夜中にトイレに起きた私は、キッチンの妻のバッグを開けて、先週仕掛けたボイスレコーダーを取り出して部屋に戻った。マイクロSDカードを交換して、朝まで充電した。
翌朝は妻のバッグにボイスレコーダーを再度忍ばせるスキがなった。
出社して、会社のPCで昨夜取り出したSDカードをチェックした。数日間の間に全体で30時間近く録音されている。
『すぐには聞き切れないな…』
ちょっと辟易とした。
ヘッドホンで聞きながら仕事をした。気になる箇所だと仕事の手が止まってしまう。
ボスレコーダーには基本的に我が家のリビング。つまり朝と夜の夫婦の会話。そして、妻が移動する時の音。そして、彼と会っている時の音が録音されている。
その間、無音が入って一度動作が切れるので、セクションごとになっている。
先ず、家の中での夫婦の声やテレビの雑音を消した。多分、リビングで彼と電話する事もあるだろうけど、それはたいして興味が無いから消す。
次に、外出する音を辿る。
玄関先でゴソゴソして、ドアを閉めて、車に乗って、エンジンをかける。しばらくして録音が切れる。この移動中の音をすべて削除した。
その次のファイルはドキドキした。
車のドア閉める音、車のカギを掛ける音、妻のヒールの音、駅のホームのような雑踏の音、自動改札を通る音、大勢の人々の雑音、ホームに上がる階段の音、ホームのアナウンス、電車が来る音。
データの日付時間を見ると、妻が東京に出張した彼に会いに行った日、午前8時過ぎだった。多分私が出社したすぐ後だろう。
電車が東京駅に着く。ホームのアナウンス。丸の内側の改札を出る音。タクシーに乗る音。妻は彼の泊まるホテルの名を告げる。支払いをして、ホテルの玄関を通る音、いくつもあるエレベーターホールの音。
「あ、7階です」
誰かに降りる階を聞かれたのだろう。彼の宿泊する階を告げる妻の声。
エレベーターの扉が閉まる音、和らな絨毯の上を歩く小さな音、少しの静寂、部屋のベルを鳴らす音、ドアが開いて、二人の会話。
「待った?」という妻の声。「待ちきれなかった」という先生の声。激しく抱き合う時の衣擦れの音。「ああ…」妻の吐息。激しいキスの音。服を脱がす時の衣擦れの音。バッグが何処かに置かれた音。そして遠ざかる二人の声。ベッドが軋む音。二人がどれだけ愛し合ってるかを確かめ合う言葉の応酬。
高ぶって来たのか、ベッドの軋みが一層大きな音になる。
「ああ、ああ、」妻の声がその軋みにかき消される様に響く。
音だけでこんなに興奮する何て思わなかった。ボイスレコーダーを仕込んで良かったと思った。
「シャワー借りるね」「僕も一緒に入るよ」衣擦れの音、風呂場の扉が開いて二人がじゃれる声、扉が閉まる。シャワー出す音が強くて、二人の話は良く聞こえない。そのうち妻の喘ぎ声が大きく入って来る。「あん、あん、あん」「ゆかりさん、ゆかりさん」「もっと、先生、もっと、あん、あん」
きっとバスルームとバッグを置いた場所が近くて、間のドアが開けっ放しなんだろう…。ベッドでの声よりこちらの方が鮮明に聞こえる。
「ほらよく洗って」「もう、溢れている…先生のがいっぱい入っている」「出てるとこ見せて」「スケベ…ね」「凄い、ゆかりさん。すごい厭らしい…」これで2回出した。
社長室のドアがノックされて女子スタッフが入って来る。デザインの確認をしたいらしい。
何時もは何の魅力も無い女性も、こんな音を聞いた直後だと少し魅力的に見えてしまう。
「何の曲を聞いていたんですか?」
「ああ、ビートルズ…」とっさに嘘を答えた。本当は、君も知っている私の妻が、東京へ出張した浮気相手の宿泊するホテルでエッチをする盗聴録音なのだけど…。
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