ある日、会社の受付から俺に電話があった。面会したい女性がいる、と。名前は湯川というらしい。
アポイントは取ってるのか?と訊くと「ノーアポだがマユさんとのことで、と言ってくれればわかる」と言ってるらしい。
麻結?これは何かヤバそうだ。誰かにバレたか?
嫁にバレてはまずい。
俺は少し緊張して湯川という人物を応接室へ招き入れた。その女は初老だが品の良さそうな服を着た意志の強そうな顔をしていた。
「私、麻結の叔母の湯川です。貴方に麻結のことでお話に参りました。
麻結が最近良い暮らしをしていたり、彼氏ができたという噂がありまして、貴方様のことを調べさせていただきました。麻結の旦那さんになるべき人は弟の会社の跡取りになるべき人です。貴方様はご家庭もあり、それにふさわしい人ではありません。麻結とは今後一切会わないと約束してください。貴方と麻結のことは洗いざらい調べさせていただきました。麻結の住んでいるマンションも解約してください。」
そう言って湯川と名乗る女は分厚い封筒をよこした。
茶封筒におそらく100万円入っているのだろう。俺にとっては大金ではないが、手切金のつもりで渡したのだろう。
俺も世間体があるのでここで声を荒げるわけにはいかない。
「わかりました」
「このことは麻結は知りません。貴方様の方からそーっと離れてやってください」
「はい」
そういうと湯川という女は出ていった。
やはり令嬢は箱入りなんだ。本人の意思に関係なく周りから見張られている。
決められた道を進むしかないのだ。
俺は後日麻結を呼び出し、一連の流れを話し別れることにした。泣き崩れる麻結。辛いが今も探偵に見張られているかも知れない。
この局面で密会を続けるとなると、大問題に発展しかねない。
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