第一章
「これ。おめでとう」
博さんのおめでとうの意味はすぐにわかりました。でも、あえて気づかない振りをして答えました。
「何、何、突然、どうしたの」
「四十うん回めのハッピーバースデイ。」
「この年になるとめでたくないけど。うれしい、ありがとう」
言葉の通り、それは私の正直な気持ちで、花束を受け取りました。
それでも、自分の記念日を祝ってくれる人がいることを、素直にうれしいと思っている自分に、少し戸惑いといささかの驚きを覚えたのです。
私から近寄って、博さんの肩に手を回し唇を重ねました。
彼は自然に舌を絡めながら、両手を腰からヒップへ滑らせます。
スカートを捲り上げようとするのを右手で押さえつけ、唇を離し
「ご飯、食べましょ」
私の仕事が忙しかったこともあって、手料理をテーブルに並べたのは二週間ぶりでした。
「だめ、もう我慢できない」
彼は、さらに唇と舌を絡めると、強引にベッドに押し倒し、シャツのボタンをはずし始めました。私は抗うことができず、下から彼のズボンのベルトに手をかけました。
二人の激しい情事を物語るように乱れたシーツの上で、彼はタバコに火をつけました。
吐き出す煙の甘い香りが、室内を満たします。
「なぁ、雪江、俺とのセックス、満足してるか」
それは唐突すぎて、最初意味が理解できませんでした。
私が黙っていると、彼は続けて「スワッピングって知ってる?」
私は彼が何を言っているのか、わからず、灰皿に置いたままの彼の短くなったタバコに手を伸ばし、灰皿に押し付けました。
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