初めの結婚から1年も経たないうちに、前妻の不貞が発覚。
相手は前妻が勤めていた会社の上司で、披露宴にも参列していた。
元々俺が出張の多い仕事をしていた事もあり、気づかなかった。
少し怪しいと思い始めたのは、水曜が定時退社だったはずなのに、
帰りが毎週のように遅いことからだった。
かと言って、探偵をお願いしたりするのは気が引けた。
しばらくしてから、二人で住んでいた家に弁護士事務所から内容証明が届いた。
前妻はしらばっくれたが、会社にも届いていたらしく、公然となってしまった。
弁護士になった高校の同級生に連絡を取り、こちらも対応することにした。
付き合った勢いで結婚した生活だったから、二人で何かをしたという思い出も少ないうちに、
慰謝料代わりに婚約指輪から結婚に関わったものをすべて売らせた。
俺も返礼として貰っていた高級腕時計を気持ち悪かったので売った。
先方からも俺の弁護士が提示した金額の慰謝料が、すぐにではなかったが、振り込まれた。
俺は忘れようと仕事にのめり込んだ。
おかげで地方だが、同期よりも先に支店長になれた。
日頃から良く行くホームセンターのアルバイトの女子大生の子と普通に話すような仲になった。
きっかけは仕事帰りに近くのスーパーで買い物をしていた時に声を掛けられたことだった。
偶然にも、以前は俺が離婚前に住んでいた家の方に住んでいた。
親の離婚とほぼ同時に大学進学で今では母親も同じホームセンターで働きながら、二人で暮らしていると言う。
年齢差はあるにせよ、孤独なサラリーマンの心に花が咲いた感じがした。
ある時、意を決して、連絡先の交換をお願いしたら、快く応じてくれた。
デートを重ねて、彼女が初めてうちに泊まりに来た時に、男女の仲になった。
彼女は初めてだった。
そこから逢瀬を重ねて、彼女にも女性としての喜びが分かるようになった。
そんな時に、会社支給の携帯に知らない番号から電話が掛かってきた。
仕事の件だと思い、出てみると、前妻からだった。
私用のスマホは番号も変えたが、会社支給のものは変更が出来なかった。
何かと思えば、痛い悲劇のヒロインを気取りながら金の無心だった。
こちらの気持ちを考えない、その態度になんだか一気に色んなことが冷めた気持ちになってしまった。
状況把握の為とは言え、無駄な時間を過ごしたとも思った。
とりあえずは良い生活は送っていないことは、あからさまに分かったから、ざまあみろとも思った。
一人で飲みに行き、カウンターで自分よりも少し年上のシングルマザーにどちらからとでもなく声を掛けて、
飲んでいた。
どこかで見たことがあると思っていたら、ホームセンターの店員だったから、彼女の事は話さなかった。
そして、むしゃくしゃした気持ちをぶつけるように、女性を部屋に誘っていた。
始めは少し渋った女性をしつこく誘ったら、応じてくれた。
飲んでいたことが理由だろう。
俺はむしゃくしゃした気持ちを女性の肉体にぶつけていた。
彼女には決してしなかった激しく、とにかく欲望のままにむさぼるように嘗め尽くした。
翌朝、女性は消えていた。
しばらくして、ホームセンターですれ違いざまに、
「あの時の事は、なかったことにしておきましょ。」と囁かれた。
そして、その時に俺はネームプレートを見て、彼女の母親であることを知った。
女性がそう言うのであれば、こちらとしても好都合ではあった。
彼女とはそれからもデートを重ねた。
就職活動をなかなかしない彼女と話している時に、結婚の話をされた。
『結婚』そのものが俺にはトラウマになっている事は話はしなかったが、
話し合いを重ねて居れば、彼女の方が気づき始めた。
「とりあえずそういう話だったら、ママに会わせるわ。」と言って、
こちらが断る間もなく、家に送り届けたら、そのまま家に上がらされた。
見知ったと言うか、体を嘗め尽くしてしまった母親が平然と待っていた。
母親は一枚上手だったと思う。
こちらは緊張していたが、悠然な態度で、自分の離婚した時のことを話してくれた。
包み隠さず話してくれているのは分かった。
俺だって経験者だから、もちろん話せないこともあるが、それは聞かない。
「あなたもまだ若いんだから、まだまだ幸せになりなさい!」と激励された。
その相手がたまたま自分の娘なのかもしれないと、今度はそっちの説得に入った。
俺は泣いていた。
そして、一度抱いた女の前で、彼女にプロポーズしていた。
具体的なことに関しては、大学卒業後に考える事にした。
お金を貯める意味も込めて、腰かけでも就職活動する事で話が決着した。
後日談だが、飲みに行った日に、母親の方も前夫から金の無心の連絡が来ていた。
お互いにむしゃくしゃしていたから、余計に無かったことに出来たのだろう。
それに母親の方は離婚して、元の姓を名乗っていたが、こちらが名乗ったときに、
すでに確信はなかったらしいが、俺の前妻が前夫の不倫相手だろうと感づいていたとの事。
大学卒業して、2年後に結婚式と披露宴を行うことになった。
彼女は嫌がっていたが、実の父親にも招待状を出させた。
招待状の返送先は、あえて局留めにしておいて、こちらの詳細な住所は知らせない事にしてあった。
案の定、俺と義母になった女性に、それぞれ喚きちらす連絡が来た。
結果的に俺と義母の密かな復讐が成立してしまった。
今ではその町を出て、本社勤務に戻り、子供も2人生まれて、
家族6人で仲良く暮らしているが、時々義母が女に見えて仕方がない時がある。