また続きです。
彼女の娘は、陰から俺を見ていたのだった。
お墓の前にいた俺にLINEトークを送りながら、背後に近ずいてきていた。
気がついて振り返ったとき、彼女がそこに立っていると錯覚するほどに生き写しの娘に驚きを隠せなかった。
出会ったころの彼女そっくり。
当時の俺は一目惚れで、3度目に会った時に食事に誘い、告白をした。あの時の光景が脳裏を駆け巡っていた。
俺の驚きの表情を見た娘は、笑顔で声をかけてくれた。
それから、LINEでは話しきれないことを、話したくお時間ありますか?と聞かれて、どこか良いところがありますか?と訪ねた。
家に来て欲しいと言われて、俺は着いて行った。
晩年を過ごした彼女達のマンションに行き、彼女の想い出の品を見せてくれた。
俺が彼女にプレゼントしたものを、娘は熟知していた。
そして衝撃の話しが繰り出された。
娘は、母親である彼女が妊娠していたことを切り出した。
彼女は、俺の子を再び身籠り、産む決意をしていたというのだ。
娘の想像からは、母親はどうしても俺の子が欲しくて、1年後の再会を企画しての行動だったという。
そして妊娠が明らかになったときの、母親の喜びようは、ものすごいものだったと言っていた。
母親が大好きだった娘は、その母親の姿を見ていて、仇と思っていた俺のことを許す方向に気持ちが傾いていたとのこと。
母親が亡くなり、遺品の整理をしながら、俺との繋がりのある品や、写真を見つけ出して、母親を思い気持ちの整理をつけていたという。
品物は母親が想い出話しを織り交ぜて娘に話して聞かせていたそうだ。
写真は生前に見せられたことはなかったが、整理しているときにはすぐに分かったと言っていた。
その遺品整理をしたあとも、捨てることは考えられず、ことあるごとに隠し持っていたところから、引っ張りだして見ていたといっていた。
彼女が使っていた携帯は、そのまま娘が使っており、機種こそ変えてはいたが、生前母親が言っていた携帯番号の話しも娘は知っていた。
そして、一周忌以降、俺に他界した母親のことを伝えようかどうしようか迷っていたことも話してくれた。
そして今回、俺は必ず来ることも予測出来ていたというのだ。
恐ろしいほとに、考え方も容姿も彼女に似ていた。
まるで、タイムスリップして彼女との再会をしているようだった。
時折見せる娘の笑顔と笑い声が、尚更俺を狂わせた。
写真は、彼女と付き合っていた頃のもの。
再会したときのものもある。
お泊まりデートで観光地に行ったときのものだけだと思ったら、彼女が残していたのは、そればかりではなく全てだった。
俺たちは、バカップルよろしく、観光地では辺り構わずキスをしまくり、とにかくベッタリとくっついていた。
何処で誰が居ようがお構いなく、2人が一緒にいると、本当に2人だけの世界に入っていた。
お互いがお互いしか目に入っていなかった。
そんな2人だけに、あんなことも、そんなこともしていた全ての記録が、データとして整理され残されていたのだった。
俺は赤面して狼狽えた。
手渡しされたアルバム化された写真だけではなかったのだ。
写真としてプリントしたのは娘だった。
俺に見せる為にデータからプリントしていたそうだ。
データとして保存されていた画像もあると言われ、ついつい、見てみたいなと言った俺がばかだった。
まさか、全てを彼女が残しているとは思っていなかったのだ。
10年間の記録は、ポラロイド写真をスキャンしてデータ化したのは俺だ。
別れる前に全てが欲しいと言われて作ったデータだった。
見覚えは当然ある。
恥ずかしながら別れたあともずっと観ていたのだから。
そのデータを、何度も見ていたと言う娘。
どれほど母親が俺を愛していたのか、愛されていたのかがそのデータを何度も見返していて理解出来たという。
若い娘が見て良いものではない。すぐに消去して破棄することを強く勧めた。
恥ずかしすぎる画像。
数々のプレイ。
コスプレ、縛り、野外露出、野外フェラに野外挿入。
溢れでている画像。
排泄ものまでもある。
娘はその全ての画像を見て、母親の屈託のない笑顔ばかりなことを指摘した。
怒っている表情も、真に怒っているのではなく、膨れて見せて甘えている表情だという。
そして、いつも明るい笑顔であった母親だが、こんな笑顔は見たことがなかったという。
ほぼ毎回撮影していた俺。
データは膨大。
娘は当時のデータをHDにコピーして保存していた。
その膨大なデータの中。
本当に哀しい表情を見たのは、別れを決めたあとの画像。
別れ話しの時期には撮影もほとんどしなかったが、記念に撮ってという彼女に促され撮影したものがある。
2人とも無理矢理作り笑顔をするものの、瞼は腫れているし、表情に陰りがあることも、ありありと見てとれる。
まさか、娘とこんなものを見ることになるとは思ってもいなかった。
そして娘から驚きの発言があった。
俺は娘の話しを制した。
そんなことは出来ないこと。
娘に会って数時間しか経っていないのに、俺の思考は現実感をなくしていた。
娘との会話も、堅苦しさはいつの間にかなくなっていて、声も容姿も、口調も、相づちまでも、彼女と瓜二つな娘に、心が勝手に癒されいた。
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