昨夜の興奮が冷めやらないままスイミングスクールの水曜日を迎えた。
「おはよう。今日は水泳だよな」
「ええ、そうね」
「コーチに待ち伏せされるんじゃないか?」
「コーチたちは夜までカリキュラムがあるからそんな急展開はないわ…」
妻はなにか隠している。僕に嘘をついてる。
もしかしたら水泳のコーチともう既に約束をしているのかもしれない。もしくは、同じスクールの男性か…。
でも、後できっと打ち明けてくれる。今日もスイミングスクールに見学に行こう…。
先週より少し遅く二階席に上がった。妻のスクールの一団は既にプールに入っている。
だけど…妻の姿が無い。ヒーリングの時間になっても妻の姿は見つからなかった。
え?妻は何をしているのだろうか?体調を悪くして休んだのだろうか‥‥。
会社に向かう前に家に一度帰ってみた。妻の車が無かった。どこかへ出かけている。
ハッとして、昨日の助教授の大学へ行って見た。それの学部は本校と少し離れていて独立しているから、もしかしたら見つかるかもしれない。
会っているとすれば妻の車がきっと駐車場にある筈だ。
予想通り、駐車場に妻の赤い車が止まっていた。ナンバーも妻のものだ。
だけど車内に人影は無い。何処か校内にいるのだろうか?
少し探すと妻と助教授の姿があった。公園のような場所で、ベンチに腰掛けて仲良くお弁当を食べている。きっと今朝私にも渡された、妻の手作りのお弁当だろう。
恋人同士の様に、妻が食べさせてあげている。
妻はロングスカートにサマーセーターを着ていた。何処にもいる普通の主婦だ。
二人で何か話している。妻の笑顔がいじらしく見える。
すると二人は立ち上がって駐車場の方へ歩いてくる。夫婦の様に手を繋いでいる。
私は慌てて物陰に隠れた。
二人は妻の車に乗って、何か話をしている。と、おもむろに二人の頭が重なる。キスをしている。
頭の位置を何度も変えながら長いキスをしていた。
たぶん胸も揉まれている。股間も触られている。
でも二人はそれ以上進まず、助教授は車を降りて、校舎に向かって小走りに駆けていった。
妻は彼の姿が見えなくなるまで見送って、やがて車を出した。
少し間を開けて、尾行してみた。一度スーパーによって、そのまま家に戻るようだった。
私は会社に戻って、定時に帰宅した。
「おかえりなさい」妻が寝室から出て来た。
「どうした寝ていたのか?」
「すこし気分が悪くて…。スイミング休んじゃった」
「そうか、残念だな」妻は大学に行ったことを話さないつもりなのか?
「夕飯はお惣菜で良いかしら?冷蔵庫に入っているの。温めて食べてね。ちょっと具合が悪いから寝ているね。何かあったから声かけてね」
「解った。ゆっくり休んで‥」
昨夜は二日続けて会うなんて言っていなかった。でも、今朝は明らかにキョドっていた。
昨夜、寝室に戻った後で、連絡を交わしたんだろう。
でも、妻に話をしてみよう。
「ちょっといいか?」
「あ、あなた、何?」
「お前今日、何処にもいかなかったの?」
「スーパーに買い物に行ったわ…なんで?」
「いや、もしかしたら先生に会いに行ってたとか…」
「知ってたの?」
「ごめん。見てた。お弁当食べているところ」
「車の中でのことも見たのね…。あまり見せたくなかったんだけど…」
「凄いキスしていたな…体も触られていたみたいだし・・・」
「あたし今日から生理日なの。一昨日からピルの空を飲んで、今朝から生理が来てるの。5日は生理が続くのよ」
「そうだったのか、じゃ、水泳も難しいな…」
「ま、月経カップをつかえば平気だけどね…。だけど、昨日の今日で、彼に会いたかったの‥‥。あなたと同じお弁当を作ってあげたの…」
「俺だけじゃないのね…」
「ごめんね。麻疹(はしか)のようなものなのよきっと…」
「まぁ、醒めるまでは楽しんでいいよ。ちゃんと報告してくれれば」
「ごめんなさい。セックスしたわけじゃないから、報告しなかったけど、こういうのも報告した方かいいの?」
「そうだな」
「だって、自分の妻が他人を好きになっているんだよ。あなた妬かないの?」
「妬けるよ。それも興奮するんだよ」
「ちゃんと話してくれてありがとう。私、あなたをもっと喜ばせたいし、私も楽しみたい‥‥」
妻に軽くキスをしてベッドに戻した。少しだけ血の味がした。
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