続きです。
一方的な言い訳を並べる夫に、「ヒロ君は、自分さえ良ければそれでいいの?変わったね、ヒロ君」私は少し蔑んだ様に言いました。
「ユキ、お前だけには分かって欲しいんだよ。これはユキだからなんだよ。他の女じゃダメなんだ」
夫が伝えたい事は、何となく分かるのですが、「ヒロ君、それでも限度って有るんじゃない?それにコソコソして、
いつからそんな姑息な性格になったの?」私は今日は妥協しないで、納得のいくまでは無し合いたいと思いました。
「だから話したじゃないか。AV女優とユキを重ねて妄想してたらエスカレートしたって」夫は自分が正論を言っている
のだと、勘違いしていました。「一つ聞かせて。正直に答えてね。」「何だよ、何でも言うよ」「あなたは、カトウさんとグルなの?」
私はドキドキしながら返事を待ちました。「そりゃあ、そう思うよな。ユキが疑うのは当然だよな」(えっ、違うの)私は意外な言い回しに
驚きました。「ユキ、俺も正直に言うよ。工場長とは、グルじゃ無い。信じてくれ。あの人は本当に普段と、酒乱の時とは別人格なんだよ。
だから会社では、全く女の話もしないし、この家で飲んで途中で帰った事も一切自分から話さないし、仕事の事しか言わない。
だから酒乱になった工場長と話していると、全然知らない人と話している錯覚さえ覚えてしまうくらいなんだ。だから俺が、あの人をけしかけたり
グルになって作戦を練ったりなんてしていないんだ。ただ俺は、あの人を利用したんだよ。女癖の悪いところを。俺は間違っていると思う。
ユキが他の男に抱かれる場面を見たいのは本当なんだ。一度見た時、これで十分と思っていたけど、工場長から電話があった時、また見たい
ユキの乱れる姿をって考えたら、もうそれしか考えられなくて強行を選んだ。だって、ユキは俺が頼んだって他の男を相手にしないだろ?俺はまだ
若いつもりでいる。この先50年以上生きるかも知れない。だけど俺が愛する女はユキだけなんだよ。一生涯。断言できるよ。」せきを切った様に
自分の気持ちを言いました。「ヒロ君の言い分を聞くと、一度で良かったけど、二度目も有ると思うと考えが止まらないのよね。それって
三度目も、四度目も、同じ事が起こりそうだったら抑えられないって事だよね。」「いや、それは、その時にならないと、絶対とは言えないかも」
「それがヒロ君の異常性なんだよ。あなたにとって私は性欲の捌け口なんだね。だったら私は夫婦で居たくない。私はあなたが好きだからあなたが
喜ぶ顔が見たいから私なりに頑張って来たつもりだけど、ヒロ君には伝わっていなかったんだ。もういいよ。私は恨まないよ。あなたには感謝する事
いっぱい有ったし、このまま暮らして憎しみが湧くより、今だったらまだ感謝の気持ちで別れられるから、お義父さんに言うって言ったけど、
違う理由で説明するから安心して。私が居なくなればヒロ君の変な癖も治るかも知れないよ。」この時私は別れを決心していました。泣くのも堪えて。
「ユキ、お願いだよ、もう一度だけ俺にチャンスをくれよ。今日までの事、心から謝るから。」夫は土下座して、嗚咽を抑えられない程に泣き出しました。
(ああ、どうしよう、そんな事しないで、そんな姿見たくない)床に頭をこすり付けて泣く夫を見ると、私は涙が込み上げて(やっぱり、見捨てられない
もう泣かないで・・・)そんな気持ちになり、「ヒロ君、今度こそ信じていいの?嘘じゃない?」私も泣きながら聞いていました。夫は言葉にならない程に
ただ泣いていました。(もう一度、これが最後)私は私自身の口実とも取れる言葉で自分に言い聞かせて夫を信じる事にしました。今度こそはと。
お昼前に義父から電話が有り、私は義父を迎えに行きました。家に帰る途中に、私は義父に尋ねてみました。「お義父さん、もしも私が何かの理由で家を
出てしまう事になったらどうする?どんな気持ち?」少し間を置いて、「何だ?どうした?出たいのかい?」「ううん、例え話よ」「そうか。そうなったら
そりゃあ、寂しいなぁ。ワシの寿命も縮むだろうなぁ。」「どうして?お義父さん、寿命って、まだ55歳でしょ。おかしいわね」「いや、真面目な話だよ。
ワシはなぁ、ヒロシが中学生の時に離婚して、それから自分の事は自分でしてきたが、元が不精だからな、健康管理も適当でな、身体のあっちこっちがガタついていた。
だけど、ヒロシとユキちゃんと同居して、ワシは酒は飲むがタバコは止めた。飯だって三食用意してくれる。栄養も考えてな。ワシはなぁ、今はユキちゃんに
生かされてると思ってるんだよ。洗濯も食事も掃除も全部してくれて、あんたが同居を望んでるって聞いた時、ワシは有り難いと思ったよ。それは今も同じだよ。
だけど、出ていきたいと思った時は、それなりの理由が有るのだろうから、遠慮しなくていいんだよ。ワシの事はなぁ」義父の言葉に私は返事が出来ませんでした。
私に生かされてる、有り難いなんて。改めて義父には夫の事は言えないと思いました。夫とはラストチャンスという約束で、また生活を始めました。
しかし、その一週間後の土曜日、まさかの事態に。再びカトウさんから夫へ、電話がかかってきたのです。同じく夜の9時に。
続きはまた書きます。もう少しで完結しますので、付き合って下さい。お願いします。 ユキ
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