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2015/07/20 08:17:55
(APolynOY)
数日前の夜遅くの帰り道、台風の影響か湿度が高く時折強く湿った風が吹いて、
蒸し暑さで歩く気もなくてふらっと久しぶりのゲイスナックに寄った。
年配のマスターは相変わらずもの静かで、いっらしゃい、久しぶりですね、と言ったきり。
若い客が一人、カウンターの席に居た、間を一つあけて座った。
マスターにビールを、俺はバーボンをロックでもらった。
バーボンは若い頃はあまり好きになれなかったけど、最近はたまに飲む。
歳をとると舌が鈍感になって好みも鈍くなってしまう気がする。
スコッチに慣れた俺の世代には、たまにのバーボンの香りが新鮮だ。
いつものことだけど、この店は盛りが良い、大きなロックグラスに多量に入れてくる。
どんぶりで飲んでる様だね、って言うと、お強いでしょう、と返された。
俺はロックが好きだ。氷が解けて少し小さくなってグラスを振ってカランカランとなる位の時が好き。
だから本当は降りやすい小さめのロックグラスが良い。
それとウィスキーは少し氷が解けて薄められても味が変わらないものがいい。
などとノーガキをこいていると、若い客が、自分はウィスキーが飲めないと言いだした。
お若い方はあまりウィスキーを飲まない、というより最近は歳に関わらず皆焼酎ばかりだよね、とマスターに振る。
そうですね、でもたまにはウィスキーと言う方も居られますよ、と。
俺は焼酎は泡盛が好きだけど、めったに置いてないし、あったとしても薄めて瓶詰になっている。
どういう訳か知らないけど、やっぱりかめに入った原酒は美味い。これに限るということ。
若い客は流通関係の仕事で明日は休みだと言う。
俺は仕事だけど、俺の仕事は客が文句を言わない限り、勤務時間には煩くない。
俺の部署の客は、要求は多いが、文句を言うことはない。
ただ社内がちょっと気にかかるが、今は一番暇な時だし、急な問題は起きそうにない。
どんぶりを2杯空けるころには2時を廻っていた。閉店の時間、若い客と二人で店を出た。
若い客は俺が気に入ったらしい、というより飲み足りないのか、もう一軒行きませんか、言ってきた。
俺も少し飲み足りない気がしていたので、いいよ、知ってるところあるの?と。
彼に行きつけに誘われた。やっぱり年配のマスターだった。
こういう若い奴には年配者が好きな奴が多い。父親を欲しているのかも知れない。
最近は離婚が多い。
母子家庭という奴で、こういう場合は人格的にもやはり女の影響が強く残ることが多い様に思う。
ユングじゃないけど、男根の存在が強く影響するのかも知れない。
俺は職業的同一障害を起こしているのにもこういう輩が多いと勝手に思っている。
男が職業を決める時は、憧れというのが気持ちが支配すると思っているし、
その憧れは、尊敬の対象とするか反面教師として見るかの違いはあったにせよ、
心の深いところで父親の存在が強く影響すると思うからだ。
ところでその若い客、俺にそういったものを感じているのかも知れないと思った。
とすれば、避ける方が良い。その手合いは心理的にまとわりつかれるような気がすることが多いから。
俺は、話の途中で、自分はウケであるということをそれとなく伝えた。
年配者を好む若い奴はほぼ100ケなものだ。
俺の考え過ぎか、それを気にする様子もないので、ちょっと寛ぐ気になっていった。
マスターはもちろん初対面だったけど、長いらしく、昔のことをよく知っていた。
俺も爺だから結構昔話が好きだ。
若い客が俺たちの話しを促すから余計に長くなってしまった。
そこで俺は元々ゲイじゃなかったことを話した。
若い客は歳は28歳と言った。
そんな若さでこういう店?と言うと、マスターが、学生時代からいらしてくれているんです、と言った。
俺は始めは殆ど監禁に近い状態でゲイに仕込まれたことも、そしてその後のことも話した。
若い客は、自分はもの心がついた時からゲイだと言った。
それと、かなりの高い教養を持っている。知識ではなく思考が洗練されている。
歳を考えれば、それは家庭的な教育もさることながら高等な学校教育を受けているからだろうと思った。
何を勉強したのかを尋ねた。
芸術関係だという。専攻を聞くと、それを持つ大学は限られている。
大学院修士課程も出ているということだ。本人の素養もさることながら指導教官が良かったのだろう。
で、なぜ流通関係かと聞いた。自分には素質が無い、と言い切ったのでそれ以上は聞かなかった。
ちょっと遅れて、もっと勉強すれば評論家にはなれたかもしれない、とぼそりと言った。
