いい忘れてましたが、挑発ポーズの研究にセリフの練習ともども続けてたん
ですねえ、感心しました。ますます気に入っちゃったよ、困っちゃうナ。
五感のうち、相手から距離があっても知覚できるのは嗅覚、聴覚、視覚の
三つですが、このうちでもっとも歴史が古いのが「匂い」つまり嗅覚です。
そして、この嗅覚が大脳の発達とも深い関係があるんです。大脳がどんどん
整備されてくるのは、哺乳類になり、発展をとげる過程とほぼ並行している
ようです。爬虫類では、まだこの『嗅覚を中心とする大脳の整備』の過程が
とても原初的にしかできなかったんです。でも恐竜と共存して大型肉食類の
目を逃れてやっと命脈を保っていた原始哺乳類はどうも嗅覚中枢を軸とする
『大脳辺縁系』なるシステムと口髭に対応して分布する大脳皮質の構造とを
持っていたらしいんです。むずい話になったね。色の道というのはホントの
ところ、かくも艱難辛苦をともにせねば深めていけないのかなあ:
「おーい聞こえてるぞ。そんな上で君ら、勝手な悪口を言いたい放題!」
トムがくすくす笑いながら言った。
「彼のは当ってると思う?か、何かあるかしら?」ジェインが訊ねた。
「ええ、多分その通りよ。別の人との議論は楽しいわ。でもね、来る日も
来る日も、だとちょっと疲れちゃうかもよ。こうして遊んでても家に帰る時
には、ダーリン、私はあなたと一緒に、となりそう」ジルは幾分なりとも、
つばを飛ばすほどの勢いで喋った。
「あなたは素敵ないい奴よ、トム。でも何もかも一緒にやってくには骨が
折れそうね。毎日一緒にいるジェインに、私は同情しちゃうわ。」
「君は一体どっちに味方するの?」トムはジルの本心を知りたくなった。
この魅力ある男と裸で立っていて、そしてこんな風に話していてジルは、
不意に性的とも言える親密さを覚えた。親密と言っても、二人の間にどんな
性的関係もない訳だが、暗闇のプールで裸という半端な状態が、二人の心を
ぐんぐん近づけていった。あたかも目には見えないが、明らかに何かの力が
働き、二人をくっ付けにかかっているかのようだった。実際に彼らの身体は
触れなかったが、つまりこれはトムの方が触れていこうとしなかった訳で、
ジルにとってはこれが意外だったし、多少の不満も感じた。とはいえ、身体
には触れなくとも、心での固い結びつきがそこにはあった。
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