女装は、抑圧された日常から離れるための一時の非日常快楽のためにします。自分の中に潜む淫乱女への変身願望を満たすためのB面の自分。
A面の普段の自分は真面目に優しく周囲に信頼されて、女装とか男への興味など微塵も匂わさないように生活しています。
A面の自分の趣味、ライフワークはゴルフ。煩わしい業務から離れて一人黙々と練習場で球を打ち込み、家族からも離れてゴルフ場に通う瞬間が至福です。
先日そんな自分のA面とB面が交差しました。その時の体験談を書きます。
A面の自分はロマンスグレーながら身なりもきちんとしてて、ゴルフウエアもお洒落でスマートをモットーに着こなしているつもりです。昔水泳で鍛えたおかげで体型もさほど崩れていません。
ふとラウンドしたくなったある日、クラブに電話して適当な組み合わせでいいからプレーを申し込みました。
当日行ってみると、私より一回り以上、上の60台後半ぐらい、日焼けしてガッチリとした体型、短く刈り込んだ白髪といった風貌のいかにもベテランゴルファーのメンバーさんと二人で回ることになりました。その方を小林さんとお呼びします。風体はやや強面ですが、明るく優しい礼儀正しい方でした。
まずはきちんと挨拶を交わし、プレースタート。小林さんのハンディは7、私は15です。一緒に回ってストレスはなさそうです。
独特のフォームで力強い球を打つ小林さん。私も周囲からフォームが美しいと絶賛されますから、負けず小林さんをオーバードライブしていきます。
小林さんは饒舌な方で、キャディさんと、今日の芝目がどうだ、他のゴルフ場でこんなことがあったとご自分のペースでプレーされています。
私も小林さんのペースを乱さぬよう、ラインを読んだりファストプレーを心がけたり、ナイスショットの声かけたりと、穏やかな雰囲気で進行していきます。3ホール目から小林さんもお声をかけてくれて、
「どちらから着ました?」「どこでプレーすることが多いですか?」「スイングが綺麗ですね、いい球打ちますね」と初対面のゴルファー同士の掛け合いが進みます。
「小林さんも低い風に負けないいいため打たれますね。」「アプローチが絶妙で勉強になります」などなど、打ち解けてきました。
「いやあ、この間一緒に回った親父さんは最初から酔っ払ってまともなゴルフしなかったり、若造が生意気だったりですが、ひかるさんと回ると、楽しいですねえ」「こちらこそベテランさんの技を盗めるいい機会ですよ」
同伴するプレーヤーの方がご機嫌がいいと、安心してプレーできいます。
小林さんに気に入れられたのか、ご家族のこと、海外でのプレーのことなど色々お話聞かせてもらいながらプレーが進みます。キャディ以外は二人ですから、当然私が聞き役になります。
そのうち若い時の遊びの話も出て、あんな女とも遊んだし、あんな事もしたし、と。
「昔はねえ、色々遊んだからねえ、女よりも男の方が良かったりもしたんですよ」と、そんな話もちらほら出てきます。
「へー、小林さんもお盛んだったんですねえ。私なんか、最近若い子に相手もされません。お店とか行くとモテるんでしょうねえ。」
「そりゃね、たまには水遊びもしますよ。でも、女って手間もカネもかかるしねえ」
「そーですよね。女は面倒くさいですよねえ。でもそんな精力のある小林さんってすごいっすね。飛距離は負けませんけど」
「わはは、ひかるさん、フォーム綺麗だしとびますねえ。下半身がいい!」と
パンとお尻を軽く叩きます。
「いや、さっきから思っていたんですけど、ひかるさん、いいケツしてますねえ。」
ゴルフ場には女子とも行くことがあります。男のフェロモンを醸し出すために足が長く見える、フィットするパンツを履くのですが、結構お尻がプリン、と協調されるのです。