4時を過ぎて、俺も眠くなって、もう帰るよ、というと彼も帰るという。
そうかと、結局そこも一緒に出た。
出るなり、じゃぁな、と言うと、帰れますか、と言う。よかったら家へ来ませんか、直ぐ近くなので、と。
やはり俺を気に入っている様だ。
ウケどうしでは面倒のことにはならないだろうし、良い青年だった。
そういう関係もありかと思った。つまり精神的と言うか女同士の友達の様な。
それにも増して急に来た眠い感覚への吸引力の方が強かった。
若者らしい狭く簡素な、というか何もない。生きた続けた柵が無い。
俺は床に敷いてくれたマットの上ですぐに眠ってしまった。
9時を過ぎて起きたけれどやはり寝不足感があった。彼はまだ眠っていた。
ベランダに出てタバコを吸って戻ると、起きた様だった。
それから僅かな時間で、スナックからの話しに戻っていた。
モダンというのかコンテンポラリーというのかそういった芸術分野のはゲイが多い様だ。
彼は突然、幼児性愛者とかは可哀そうだと言い始めた。
欲求自体が犯罪で、それでもそれしか求められない、という苦しみだろうという。
そして彼は俺が好きだと言った。
自分はかなりの年上しか性的欲求が湧かないというのだ。でもそれはまだましな方だろうと。
今の若者にしてはちょっと小柄だろうか、172,3cmだろう。
そして容姿も綺麗で、仕事もしっかりしたところに努めている様だ。
何より種々の面で品があり、育ちが良いことがうかがえる。
しかし偽りができない性分であることは分かったので、それもやはり結婚ということもまた出来ないだろう。
親はゲイであることを知っているのだろうか、とふっと思ったが、それは口に出せなかった。
彼は、俺に付き合っている特定の者がいるかと聞き、そうじゃないと言うと、自分と付き合って欲しいという。
俺は、俺も気に入っている、だけどそれはまず君の人間性だよ、と言った。
その意味で付き合いはしたいけれど、君が父親ほどの歳の俺を気に入って、しかも性的欲求の対象というのがピンと来ない、と答えた。
本心だった。かつて経験が無い事だったから。
その日は、俺も仕事を休んで二人で遊んだ。
彼はビリヤードが得意だという。俺も得意だった、が、それは昔のこと。
ビリヤード場にはポケットしかない。四つ玉も三つ玉もない。彼は四つ玉の存在すら知らなかった。
ポケットは、9ボールか8ボールしか知らないし、殆どやったことが無い。
それでも9ボールを2時間ほど突いた。俺は3回に1回も勝てなかった。
昼はそこでサンドイッチを食ったが、もの足りず、その後ビァレストランに入った。
ビリヤードの話しついでに、何処か四つ玉の台を置いてあるところはないかと調べてくれた。
今度はそこに行こう、俺の力を見せてやると。
とはいっても、俺は一番いい時で持ち点50だったんだけれど。
彼は若さの持つ勘の良さとでもいうか、見よう見まねで覚えたのだろう、上手く落とすが基本ができていない。
まずブリッジと鋭い突き出しができていない。
ポケットが初心者が入りやすい点もここにあると思う。
殆どひねりが要らないから手玉の真ん中を突けばいい。
クッションの吸収やクッションの使い方も殆ど考えずに幾何学的にだけ考えればいい。
ちょっと酔った俺は、玉は大きい方が良い、四つ玉の玉はデカいと。
ポケットのあんな小さい玉なら俺のケツでも入る、とジョークのつもりで言った。
そう自分はおじさんのユルユルが好きだといい、突きたくて堪らないという。
今更ケツを貸すぐらい拒む理由はない。
もう一度彼の部屋に帰って好きなだけ突かせてやるよと言った。
突きたくて堪らない、本当だった。
部屋に戻るや否や、服を脱ぎ去ると俺を押し倒すように覆いかぶさってきた。
待て、シャワー位浴びさせてくれ、と言うのがやっとだった位だ。
若さのパワーセックスとでもいうのか、突きまくってくる。
爺は身体が硬いことも分かっていない。苦痛から体位を誘導してやっと楽になったという状況だ。
そしてこれも若さだろう、夥しい量の射精だった。
さらにもう一度おかわり君だ。明らかに性的欲求の対象だった。そしてもう一度俺が好きだと言った。
性欲というのは分からないものだ。
俺の思い込みが無くて、もう少し彼の遠慮がちな主張を慎重に正確に聞いていれば、それは分かったはずだった。
今日も夜にまた合う約束だ。
本当のケツの味を教えてやるのも悪くないかも知れない。
ビリヤードのように、粗削りで本能的に欲求を行為に現しているに過ぎない。
だけど、今また、彼の親のことをふっと思う。
俺には子供はもちろん家庭もないから考えようがないけれど。
ただ、好青年の裏にある、ちょっと暗くて重い、それでいて強烈な何かが気にはなっている。