裕美子からの身を焼かれるようなメールを着信したあと自分で何をしているのかもわからないほどで気が付くと裕美子が寝ている寝室へと来ていました
そこには妻裕美子の香りがほのかに残っていました
何故かその微かに残る裕美子の香りが私を落ち着かせとても懐かしく感じさせました
ごろっとベットに寝転び天井を見上げると今までの裕美子との思い出が私の頭の中で駆け巡りました
ベットに寝転ぶと裕美子の香りが尚更増すように感じられ今までならこんな裕美子の香りさへも感じることなどありませんでした
初めて裕美子と出会ってデートしたときには裕美子の香りを感じたように思えます
結婚して一緒に生活してきてこんなに裕美子の香りを感じなかった自分を情けなく思いました
クローゼットにある裕美子の衣類やドレッサーに置かれた裕美子の化粧品は裕美子のすべてを感じさせてくれるものでした
裕美子を感じれば感じるほど裕美子の大きさを感じる私でした
ドレッサーの前に座りその上にある化粧品をボ~ッと見ていると横に置かれたゴミ箱の中にクチャクチャに丸められて捨てられている便箋を見つけました
何だろうと思い手に取りクチャクチャになったモノを戻していくと便箋の表にパパへと裕美子の筆跡で書かれていました
私は慌ててその便箋をあけました
パパへ
パパはこの手紙をいつ見つけるのかな?私がこの家から居なくなってからかな
どっちにしろパパがこの手紙を見つけてくれて読んでくれているってことは私が留守にしているか家を出て行った後でしょうね
パパ?今まで普通に何事も無く生活してきてお互いにうまくいかなくなるとこんなに一緒に生活する事がしんどいモノなんて思わなかったね
パパも同じだと思うんだけど私はパパと前の生活に戻りたいよ
もしこれをパパが読んでいてくれている時に私達がすでに離婚していたら悲しいけど
もし離婚してなくてパパが私の犯した行為に憎しみや怒りがあってもどこかに私への愛情が少しでも残っていれば元に戻れるように努力してみてください
女の不貞と男のそれとは問題の大きさが違うことも重々承知しています
パパと離れたくない
裕美子は私に助けを求めていたのです
いつこの手紙を書いたのかわかりませんが裕美子自身も最悪の離婚を考えて書いた手紙だったのかもしれません
今日出かける前かそれとも少し前かはわかりませんが裕美子がこの手紙を自分で捨てたのは間違いありません
裕美子はこの内容をも諦めてきっと手紙を捨てたのでしょう
私は自分の愚かさを今更ながら悔やみました
私は直ぐに電話をかけましたが繋がりませんでした
私は居ても立っても居られず自分を強く攻めながら家を出て近くの駅や近くの繁華街で裕美子の姿を探しましたが見つける事はできませんでした
私は絶望感を抱きながら家に戻りました。
もし裕美子と話せれば「すべてを許すから泊まらずに帰ってきて欲しい」と土下座する気持ちでいました
時間が経つにつれ裕美子と彼の情事を妄想しだし許す気持ちから怒りへ傾いていく自分がいました
今ごろあの男と・・・俺を見捨てて自分だけが・・・
怒りで身体が震える程でした。
けれどしばらくすると悲しみが私を襲ってきました
自業自得だとはわかっていてもやりきれない寂しさと悲しさがこみ上げどうすることも出来ません
頭に浮かぶのは楽しそうに男と戯れる裕美子の姿でした
私より彼を選んだのも帰らないと言ったのも裕美子自身です
手紙を読むと反省し許さなければと思い裕美子と彼のことを考えると怒りがこみ上げてくる同道巡りを何度も繰り返していました
私は焼酎をコップに入れて何杯も一気に呑みました
いつもならしばらくして酔いが回ってくるのですがどれだけ呑んでも今の自分の気持ちを忘れさせてくれることはありませんでした
私は泣きに泣きました。まるで子供の頃のように
気が付くと辺りがボーッと明るくなり始めていました
心のどこかで何もなく帰ってくると期待していましたがあの男と一夜を過ごした裕美子の2度目の朝帰りです
朝の8時を過ぎた頃だったと思いますが裕美子から(今から家に帰ります)と絵文字もない愛が感じられない短いメールが届きました
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