昨年一月、元ママさん(妻は師匠、または先生と呼ぶ)に会って話しをしたときのこと。
「アナタが店閉めたいを聞いたのはいつ?」
「六月半ばくらいでしたか」
「師匠である私にその話しが来たの、七月半ばくらいよ?師匠よりアナタに先に言ったのね」
妻は恐縮していた。
「そのくらいアナタを信頼していたのね?もうそうなるとアナタをお客として見れないでしょうね」
俺は意味がよく理解出来ないでいた。
「飲み屋のママが客と寝た、それが広まったら?この子がアナタではない、別の客と寝たの知ったら、店にいく?」
「わかりません」
「仮にアナタに下心がないなら、くるかもね?でもほとんどの客は離れるわ。それにね、体使って客引きしたなんて広まったら、風営法に引っかかるの。だからそうなったら店は終わるのよ」
はぁと聞いていた。
「もらってって言われたんでしょ?この子に」
「はい」
「店辞める覚悟だったのよ、最初から」
そんな話しをされた。
でも妻はまだそのとき、通い婚、しかも二日ほどいたら、二日ほど戻るを繰り返していた。
前書いた通り、俺にもっと若い女性が見つかったら、身を引くつもりが妻にあったからだ。
もらってと言いながら、店をたたんでも、妻は俺に気遣い、一歩引いた感じでいるのだとわかる。
だから余計きちんとしよう、そう俺は決断した。
元ママさん、師匠の後押しも。
「せっかく苦労して持った店、自分の宝物を捨ててまで、男にもらってと言う水商売の女はいないわよ」
「客入り悪くて苦しくても、なんとかしようと私なら思ったでしょう。実際この子も、そんな山や谷を何度も超えてきたはず。それを手放す、そんな簡単じゃないのよ」
師匠の言葉には重さがあった。
「師匠はなぜ引退を?」
俺が聞いた。
「金出来た。年金も。店売ってさらに。生活にはもう困らない。なら自由になりたい。それだけ」
「彼氏とは結婚は?」
「ぷっ!あはははは!しないわよ~!財産持ってかれるじゃない?でも一応内縁になるから、多少は残すけどね?私の弟や妹に残すつもり」
そう言った。
師匠はずっと独身を貫いてきた人だ。
強いな、妻も強いと思ったが、師匠はそれ以上だった。
「彼氏と言うよりセフレ?だよね?私のセフレ」
そう言って笑ったのが印象的だった。
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