■婚約破棄とは
婚約とは、男女が将来結婚しようという約束をいいます。2人の間に真剣に将来
結婚しようという合意があればそれだけで婚約は成立します。
婚約をした2人の内の1人が正当な理由がないのに一方的に約束を破った場合を
婚約破棄 (婚約不履行ともいう)といい、相手に慰謝料や婚約に要した費用の請求
をすることができます。
■婚約破棄の正当理由とは
婚約破棄に正当な理由があれば、破棄をした者は損害賠償責任を負いません。
正当な理由とは、
・結婚式の直前に相手が家出をして行方不明になった
・相手方から虐待・暴行・侮辱等の行為があった
・多額の借金があること、学歴・経歴など、将来生活をともにしていく上で重大
な
隠し事をしていた
・相手方に不貞な行為があった
・相手方に性的無能力があること等
なお、婚約破棄の正当理由は内縁関係の破棄に比べるとややゆるやかに解されてい
ます。
正当な理由とされない場合は、
・方角・相性が悪い、年回りが悪い
・性格が合わない
・相手の容姿・態度が気に入らない
・国籍が違う等の差別によるもの等
■婚約の証拠は
婚約が成立しているとみなされるためには、2人が真剣に結婚の意思を確認しあえ
ば有効です。証拠がなくても相手が婚約破棄の事実を認めて慰謝料等を支払ってく
れれば問題はありません。しかし、慰謝料請求したからといって相手が素直に支払
ってくれるケースは少なく、調停や裁判になれば婚約を証明出来るような証拠が必
要になってきます。
「現在同棲している。」とか単に「肉体関係がある」というだけでは婚約とは認
められません。
通常は「結納の儀式を交わした」「婚約指輪を贈った」「結婚相手としてお互いの
家族や親戚、友人などに紹介した」などの事実が必要です。 また、結婚式場や新婚
旅行の予約、新居となるマンション等の賃貸契約や家具・家電を購入したことも重
要な証拠になります。これらに要した費用は慰謝料とは別に請求可能です。
手紙やメールなども証拠になりますのでプリントアウトしたり、携帯メールはメ
ールの内容を写真に撮る(本文だけでなくヘッダーの部分から撮影しておく)など
して大切に保存しておきましょう。
■慰謝料はいくら請求できるか
慰謝料の額は特に基準はないのですが、婚約破棄の理由、婚約期間の長さ、肉体
関係の有無、年齢、社会的地位、年収などの各種の事情を考慮したうえで決定しま
す。ケースバイケースですが、一般的には50万円~200万円といったところが
多いようです。
ただし、婚約者の一方が婚約を破棄するについて正当な事由があれば相手方は慰
謝料や損害賠償を請求することは出来ません。正当事由とは将来、円満な夫婦生活
をおくるのに支障をきたすような事情があることです。
たとえば、別の相手と愛人関係にあった、新生活を始めるにあたって支障をきた
すような重大な事項を隠したり、うそをついたりしていた。婚約したあとに相手の
態度が変わり、暴力をふるったり暴言をはいたりするようになった場合などです。
また、性的無能力や回復の見込みのない疾病にかかった場合にも慰謝料を支払うこ
となく婚約を解消することが出来ます。
■結婚準備のために使った費用はいくら請求できるか
不当に婚約が破棄された場合は精神的な慰謝料とは別に、結婚式や結婚生活の
準備のために費やした費用の返還を求めることができます。
まず、結納金は不当利得として返還義務がありますが、結納を贈った側の不当な
婚約破棄の場合には返還を請求することができないのが判例の傾向です。
結婚式場や新婚旅行のキャンセル料、新生活のための準備のために使った費用(マ
ンションなどに入居するための敷金、権利金、不動産屋への仲介料など)も請求す
ることができます。
また、結婚のために会社を退職した場合には、そのまま仕事を会社に勤めていれ
ば得られたであろう利益(得べかりし利益といいます)も請求することができま
す。
■婚約破棄の慰謝料請求~まずは内容証明で
婚約破棄により慰謝料を請求する場合にはまず、相手に対し内容証明で具体的な
金額をいつまでに支払うように請求しましょう。婚約破棄の慰謝料請求の内容証明
は本人が出すより、行政書士などの専門家が関与したほうがより効果が期待できま
す。
内容証明を受け取ると相手はかなりプレッシャーを感じるものです。あまり証拠
がなくても相手が自分の行為を認めていればそれだけで慰謝料を支払ってくれる場
合もあります。
ただし、自分で内容証明を書く場合は余計なことを書いてしまいかえって不利な
証拠を残すことにもなりかねませんから注意する必要があります。(たとえば相手
を侮辱したり強迫するような文章を書いた場合)
内容証明を送り、当事者同士の話し合いで慰謝料等の支払い条件が折り合えば、
必ず示談書を作成しておきましょう。
■調停について
しかし、内容証明を送ったものの、無視されたり、金額を値切られたり、理由を
付けて支払おうとしない場合も少なくありません。その場合は、家庭裁判所に調停
の申し立てを行います。
調停は争いのある当事者間に第三者機関である裁判所が中に入って双方の言い分
を聞いたうえで解決をめざす制度です。
具体的には、調停委員会(家事審判官1名と調停委員2名以上)と当事者の話し
合いによって、当事者の双方がお互いに納得するように助言や斡旋を行います。調
停は1回ではなく、納得がいくまで何回でも行われます。
その結果、当事者双方が一定の条件で合意した場合は調停調書が作成され調停は
終了します。
調停調書とは、確定判決と同じ効力がありますので同一の案件について再度裁判を
起こすことはできません。
また、慰謝料を支払うという条件で合意したにもかかわらず、相手が支払おうとし
ない場合は調停調書により強制執行をすることもできます。
家庭裁判所の調停が不調に終わった場合は訴訟を提起することになります。
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