裕之さんとの温泉旅行から帰って来て、お土産の温泉饅頭をお嫁さんの麻由子さんと食べながらおしゃべりしていたんですけど
『お義母さん、旅行は楽しかったですか?』
『ええ、お陰様で…、お部屋に露天風呂まで付いていて、何回も入ったわ』
『スゴ~い!豪華ですね。なんか最近のお義母さんって、すごくイキイキしていて若返ったみたいですよ。お肌もキレイだし…』
『あら、そう?この前の温泉が良かったのかしら…』
すると、麻由子さんが、ちょっと私を探るような目で見て
『お義母さん、本当は良いお付き合いをしている人がいるんでしょ?この前の旅行もその人と一緒に…』
『やだわ、何を言い出すのかなと思ったら…私をいくつだと思ってるの…この歳になって、そんな…』
『私も女ですから、お義母さんに好きな人がいることくらい分かりますよ。それにお付き合いしてる人がいるって、良いことだと思ってるんですよ、私は。その方が張り合いもあるし、いつまでも若々しくいられて、ボケたりしないと思いますよ』
『まぁ、麻由子さんたら、はっきり言うわね』
今時のお嫁さん達は、みんなこうなのかしら…
私もこれ以上はごまかせないと観念しました。
それに変に隠して詮索されたり、逆にお付き合いを反対されるよりかえって良いかもと思いました。
『でも、麻由子さん、大輔(私の息子)にはもう少し黙っててくれないかしら。あの子、それじゃなくても、心配性だし…』
『お義母さん、大丈夫です。こう見えても、私、口は固いんですよ(笑)それに男の人って幾つになってもマザコンだから、お義母さんにお付き合いしてる人がいるなんて聞いたら、きっと大輔さんパニック起こしちゃうと思います』と言って麻由子さんが笑いました
『そうよねぇ』と私もつられて苦笑いしました。
『でも、お義母さんが羨ましいなぁ…あぁ、私もトキメクような恋がしたい。あらっ、こんなこと、お義母さんの前で言ったらマズイですよね。あくまでも願望ですから…』
『願望っていうのも、ちょっとどうかしら』
『エヘッ、妄想です、妄想…』
そう言って、麻由子さんがペロッと舌を出しました。
全く、ちゃっかりしたお嫁さんなんですけど、なぜか憎めないんですよね(笑)
そんな話を朝の散歩をしながら裕之さんにしたら、
『楽しいお嫁さんですね。でも、僕とのお付き合いを反対されなくて良かった』って、言ってくれました。
『そう言えば、そろそろ裕之さんのお誕生日ですね。何か予定が有るんですか?』
『あれっ、すっかり忘れてました。予定なんて何にも無いですよ。せいぜい、子供達から電話が来るか、来ないか…そんなところです』
『だったら、私にお祝いさせてくださいませんか?この前、温泉に連れて行ってくれたお礼もしたいわ』
『本当ですか?嬉しいな。』
『裕之さん、何が食べたい?和食?それとも洋食?』
『う~ん、そうですね。加代さん、僕のお願い聞いてもらえますか?』
『あんまり、お高い所はダメよ(笑)』
『加代さんの手料理が食べたいです。しかも、僕の家で…どうですか?』
『私の手料理なんかでいいんですか?』
『はい、ぜひともお願いします』
という訳で、裕之さんのお家で二人だけでお誕生日のお祝いをすることになりました。
前日の夜に、息子夫婦と夕食を食べながら
『明日はお友達のお家で誕生日会をするから、お夕飯はいりませんからね。もし、帰りが遅くなるときはお泊まりするかも…』
すると、息子の大輔が
『エッ、泊まってくるの?迷惑じゃない?』と言いました。
すかさず、麻由子さんが
『あなた、女はね、いくつになっても友達とのおしゃべりがストレス発散なのよ。ねぇ、お義母さん』
と助け船を出してくれて、ウィンクして来ました。
私も
『そうそう、麻由子さんもたまにはお出かけしてストレス発散しないとね』
『エエッ!麻由子が出かけたら、ご飯作ったり子供の世話はどうするんだよ』
『そのくらいは私がやるから、麻由子さんもどうぞ羽根を伸ばして来なさいな』
『おいおい、おふくろまで何を言い出すんだよ。まったく…』
息子の慌てぶりが可笑しくて、麻由子さんと二人で、アハハ、ウフフと笑い合いました。
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