ホテルの部屋には和室の一角がありました。
二間続きではなく、部屋のすみがL字型の障子で囲われているんですね。若干上がるように高くなっている。
そこにテレビやらテーブルがあって団欒ができるようになっていました。
凄く雰囲気が良くて、温泉なども済ませたらここで飲みましょうってことでまとまった。
この晩は本当にすべてが楽しかった。
和室でお酒を飲んでほんのりとした最高の気分になれば、いつもとはまた違った空気が生まれてくるものです。
私達は普段より少しきわどい会話なんかもしました。
彼はアルコールが入ってもへべれけにはならないけど、この日は普段よりはピッチも早かった気がします。
凄くリラックスしているのが伝わるからこちらもリラックスできた。
「そろそろ二人もちょっとした倦怠期が来てもおかしくないころでしょ?どうなの、一度くらいは浮気しちゃった?」
「しませんよ~。ハハハ」
「別にしゃべったりしないわよぅ。私もさんざん泣かされた口だから。男の浮気くらいじゃ驚かないわよ」
「お母さんが彼女にしゃべるなんて全然思ってないです。でも、そんなに泣かされたんですか?」
「本当に泣いた訳じゃないけどね(笑)最初は怒ってたけど途中からはそんな感情すら失せたの。だから離婚した…」
「ちなみに、昔高校生の頃にたまに行ったりしてた時とかってつきあってる人とか居たんですか?」
「えっ?いないわよ…まだあの頃は仕事も忙しかったし…そんな昔の話どうして?」
彼は一口煽ると、ちょっとだらしない格好していいですかと言って、座椅子の背を相当後ろに下げた。
「いやあ、たまに話してたんですよ、女子同士で。お母さん再婚したらどうするとかなんとか、彼女はワイドショーのレポーターに質問されたりしてました…
お母さんあの頃めちゃくちゃ綺麗でしたもんね…あっ、もちろん今もですけど。本当にあんまり年取らないですね」
私の知らないところでそんな話をしていたんですね。
私はいつも家にいた訳じゃないし、会う時は仕事帰りでビシッとスーツとか来てましたから、余計にそう見えたのでしょう。
でも、あらためてK君に言われると嬉しかった。
「あんまり男子が来ることはなかったけど、K君がたまに来てたのは狙ってる子がいたのかな?」
なぜかK君は楽しそうに笑った。
「なんか今日は凄く気分がいいから話しちゃおうかな…」
K君はちょっと姿勢を正し、景気づけにコップの残りを煽った。
「実は誰が目当てかと言われればお母さんでした」
「ええええっ!」
「いや、本当に。これは誰にも話してないですけど。もうビジュアル的にはストライクゾーンど真ん中ってくらいタイプでした」
「あの頃でも私は40やそこらの年齢よ?」
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