そして同じ部屋に布団を並べて寝る。
店の片付けから引き渡し、さらに俺の家の片付けから家に着替えと取りにいき、夕食の支度まで。
疲れたのだろう、横になるとすぐ寝息を立てていた。
俺はその寝顔を覗いていた。
そのときもう55才の女が、安心しきった少女のように見えた。
ほっぺたをツンツン。
反応はない。
布団に手を忍ばせ、乳を触る。
反応はない。
よほどお疲れのよう。
俺も寝た。
ガタガタッ。
何か物音で目が覚めた。
時計見たらまだ五時半。
横を見たら布団は綺麗にたたまれていた。
玄関と玄関先を掃除していた。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
箒ちりとりを手にこっちを見た。
「早いね」
「年寄りは朝早いんだよね」
そう言って笑った。
「ご飯作るね」
その作っている後ろ姿、なんかいい。
一緒にまともな朝食を食べる。
「今日はどうする?俺は仕事だけど」
「悪いけど仕事行く前に、私送ってくれる?帰って職安とかいってみるから」
「わかった」
朝食を済ませ、送った。
仕事から帰ってきた。
当然誰もいない。
たった一晩いただけなのに。
無性に寂しいと思った。
買ってきたほか弁、まずい。
ビール、苦い。
知らず知らずのうちに、携帯を手にしていた。
そして電話していた。
「来ないか?」
「今から?もう遅いよ」
「そっちいっていいか?ならば」
「え?そりゃ構わないけど、車止めるとこないよ」
「コインパーキングあるよな」
「あるよ」
「そこ止める」
「待って?どうしたの?」
「なんかね…」
俺は今感じてる気持ちを話した。
「そう…じゃあね、明日行くから、今晩は我慢して?きちんと準備して行くから」
「合い鍵、郵便受に入れとくから」
「わかった」
翌日、仕事を終えて帰宅すると、もう夕食の支度を終えていた。
風呂場には俺が使うシャンプーとは別に、持ち込まれたシャンプーとリンスが並べて置かれていた。
洗面所には歯ブラシが一本増えていた。
寝室にはプラスチックのボックスが三段重ねで置かれていた。
夕食を取りながら話した。
「一緒に暮らしてみないか」
「ずいぶん急ね?すぐこっちに引っ越すのはちょっと」
理由を聞いた。
今年度一杯、賃貸契約してるからだと言う。
店と同じ不動産屋で、セットで借りた感じになってるから、すぐ出ると損になるとのことだった。
マンションも借りるってことで、店の家賃を割り引いてもらっていたらしい。
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