そんなお尻を小林さんに見られていたんだ。A面の自分は、当然プレーに集中してますし、B面のことは湧いてこなかったのですが、この時、もしかして小林さん、私狙ってる?って思いました。B面の経験から、自分をメスとみる相手は、感じ取るんです。
でもそんなこと面に表す訳にもいかず、お尻叩くくらいは男どうし普通にありますから、
「ありがとうございます。尻はよく褒められるんですよ」と冗談っぽく返します。
「いやあ、ひかるさん、さっきから見とるけど、これはいいケツですわ。昔はよくこういうケツ、たのしませてもらいましたわ!」とあっけらかんと言ってきます。
「小林さん、そっちのけもあるんです?」
「そりゃこの歳になればね、いろんな経験ありまっせ。男も女も、ヒーヒー言わせましたわ、がっはっは!」
「あー、僕はあまりそっち系はないですが、小林さんなら絶倫なんでしょうねえ!」なんて、涼しい顔で受け流しました。
そうしながら、2ホールほど進み、午前のハーフ休憩で二人でランチをとります。
しばらく互いのゴルフ経験などの話をして盛り上がっていたところで、小林さんが、身を乗り出してきました。
「ひかるさん、わしはあんたが気に入りましたわ。ゴルフうまいし礼儀もできてる。」
「ありがとうございます。人生の先輩にそう言われると嬉しいですね。」
「それにいいケツしてる。下手な女より色気があるよ。」
「そうですか?それは嬉しいやら」
「どうだい?プレー終わった後、わしに抱かれてみないか?いや、その気がないって言いながら、ひかるさん、なんかメスの匂いがするんだよな。わしの勘違いならすんませんな。気を悪くされたら謝りますから。」
自分のB面を隠していたのに見抜かれた気分で一瞬ドキンってしました。まさかそんな話に発展するなんて予想外でしたから。
でも、この方なら扱いも上手そうですし身元もわかってて安心ですし。断ればここで終わるだけですから心配ないですし。
「いやあ、実は自分も昔は男の人と遊んだ時期はありますが、最近もっぱら女ばっかりで、、、、どうしたもんだか。」敢えて困ったようなしどろもどろした返事をします。
「がっはっは、嫌なら冗談だと思ってもらっていいんですよ。なんせ久しぶりに色気のある男に出会ったもんだから。女にもモテるでしょう、ひかるさんなら。まあセミリタイアの親父ギャクですよ。」「でもね、味わった頃あるならお分かりでしょうが、男もいいもんですよ!」
一気に自分のなかでB面が頭をもたげ、濡れ始めたのがわかったのです。でもここでまさか自分が男好きです、なんて言えるはずもないので、ちょっと考えてからこう言いだしました。
「面白そうな話ですね。じゃあ、後半、スコアで小林さんが勝ったら、僕の体好きにしていいですよ!多分僕が勝ちますが!」冗談っぽくも色気を持たせて言いました。
「お、ほんまですか!!わしが勝ったら!?いいですかね!」
「男に二言はありません!」
「よっしゃ、じゃ、がんばろ!負けまへんで!そんでもってわしがヒイヒイいわせたります!こう見えてもあっちはまだガチガチの現役ですぞ!いや~後半楽しみ。こりゃ頑張らないと!」
あくまでも明るく、スコア勝ったら何か奢らせるぞ、くらいのノリで、食事を終わらせ普通通りに後半スタートに向かったのです。
後半、小林さんの体がキレ始めました。スイングが綺麗で飛距離も伸びてる感じです。何よりもアプローチが絶妙。こっちが飛距離で勝っても、絶妙な距離感でパーを取ってきます。一方動揺したのか、私はOBまで飛び出すほどにショットが安定しません。あくまでもポーカーフェイスを装いますが、焦りと、でもこの人に体を好きにされるんだ、、という興奮が高まります。
小林さんは、いいショットやパットの時はナイス!ってきちんと声をかけてくれて、ほとんどは普通のゴルフと変わりません。でも
「いやあ、この調子じゃあ、そのケツは私のもんですねえ」とにやけています。
終わってみれば6打差で負けました。