肩を抱き寄せた。
どうしようもできない。俺を見送った妻と幼子が脳裏をかすめる。
デート断ればこんなに重い悩みはなかったはずだ。
暫く無言で肩を寄せあい浜辺でたたずんでいた。
「ゴメンゴメン、神田くん、困っちゃうよね。ケンちゃんもいるしね。あんな可愛い奥さんもいるし。羨ましいなー智子ちゃん(妻は会社の後輩、あゆみさんとは顔見知りていど)あの頃は智子ちゃんたち若い子がさ神田さん神田さんって、うちの後輩の女の子も神田くんの話ばかり私にしてきてね、当時はね、私は年下は絶対ないって思ってたから、「ふーん」程度よ。でも、色んな人と付き合ってても、神田くんのような人はいない。誰にでも優しくて前向きで、神田くんのこと嫌っていた男性陣だって「神田なかなかいい奴じゃないか」とかいつのまにか変わっちゃうし、不思議だよね神田くんて」
そんなことを言われたこともなく気にしたことなかったのでとても嬉しかった。
町田駅に到着。あゆみさんは町田駅で降りる。オレは、横浜線なので、乗り換える。少し距離があるのでついてきてくれて見送ると言う。
土曜日の夕方で通路は混んでいた。急いでいないから改札は行かず広場の方へ人混みを避けるつもりで方向を変えた、後方を歩いていたあゆみさんにわかるよう、後ろ手でコッチと手招きをする、すると、柔らかい感触。振り返るとあゆみさんがニコッと首をかしげる。手をつないであゆみさんを引っ張る。
広場へ一度でた。手は離さない。
「神田くんなんか私たちカップルみたいだね」
38才相応の顔と思っていたがこのときは20台後半のお姉さんみたいに若返っていた。
「まだ少し早いし、私のマンション見てよ、まだすごくきれいだから」
あゆみさんは、いかにも独身お局みたく、昨年駅近くにマンションを購入したのだ。「お宅拝見しますか」
着いていった。
14階の景色が綺麗なマンション。眼下に小田急線の線路が相模大野から何となく江ノ島方面別伸びて沿線の駅前のビルとかが見える。
「今日はあっちに神田くんといったのー。楽しかったなー。」
やばい。いい人が見つからなければあゆみさんはずっとそう思ってこの景色を眺めるのか?
「自慢のソファー。座って」
腰かけているとあゆみさんは隣に。そして俺に抱きついてきた。あゆみさんの心臓バクバクが伝わってくる。
「きょうだけだから、お願い」
そういうとオレの首から耳たぶへ軽いキスをしてきた。
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