廃虚を寂しそうに眺めていた理由を聞かれ、恥ずかしながら理由を答えました。
するとおばあちゃんは言いました。
旅館とは名ばかりで、いかがわしいことさせてると地域住民からの反発を食らい、出て行ったとのことでした。
おばあちゃんも反発に賛成していたそうで、私達のように、思い出の場所を失わせたことは悪いことをしたと謝られました。
そしてこうおばあちゃんは言いました。
あんた達は、私から見ればまだまだ鼻たれ小僧だ、思い出の場所なんかに浸ってないで、綺麗なとこで頑張ってやりなさいよ、と。
ご丁寧にもうちょっと市内に行ったとこに、立派なとこがあると教えてくれました。
いやいやと思いながら、おばあちゃんに言いました。
そこ、行ったことあるんですか?と。
するとこう答えました。
行きたくても連れ合いが雲の上だからね、笑ってました。
でもなんかおばあちゃんから勇気と元気をもらった気がしました。
車を走らせて、私は思いました。
そして妻に、さっきおばあちゃんが言ってたとこ、言ってみないか?言いました。
妻は、おばあちゃんは行きたくても行けない、私達は行けること感謝しなきゃねと承諾してくれました。
ただ私自身、出来るかの自信はまだなかったんです。
あ、あれか。
見えてきたのは西洋のお城みたいな建物で、暗くなり始めた周囲に浮かぶようにライトアップされてました。
駐車場に車を停めると矢印通りに歩く、自販機みたいな機械があるも、要領がわからない私達。
横に電話があり、話しをすると、泊まりは10時からしか入れないから、今からは休憩しか出来ないと言われました。
休憩終了時間まで三時間、ゆっくり出来ないなと諦めようとしたら、妻が受話器を取り、年齢的にゆっくりしたいので、休憩+泊まり料金払うから泊まりでお願いしたいと交渉してました。
するとどこからか初老の紳士が出てきて、私達が夫婦、しかも年も似たり寄ったりと見えたんでしょう、泊まり時間には早いが、特別に今から泊まりでどうぞと言ってくれて、機械を操作、料金を払い、部屋の鍵を受け取りました。
部屋に入ると圧倒されました。
お姫様ベッドみたいなのに、きらびやか装飾、ふかふかの絨毯を靴で踏むのがもったいない。
50代半ば過ぎがくるとこじゃないな、が感想でした。
部屋は出てきた紳士が適当に選んだ部屋です。
続きます。
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