翌朝、目覚めると隣には既に妻の姿は無かった。
休日の朝は私が起きるまでに洗濯を済ませるのが普通に成っていて、私がリビングに向かうと、それに気付いた妻は、これも当たり前の様に、パンと牛乳を準備し始める。
二人でテーブルを挟み、パンを食べ始めながら私は何か話さないと‥と思うが適当な話が見つからず、つい無口に成ってしまう。
妻も同様で、昨夜の事が引っ掛かるのか何も言葉を発しない。
ゆっくりと温めた牛乳を口元に運びながら、私が声を掛けようとした時に、
「昨夜の事を怒ってるの?」
妻が小さく呟くように言う。
「いや、怒ってなんか居ないよ、昨夜の事は私も望んだ事だし‥」
そこから、ポツポツと話が始まり妻は躊躇いながらも、言葉を選ぶように話始めた。
「あんな経験は俺には初めての事だったし、お前達の様子を見たり聴いたりして恥ずかしい話、正直とても興奮してしまった」
私の言葉に妻は下を向き
「アナタに聴かれてると思うと‥私も、とても恥ずかしくて今すぐにでも止めたいと思いながらも、でも‥」
「彼は全てに優しかったのかな?」
妻は黙って頷く。
「彼から、そこに行こうと言われ時には、どう思ったかな」
「言われた瞬間は頭が真っ白になり、何と応えたのか思い出せない」
彼と並んで街中を歩き、彼に誘導される様に大通りから外れると飲み屋街に入り、暫く歩くとホテルが現れ彼が耳元で、
「あそこにしましょうか?」
と囁いて来た。
妻が黙ったままで居ると彼はホテルの入り口の前で、妻の肩を軽く押すようにして入り口をくぐったとの事。
その瞬間は、アッと言う間で、周りの人の気配を気にする余裕も無く彼に押されるように入ってしまったとの事。
彼は入り口の広くないフロアーで部屋を選び、妻に手を添えエレベーターで部屋に向かった。
狭い廊下を歩く時に妻は、他の客と会うんじゃ無いかと怯えながら彼の後ろに隠れるように歩いたらしい、部屋のドアを開けると、妻は他の客に見つかる前にと思い先に入ったとの事。
密室になり妻は人の目から逃れた事に安堵しながら、何人寝れるのだろう!と思う程のベッドを見て、この後を想像したら、また急に別の緊張が湧いて来てしまった。
バックを手にしたまま、その場に立ち尽くす妻の手から静かにバックを取り側のテーブルに置くと
「必ず約束通りに、お帰ししますから」
肩に手を置き彼が言う。
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