Kissはシンプルだが、意味深い行動だ。
時に愛情表現であり、時に情事のスタートの合図になる。
ただ、この時のkissは、どこに属するのか、うまく説明できないが。
少し厚ぼったいケイコの唇は、柔らかく温かかった。
重ねては離れ、感触と温度を確かめるようにまた重ね
4度目の前にクラクションが鳴った。
「青だよ」
ケイコが微笑む。
赤信号がもたらした夢の時間は、その日は一度きりだった。
次の信号も、またその次も
本当に夢だったみたいに
くだらない話をした。
「そろそろゲーム終了の時間かな」
見慣れた景色が流れ始めたころ、僕はそう切り出した。
「そうだね。楽しかった。ありがとね」
言葉の軽さに思わず「ありがとう」と返しそうになる。
Kissより先をしたいという男の気持ちと、純粋にもっとケイコが知りたいという思いで、僕は続きを志願した。
「ずいぶん軽いなあ。コンティニューしてもいいですか?」
ケイコは、しょうがないと言うように一息つくと
「言うと思った。kissしたからって次はやれると思うなよ」と、僕のほっぺたをつねる。
男の部分を見透かされた僕は驚きを隠すように
「いや、そんなことないよ。楽しかったから、また逢いたいなって。まあ、ちょっと思ったけど」と目を伏せた。
「正直だね。やっぱ面白い。じゃあ、ちゃんと記憶にセーブしといてね」
僕のおでこをつつきながら言う。
「ケイコの唇を忘れないようにしとく」
「バーカ」
メールだとお互いにバレるかもしれないからと、サイトの掲示板で連絡を取り合うことを約束して別れた。
一人になった帰り道
僕は唇をさすりながら、kissより先を想像した。
幕切れのことなんか考えもせずに。
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続きます。
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