第六章 その弐
そこからは、一気に室内の温度が上がったように感じました。
部屋中に二人の女の喘ぎ声が絶えず響き続けます。それに混じって次第に荒くなっていく二人の男の息遣い。
視界が利かない分ほかの感覚が鋭敏になっているのか、耳、鼻、そして肌から感じる刺激が初めての快楽となって私を包んでいました。
「ああ、だめ、だめ、いく、いっちゃうよーーー」
一瞬、自分の声と勘違いしそうになるほどのタイミングで、隣の奥様が叫んでいるのが耳の奥に響きました。「ああ、なんて色っぽい声なんだろう」博さんに見せられたDVD以外で、他の女性のこれほど高ぶった声を聞くのははじめてのことでした。
想像以上の刺激に、これまで経験のないほどの絶頂に達しつつあった私も、彼女以上の声で叫ぼうと思った瞬間。
「ああーん、どうして、どうしてやめちゃうの?」
一転して、泣きそうな彼女の声。
予想外のことに躊躇いを感じましたが、高まりきった感覚は止まりません。
「私も、いく、いっちゃうのーーー」
発した後、自分でも驚くほど大きな声が部屋中に響きました。
ところが、そこで博さんも私の秘部をかき回していた指を突然抜いてしまったのです。
今度は私が涙声になる番でした。
「なんで?」
思わず、目元のアイマスクに手を掛けようとした私を制して、博さんが言いました。
「雪江、ここでパートナーを交換しよう」
「ここで?」
完全に予想外でした。博さんの事前の話では、お互いのパートナー同士で一通り最後までしたあとに、改めて次の段階に進むと聞いていたからです。
しかし、博さんからの返答はなく、彼が私たちのベッドから降りていくのがベッドの軋みでわかりました。
私は混乱しました。
ここで?ちょっと待って。ということは、お相手の男性の容姿を一目も見ないまま、セックスするってこと?
もちろん、今回のことが決まってから、覚悟はしてきたつもりでした。お相手のことは博さんから事前に聞いて、年齢や身長、体重といった程度のことしか知りませんでしたが、多少好みの容姿と違っていても受け入れる、そういう気持ちでいました。
しかし、こんな展開はあんまりです。
話が違う、そう言おうと思ってアイマスクを取ろうとした私の手は再び阻まれました。
しかし、その手は明らかに博さんの手ではありません。そのことに気づくと同時に何か違和感を抱きました。それが何か、考える間もないまま、お相手のご主人の唇が私の乳房にむしゃぶりついてきたのです。
同時にご主人の右手が、きつく閉じたはずの私の両腿の間に割って入ってきました。
「あっ」
博さんの愛撫で自分でもわかるほどに愛液をしたたらせている私の一番恥ずかしい部分に、ご主人は躊躇うことなく二本の指を滑り込ませたのです。
ご主人が少し指を前後させただけで、私の陰部がグチュグチュと淫らな音をたてるのがわかりました。
それは隣のベッドに移動したであろう博さんやお相手の奥様はもちろん、部屋中に聞こえるのではないかというほどでした。私は恥ずかしさのあまり、意味のないこととは知りながら、アイマスクの上から自分の両手で顔を覆ってしまいました。同時に足も閉じようとしたのですが、両手でそれを阻まれると、私は無意識のうちに股間がご主人の前に露になるように、はしたないほど両足を広げてしまっていました。
ご主人は無言のまま指の抽送を続けます。
陰部が立てる音は尚も激しくなるばかりで、もはや部屋の外まで聞こえるのではないかと私が心配するほどでした。
私の右手はいつの間にかご主人の肉棒を握り締めていました。それは熱い鉄のように硬く、脈打つのが感じ取れるほどの欲望を携えているようでした。
次の瞬間、自分でも、思いもしなかった言葉を口にしていました。
「ああ、ください、早く」
口にした自分が驚く間もなく、その言葉を待っていたとばかりにご主人は私の両膝を抱え上げると、正常位で猛り狂った肉棒を私の膣に突き立てました。
驚くほどスムーズに、一気にそれは私の身体の奥まで侵入してきました。
「ああー、いいっ、いいっ。もっと、もっとください」
自分で自分が信じられませんでした。
今日、初めて会った男性に、そのご婦人と、自分のパートナーの目の前で、貫かれるなり絶叫して、自分から相手の首に抱きつき、足を絡め、腰を打ちつけているのです。
ご主人は、激しく私の股間を打ちつけながら唇を重ね、舌を滑り込ませてきました。躊躇うことなく舌を絡める私。
「むー、むー」
絶叫しているのですが、それをご主人の唇でふさがれてしまった形です。いや、自分で塞いでいたのかもしれません。
初めてのスワッピング。もっと、戸惑いや、羞恥心が先立ってしまうのかもと想像していました。
しかし、私が自分でも知らないほどに生来の淫乱だったのか、お相手のご主人との相性がよほど良かったのか、あるいはその両方なのか。
初めての快楽に頭が真っ白になり、両手両足の先までしびれるほどの快感に貫かれ、獣のように乱れ狂っている私。
ご主人が、一旦間をおくように肉棒を引き抜きました。
「ああっ、止めないで」
自ら口にした言葉の淫らさに、私自身が興奮を覚え軽いめまいを感じました。
「あん、あん、あん」
飛びかけていた意識が戻りかけるのと同時に、隣のベッドからの嬌声が耳に届きました。
奥様のエロチックな叫びにパンパンパンとリズミカルに肌を打ち付けあう音が響きます。
「あん、あん、すごい、奥まできてるの。気持ちよすぎるーー」
「ああ、俺も、俺もいいよ。」
「もっと、もっと欲しいの、もっとちょうだい」
「こうか、こうか、ほらほらほら」
「あふっ、あん、あん、あん、だめ、もういっちゃうよーーー」
「俺も、いきそうだ、ああ、ああああっ」
博さんと奥様が同時に叫ぶのを耳の奥で聞きながら、私は体を裏返すと、枕を抱えたまま膝立ちになり、お尻を高くご主人のほうへ突き出しました。
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