この作品は1972年の初頭に東映動画の旗野義文(『サイボーグ009』のプロデ
ューサー)が考案した『ミュータントZ』が源流である。企画書では『仮面ラ
イダー』のヒットによって巻き起こっていた当時の変身ヒーローブームに対
抗するため、アニメーションならではの自由な発想による超能力者の活躍が
強調されていたが、アニメ化はされなかった。しかしこの企画書は当時の東
映プロデューサー平山亨の目に止まり、奇しくも実写ヒーロー番組として製
作されることになった。代理店として東映エージェンシーが参入し、NETでの
放映が決定。原作漫画とキャラクターデザインは石森章太郎が担当した(石
森は11話で脚本を書き、監督も行なっている)。
この番組が放映された当時は超能力やUFOなどのオカルトものが一大ブームを
起こしており、この作品も随所にそれらの要素を盛り込んでいる(主人公が
超能力者、主人公に協力する「少年同盟」も超能力を持つ少年少女によって
構成されている、など)。
主人公はサナギマンからイナズマンへの二段変身能力を持っているが、これ
は蛹から蝶への羽化からイメージされたものである(この要素は『仮面ライ
ダーカブト』にイメージソースとして受け継がれた)。イナズマンのデザイ
ンは蝶をモチーフとしているが、これは蝶と超能力者をかけた言葉遊びから
のアイデアである。
そのキャストであるが、『人造人間キカイダー』の主演だった伴大介が伴直
弥と改名して主役のイナズマンこと渡五郎役に抜擢され、宣弘社制作の野球
根性ドラマ『ガッツジュン』のマドンナ・村丘美代子役でデビューした桜井
マリが少年同盟のメンバーである超能力少女のヒロイン大木サトコ役で出
演、さらにサトコの弟である少年同盟メンバーの大木カツミ役に『仮面ライ
ダー』少年ライダー隊員・ミツル役として出演していた名子役の山田芳一が
起用されるなど、豪華な顔ぶれだった。
メインライターには『仮面ライダー』を担当した伊上勝が起用され、監督に
は『仮面ライダーV3』を撮影した田口勝彦らがスライド登板され、強力な布
陣が揃えられ、特撮も『仮面ライダー』以上に駆使されたが、ライダーと肩
を並べるほどの人気には至らなかった。『仮面ライダー』の少年ライダー隊
の成功を意識して作られた少年同盟の設定も中盤以降は消え去り、ドラマ性
の高いエピソードが作られるようになった。第3クールからはタイトルを『イ
ナズマンF』と改め、新展開を迎えることになる。
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