二次会の場所は、私がたまに使うショットバーに移っていました。
ジャズの流れる店内で、カウンターの止まり木に二人並んだ私たち意外に客はいませんでした。
予想とおりというか、その場で彼に悩みを打ち明けられました。
悩みというのは彼女とのことでした。
彼の独白を聞いた私の第一印象は「あほらし」でした。
彼女との出会いがいかに素晴らしいものだったか。
その後の付き合いに、どれだけ胸を躍らせたか。
予想はしていたとはいえ、あまりに予想通りの内容に、欠伸を噛み殺すのが精一杯でした、
のろけるならこんな中年のおっさん相手でなく他でやってくれ、そう思い早々と席を立とうとしました。
話の結末が見えたような気がしたからです。
誕生日のプレゼントがブランド物じゃないのが気に入らないだの、好きな音楽が合わないだの、くだらない痴話話を聞くほど俺も暇じゃないんだよ。
そう思っていた私の意識が少し変わったのは、彼の話が少し予想外の方向に傾き始めたからです。
それは、不和の原因が、彼女とのセックスが上手くいかないということだったからです。
中年親父の悲しい性で、話題がセックスとなった途端、食いついてしまいました。
不謹慎だとは思いつつ、詳細を尋ねたのですが、その頃から酔いもあったのか彼の独白は要領を得なくなり、結局、彼の悩みの核心には至らぬまま、しまいには田中君が泣き出す始末で、身長170に満たない小柄な私が、二メートル近い大男の肩を叩いて慰めているのは傍から見てもさぞ滑稽に写ったことでしょう。
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