女装かどうかも曖昧だし、失敗談でもないけど、衝撃を受けた体験。
時は高校1年。
俺のクラスには、40人の生徒がいた。男女比は7対3くらいで、少
し男子校寄りな学校だった。
その中の一人だった、孝介(こうすけ)が今回の主人公だ。
孝介は、少し地味な以外は、体格の良い普通の男子生徒だ。
高校生ともなると、誰にでも性癖が芽生えるものだと思うが、彼も例
外ではない。
言動を見るに、彼は「長靴フェチ」なのだ。女の子のモノに限るが。
判明したのは数か月前。
その時は農業体験として、クラス全員が自分の長靴を履いて、農作業
に取り組んだ。
女子はもちろん、細身で綺麗なレインブーツ(長靴のこと)を持ってき
た。
長靴を履いた女子達を見た瞬間、孝介のビッグキャノンは90度にそ
そり立った。俺は驚いた。こいつ、俺と同じ価値観なんだなって。
そう。俺も生粋の長靴フェチなのだ。
でも、その確信はない。もしかしたら体育着フェチなのかもしれない
し、そんなこと切り出して俺が引かれたら、と思うと怖くて言い出せ
なかった。
それから数か月後、雪国の厳しい冬がやってきた。
俺は長靴フェチとは言いつつ、中坊の時はカッコつけて一度も履かな
かった。
でも今年からは高校生だ。周りの精神年齢も上がって、長靴を否定す
る奴は少なくなるだろう。
俺は前から、女装に少し興味があった。
女装とは言っても、女の子の制服を着るとかいうレベルではなく、あ
くまでレディースデザインのローファーを履いてみたりと、通学に使
えるような違和感のないものだ。
ここまでやるなら長靴にもこだわりたい。その考えに至るのは当然で
あったのかもしれない。
ネットで見つけた長靴は、乗馬スタイルのロングレインブーツだ。
履き口がナナメにカットされており、筒丈は47cmもある。
極めつけはエロさを感じさせる、美しくてエレガントなデザイン。
海外製なのでもちろん、メンズサイズもある。
届いた次の日。満を持して雪道の中、学校に履いていった。
「恰好いいな、それレディース?」
目論見通り、友達が引っかかる。そりゃ、レディースにしか見えんわ
なwww
こんなに堂々と、女装モドキな体験ができるなんて、やっぱり乗馬ブ
ーツは最高だ。
自分の足元を見ると、ほっそりした繊細な爪先に、流れるような全体
のライン。勃起が止まらない。本当に自分の脚なのか?
しかし、長靴は長すぎて下駄箱に収まらない。目立つけど仕方なしに
下駄箱の上へと置いた。
さて、今日は用事があるので、放課後の部活を中断して帰宅しなけれ
ばならない。
部室を出て、足早に長靴の待つ昇降口へと向かう。
廊下には、俺だけの足音が響き渡った。まだ皆部活動中なのだろう。
昇降口まであと少し。下駄箱が視界に入った途端、俺は目を疑った。
履いてきた長靴が、ない。
落ちていないか周りを探すが、やはり見当たらない。
先生に相談するか・・・。その前に、急にトイレに行きたくなった。
最寄りである昇降口横のトイレに駆け込む。
そのトイレは小さく、小2個と大1部屋しかない。
大がしたい俺は、半開きの扉を開けた。目が合った。孝介がこちらを
凝視している。
いや、それ以上に、その異様な光景に目を奪われた。
ズボンを下ろして股間をさらけ出す孝介。その手には、あろうことか
俺の長靴が握られている。
長靴にぶっかけられた、白濁液を見て俺は気分が悪くなった。
孝介は観念したのか、へたり込む。
それに対し、俺はなんとか言葉を絞り出す。
「その長靴、誰のだか知ってるか?」
孝介は、瞳をうるつかせながら首を横に振った。
俺は続けて、
「靴底見てみろ。」
孝介は指示通りに、長靴を裏返す。
そこには、「Made In Germany 27.5cm」の刻印が刻まれていた。
孝介は、サイズから女の子のモノでないと察したらしい。
トドメに、俺は自分のことを指さした。
孝介にも、その意味が理解できたようである。顔を真っ赤にして、鼻
水を垂らしながら、長靴を置き去りにトイレを出て行った。
残された長靴は、孝介が出した白濁液まみれで、ドロドロに変わり果
てている。
「まったく、なんだあいつ。」
大きく独り言を吐いた後、そのドロドロな長靴を履いて、俺は帰路に
ついた。雪はほとんど溶けていた。
衝撃を受けたことは確かだったが、それ以上に、俺の長靴は魅力的な
ぶっかけ対象として、女子の長靴という前提の元、認められたのだろ
う。
ショックなような、嬉しいような、憎たらしいような。
意味不明な感情が芽生えては消えていった。
その後、孝介は担任曰く「親の事情で」退学するのだった・・・。