主人は大学卒業後、大手商社の花形部門に就職をし、スーパーサラリーマンの一歩を踏み出していました。時はバブル期を迎え、接待費無制限!大きなプロジェクトは、さほど苦労しなくても次から次へと決まり、新規プロジェクト山。上司からの引き立ても有り、重要な契約や根回し、接待の場に同行し、いつも帰宅は深夜で、休日もたまに接待ゴルフに駆り出されていました。その代わり、お給料も高額でボーナスも凄い。その頃、私は子育てに忙しくしていたので、私専用の外車を買い与えられ、最新のプラダのバッグにオムツと哺乳瓶を入れ(笑)ベビーシッターが常在する中で暮らしていました。端目から見れば人も羨む生活ですよね。でも…慢性睡眠不足の主人の健康が心配であり、何より一緒に過ごす時間が少ない事を寂しく思っていました。バブルは呆気なく崩壊しましたが、会社は布石が有った為にさほど被害を被る事無く、私達の保障された生活は変わりませんでした。そんな折、主人の父(会社経営)が急逝し、代々続いた会社の存続をかけて主人は自分の人生の選択をしなくてはならなくなりました。歳の離れた妹はまだ幼く、高校生で大学受験を控えている最中の出来事です。会社状況の蓋を開けてみると、バブルの煽りを真っ向から受け、ビルや土地の売買に絡む負債額が数百億で倒産の危機にありました。本宅や経営していたマンションビル・アパートも担保に入り、母や妹達も行き場の無くなる寸前で、大学受験どころではありませんでした。勿論、長年お勤めをして下さった社員の方々やその家族も路頭に迷います。主人は商社を退職し父の会社を継ぎました。主人は「〇〇子(妹の名前)を大学に行かせてやりたい。」としか言いませんでしたが、色々な思いが有ったと思います。それからは、銀行との話し合いや返済計画・新規事業の開拓等など、大変な日々でしたが、それはお話するのは止めましょう。言うまでもなく、高級外車や当時持っていた宝飾貴金属、バッグ等は失いましたが、嘆いたり不幸だと感じた事は本当に一度もありません。義母も妹達も立派な本宅を引き払い、アパート暮らしから再出発でしたが、兄(主人)が傍らで先導する事が何より心強かったとの後日談でした。私も主人の指示で登記簿を取りに行ったり、書類を届けたり、私にもできる細々した事の作業に関わりながら、いつも主人の息吹を感じられる事や一体感がある事を励みにできました。会社を継いでから丸四年後の夏に、主人が「ドライブがてら墓参りに行こう。」と言いだし、慌ててお花とお線香とタオルやゴミ袋、お供え、お布施を用意して車に飛び乗りました。車で二時間弱…その道中で、いつもと変わらぬ他愛もない話をしながらドライブし、義父のお墓に着きました。Tシャツと短パンで首にタオルを巻き、雑草をむしり、墓石にお水を掛けタワシで洗いながら主人は墓石に向けて呟きました。「おい!親父!借金、全部返したからな。〇〇子も、ちゃんと大学に行かせたぞ!安心しろよ!」蝉時雨激しく、真夏のギラギラと照りつける日差しの中、お花を生けていた私が驚いて顔を上げると…主人の顔は汗とも涙とも見分けのつかない物でグチャグチャになっていました。お線香と供に、生前、義父が愛飲していたショートホープに火を付け、大好きなビールと日本酒を墓石の周りに撒き 、主人と二人で心から合掌しました。帰りに寄った郊外のレストランで頂いたお食事は、どんな一流シェフが供する物より私には思い出深く美味しかった。あの日から数年が経ち、妹は大学を卒業後就職をし、先頃結婚が決まりました。その妹が時々我が家の娘の家庭教師をしてくれています。実は、歳が離れて五歳の息子もおります。昨年の十一月に七五三の袴着の宴を催し、親戚一同が集まりました。五歳の息子は初めて紋付袴で一同につたない挨拶をし、一族の家紋を背負ったお披露目を致しました。主人もそうでしたが、一族の直系の長男です。この息子が果たして成人する頃にはどんな世の中になり、どんな経済状態かも分かりませが、こんな父の背中と母の胸で育てたいと存じます。それから、あの苦況を乗り越え、家族や親戚や社員の方々やその家族が…路頭に迷う事無く、日々を日常を普通に暮らし、笑顔で集って下さる事を有り難く、幸せに思います。それから、運もあり経営手腕も有ったのでしょうが、人一倍責任感強く家紋を背負った我夫を誇りに思います。私も幼少の頃から、ある意味同じような環境と教育で育ち、伝統的な婦女子教育の中で習い事三昧の毎日でしたが、人生に無駄は無いと言っていた明治生まれの厳格な祖母の言葉を今更のように実感致します。幼い頃には辛いお稽古事でしたが、私に教育と辛抱を与えてくれ、高校・大学時代には芸に身を助けられる事、多々でした。主人と寄り添ってからは、主人との二人三脚や子育ての基盤になっています。それこそ時代錯誤で古風かもしれませんが、主人と私の受けた教育が一家を守り一族を守り、それが自らの幸せと感じられる事を誇りに思います。追伸:主人との性生活は、身体だけではなく脳や心や気持ちが感じるので至福の陶酔です。 このように偶然迷い込んだサイトにて場違いではありましたが、皆様と本心本音でお話することができ、半生を振り返り、就寝中の夫の顔を舐めたくなりましたが、風邪を伝染すといけないので治ってからに致します。徒然なるままに、つたない長文にお付き合い下さいましたこと感謝致します。
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