~続き~
部屋に戻ってきた嫁はマッサージのおじさんを見て人見知りが発動し、黙って立ち尽くしていた。
そうだよな。うちの嫁ならそうなるよな。
だがこのまま放置しておくと人見知りが薄れていき、やがてはおじさんに「私は結構です」くらいの事は言えるようになる。
なので、ここからが1番の勝負どころなのであった。
「お帰りなさい奥様。勝手にお邪魔して失礼しております。専属マッサージの○○と申します。」と、おじさん。
「お帰りー。お風呂どうだった?たまには大浴場もいいでしょ?あー、ごめんごめん、なんか急に女性の方が来れなくなったらしくて代わりに来てもらったんだって。」
「ちょうど俺のマッサージ終わったんだけど、この人めちゃめちゃマッサージ上手いから逆に良かったわ。」
そして俺はおじさんに目配せをした。
「奥様申し訳ございません。もしわたくしではお気に召さないようでしたら、お止めになってもらっても結構でございます。」と、おじさん。俺は間髪入れず、
「いやいや、それは申し訳ないですよ!元々今日は休日だったから1人分だったら断るところを2人分ならって事でわざわざ来てくれたって言ってたじゃないですか。」
「それはそのとおりでございますが、奥様に嫌がられては仕方ありません。まぁこんなおじいさんに触られたくないと奥様が思うお気持ちもわかりますので。」と、おじさん。
薄々感じていたが、このおじさんは相当に頭の回転が良い。打ち合わせ無しでここまで話を合わせて、しかもうちの嫁のツボを押さえている。完璧だった。
「そんな事ないですよ!ねぇ、そんな事ないよね?せっかく来てもらったんだからやってもらいなよ。」
この流れならお人好しの嫁は断れないはず。もうひと押し。
「お前が、このおじさんにはマッサージされたくないってハッキリ言うならもう帰ってもらうしかないけど、どうする?」
人見知りの嫁が絶対に言えない事はわかっている。
「・・・別にそんなことないけど。」
他人に触られる事を嫌がる嫁が、おじさんからのマッサージを受ける事になった。
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