「あ、あの」
私がしどろもどろになってると、母が振り向きました。
「うまくいったようで。良かった良かった」
なんでわかるのかを聞きました。
「あんなぴったりくっついて歩いてくれば、うまくいきませんでしたではないよ。うまくいかなかったら、気まずさから、あんなぴったりくっついては歩かないよ」
ふふっと笑いました。
私は背筋を伸ばして言いました。
「俺は男に、晶子は女になりました」
母はうんと頷きました。
晶子も私に続きました。
「これからまだまだご迷惑おかけすると思いますが、何かとよろしくお願いします」
はいよ、と笑ってました。
そうこうしてるうちに、晶子のお母さんも帰宅、父も帰宅、改めて報告しました。
「お前はまだ社会人じゃない。これからなんだ。わかってるだろ」
厳しい言葉をいくつか投げかけられました。
その日から、晶子は父が直して住まいにしてた部屋から、私の部屋に寝るようになりました。
その夜、私はある不安を抱きました。
今日のことで、もし晶子に子が出来たら、でした。
私はまだ高校卒業までもう少しある、もちろんお金もない、育てられない不安でした。
晶子が服直し店で働いてるとはいえ、まだまだ見習いの身、お小遣いに毛が生えた程度の収入です。
避妊具、当時は高価で、私の小遣いや晶子の収入ではなかなか手が出ません。
両親に助けを求めるのも格好悪い。
枕を並べて晶子と話し合いました。
出た結論は、とりあえず今回妊娠してないことを祈る、それまでは性交渉は無し、そして私がきちんと仕事開始するまでは控える、でした。
翌月、晶子から言われました。
「来ました。無事来ましたから安心して下さい」
生理がきてほっとしました。
卒業式も無事終わりました。
「守男さん、これ使って下さい」
晶子は小さな箱を差し出しました。
避妊具でした。
「これ、どうした」
晶子は服直し店で、一つの仕事一人でやりとげれるようになったと、少し収入上げてもらえることに、それで奮発して買ったとのことでした。
成田旅館以降、私の処理は、晶子の手、のみでした。
「女将さんの教えも忘れないうちに、試したいです」
恥ずかしそうなに晶子は言いました。
その日、旅館以来の性交渉を、晶子が用意した避妊具を使用して行いました。
そして私は社会人になりました。
晶子は服直し店でコツコツ、私は会社でコツコツ、お金を貯めました。
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