〈その日の朝〉
私「行ってきます」
妻「いってらっしゃい…」
私はいつも通りの"フリ"をして仕事に出掛けます。
結局、この日まで「行く」とも「行かない」とも妻は言わずじまい…そして私は聞く訳にはいかない。
家を出て、いつものコンビニでコーヒーを買い飲んでいた時に思い出しました。
私「あぁ!!今日は有給休暇を取ったんだった…泣」
飲みに誘われたと聞いた次の日に、仕事なんて手につかないだろうと考え休みを取っていたのでした。
私「仕事と言って出てるのに"心配で帰ってきた肝っ玉の小さい男"などと思われたくない…家の近所も会社の近所もウロウロできないし…やってしまった…」
私は仕方なくネカフェで時間を潰すことに。
漫画を読んだりアレコレしていましたが数時間で飽きてしまい、いつの間にか寝てしまっていました。
17:00のアラームが鳴り、そそくさと会計を済ませ急いで家へ。
"ガチャ"と玄関扉を引くと…鍵が閉まっています。
私「あぁ……行ったのか…」
なんとも言えない気持ちで家に入るとテーブルの上には置き手紙が…
《飲みに行ってきます。遅くならないように帰るから。心配しないで。みき槌》
黙ったまま秘密の缶を調べに二階へ…
手慣れた動作で蓋を開け、崩れないように全ての下着を出します。Tバックも紐パンもあります。
ガッカリのようなホッとしたような気持ち。
いつものように1人エッチをする気にもなれずリビングへ行きボーっとテレビを見ています。
私「お腹…空いたな。なんか食べに出るか」
車を走らせますが入る店が決まらず…
時刻は20時過ぎ…
ポ~ン
テル「お疲れ様です。今日はありがとうございます。楽しい時間を過ごさせてもらっています。21時頃になったら店を出て酔い覚ましに散歩して帰ります。もう少しだけ時間頂いていいですか?」
急いで車を道路の端に寄せ返信します。
私「そうですか。みきが楽しんでいるなら良かったです。そうですね22時には家路についてもらえれば」
ポ~ン
テル「ありがとうございます!了解しました!」
私「何が了解だよ…」
ティロ~ン
私「(妻から)LINEだ」
妻「5つ手前の○○駅まで車で送ってもらいます。テルくんは飲んでないから」
いつも使う絵文字を使わずに送ってきたコメント。楽しい雰囲気は消しているように見せかけていますが"テルくん"と表現してしまっている辺りで楽しく過ごしてる感は否めません。
ティロ~ン
妻「迎えに来てね」
私「了解です。気をつけて帰っておいで」
妻「はーい」
私は空腹も何処かへ行ってしまい急いで、その駅へ向かいます。ここからは20分もかからない距離。20時45分には到着してしまいました。
私「こんな所(駅のロータリー)に停めていたら…下ろすとしたら、ここだろうし鉢合わせはカッコ悪いな…」
車を駅の側にある造成地に移動し妻からLINEが来たらロータリーに出ようと思いました。
造成地なので街灯もポツポツとしかなく人気もない所。21時も過ぎ待ちくたびれウトウトし始めた時、白い軽のワンボックスカーが来ました。
私「うわ、商用車だ。この土地の管理の車かな…」
造成地の碁盤の目になった道をぐるぐる回っています。
私「注意しに来たら"ロータリーが車でいっぱいだったので、待たせてもらってます"とか言い訳をしよう」
と独り言を言いながら商用車を目で追い、こちらに来ないように祈ります。
…が、私の車の右斜め前方にこちらを向いて停まりました。そして人影が出てきます。
私「?」
人影はこちらに向かってくる様子はなく…商用車の斜め後方でスマホの画面の灯りがつきました。
ポ~ン
テル『すみません。みきさんが歩くのしんどいって言うので○○駅の近くでお話しすることにしました。22時まで時間もらえますか?』
私「えっ?!あの車…」
よく見ると助手席にも人影が。
私「あれだ!どうしよう今更、動くに動けない」
とりあえず、運転席から助手席側に寝そべる態勢になりスマホの灯りが向こうから見えないようにして返事をします。
私『わかりました…わかっていますね?』
と"何かあれば状況報告"の念押し。
を送り返した時には人影は車に乗り込む所で私の返信など見てもいませんでした。
あの人影がテルだったとしたら…の話ですが。
続く
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