裕之さんのお誕生日に手料理を作るので、いつも行くスーパーより、ちょっとお値段高めだけど品揃えがいいお店でお買い物をしました。
『裕之さん、こんにちは。お邪魔します』
『いらっしゃい、どうぞ上がって下さい』
『失礼しますね』
まず、最初にお仏壇にお線香を上げさせてもらいました。
亡くなった奥様が優しく微笑んでいる写真が飾られていました。
若い頃のお写真だと思いますが、綺麗な方でした。
台所に立って、食事の支度を始めました。
メニューは、しゃぶしゃぶと肉じゃが、それと茶碗蒸しです。
以前に裕之さんがひどい風邪を引いて寝込んだ時にお宅にお邪魔して押し掛け女房まがいの事をした事が有るんですが、今回は台所も他の部屋も片付いていて、スッキリしていました。
ご飯の用意が出来て、裕之さんとダイニングテーブルで差し向かいに座りました。
裕之さんが、見るからに高そうな日本酒を注いでくれて、二人で乾杯しました。
『裕之さん、お誕生日おめでとうございます』
『加代さん、ありがとう』
裕之さんが、しゃぶしゃぶのお肉を湯通ししながら
『これはまたいいお肉ですね。高かったでしょう?』
『ええ…ちょっと奮発しました。どう、美味しい?』
『うーん、旨い!口の中でとろけます。』
肉じゃがにも箸を伸ばして
『これこれ、こういう家庭の味に飢えていたんですよ』
と、言いながら美味しそうに食べてくれました。
裕之さんが喜んでくれて、私はすっかり嬉しくなり、美味しいお酒とお肉を食べながら、時間を忘れてお喋りしているうちにあっという間に時間が過ぎていきました。
『あらっ、もうこんな時間だわ、そろそろ帰らないと…』
『えっ、加代さん、帰るんですか?もう夜も遅いし、僕も酒を呑んだから車で送っていけませんよ。今夜は泊まっていったら?』
『だって、ご迷惑じゃないかしら…』
(本当はしっかりお泊まりの用意までしてきたんですけど、自分からは言い出せなくて…)
『迷惑だなんて、とんでもない。逆に加代さんが帰ったら寂しいですよ』
『それなら、お言葉に甘えて、泊めて頂こうかしら』
裕之さんがお風呂の用意をしてくれて、その間に食事の後片付けを済ませました。
『加代さん、お風呂沸きましたから、先に入ってください。お客様なんですから』
『それじゃ、一番風呂をいただきますね』
よそのお宅のお風呂に入るって、ちょっと妙な感じがしますよね。
髪の毛を乾かしながら、裕之さんがお風呂から出て来るのを待ちました。
寝るときにどんな格好をしようかと迷ったんですけど、白いシルクのパジャマに着替えました。
裕之さんもパジャマに着替えてお風呂から出て来ました。
『寝室は2階です』
裕之さんが手を伸ばしたので、その手を軽く握って階段をのぼりました。
寝室のドアを開けると、そこにはセミダブルとシングルのベットが並んでいました。
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