ぽっかりと開いたままのあたしのそこからは、まるでお漏らしでもするように何かが逆流していましたが、それすら、あたしにはしあわせの証に感じられました。

――――――――――――――――――――――――

それからあとも、あたしと彼との間には、しあわせなことがいろいろつづいてます。
この日のことにしても、翌日の昼近く(ホテルの延長料金を払って)、二人でいっしょにシャワーを浴びながらしたことまで、書きたいことは、まだまだいっぱいあります。
でも、さすがにこれだけ書くと疲れます(まあ、書いてる途中、その時の興奮がよみがえってきて、余分なことをしてたせいで、ということもあるんですが)。
いえ、それ以前に、これだけしつこく、くどく書いてると、もうすでに、みなさんから嫌われてる感じもします。
だから、この辺でやめときます。

それでも、もしよかったら、感想とか、ください。
3
投稿者:(無名)
2016/05/25 14:17:58    (OMMGOMb0)
素敵な体験をされたようで羨ましい。
これからも二人の間での日々を書き綴ってください。
4
投稿者:みか ◆hB9ztloqiY   sato8850 Mail
2016/05/25 17:24:15    (wF79LTKk)
素敵な、体験してますね。

私も、憧れます。

もしよかったら、お顔拝見できませんか?
5
投稿者:女装子 ◆q7rOJy7ZVs
2016/05/26 08:33:34    (zps5wUeX)
ロマンチックな体験ですね~

幸せな光景が目に浮かんできて…とても裏山しいです。
6
投稿者:クマ三四郎
2016/05/26 20:47:45    (2QCf.V5r)
素晴らしい!

私はかおるさんよりも年上で女装の方や同性の方との恋愛やsex経験もありません。

でも一気に読んでしまいました。

お二人の想い溢れる赤裸々な告白に釘つげになりましたよ。

やらしさがなく感動さえ覚えました。

自分も相手も認めあえて愛しあえるなんて、奇跡にちかい素晴らしい出会い、体験であると思います。

読ませて頂き、本当にありがとうございました!
また、ぜひ聞かせてください。
7
投稿者:ひとみ ◆hdSkloQ8ok
2016/05/26 23:23:58    (H8txt7Yh)
かおるさん、素敵な体験談で凄く興奮しました。

心の中で、女の自分がどんどん大きくなってしまう姿に凄く共感しました。
私もかおるさんのように、素敵な男性に御奉仕したいな。

ぜひその後の体験も書いてください。
楽しみにしてますね。
8
投稿者:祥子
2016/05/26 23:49:47    (/8FYSLTZ)
とても細かい描写ですね。私も自分のセックス体験を思い出して
興奮してしまいました。でも私はかおるさんと違って初体験の相手が好きな人ではなかったんですよ。無理やりでなかったのは
幸いでしたが、それでもやっぱり初めてのセックスは好きな相手、気に入った
相手としたかったなあ。とても羨ましいです。
9
投稿者:隷子
2021/09/14 17:08:22    (mw8Tm9N8)
素晴らしい文章、夢中で読みました。文才ありますね。素敵な体験羨ましいわ。私なんてドロドロした体験しかないわ。
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