五月、連休前の勤務を終え帰宅すると、男物の靴が目に入りました。最近ではもう見慣れた30センチはあろうかというスニーカー。田中君が来ていることがすぐにわかりました。
「ただいま」
リビングのドアを開けると、テーブルを挟んで向かい合い談笑していた妻と田中君が揃って私のほうに顔を向けました。
「おかえりなさい」
「お邪魔してます。お疲れ様でした」
「いらっしゃい」とだけ答えると、寝室に入り着替えました。
初めのころは田中君を招待する度に許可を求めていた妻ですが、最近は様子が違ってきました。
「お招きしてもいい?」がいつの間にか「呼んでもいいでしょう?」になり、最近では「明日、みえることになってるからね」といった具合です。
そのことに腹を立てたり、不満を感じているわけではありません。彼は知れば知るほど、礼儀正しく、誠実で、思いやりのある好青年でした。彼と酒を酌み交わし、世間話をしたり、時に議論を交わす時間は、私にとって楽しみのひとつになっていました。
ただ私以上に妻が、彼の来訪を心待ちにし、彼と過ごす時間を楽しんでいるように見えることに、どこか引っ掛かりを感じていたのです。
これが単なる嫉妬であれば、私も大して気にもしなかったのでしょうが、そうでないことがもやもやの原因だと感じていました。
その原因というのは、あれ以来、時折湧き上がってくる妄想です。
妻が彼に抱かれて乱れている姿を想像してしまうことが、彼と親しくなればなるほど増えていきました。
しかも、そんな自分に戸惑うばかりだった最初の頃に比べ、最近では明らかに興奮を覚えてしまっていることに気づいたのです。
自分は変態なのだろうか。
心配になって調べました。そして「寝取られ」の意味を知りました。言葉では耳にしたことがありましたが、その意味を知り、そのジャンルが一定のニーズがあることを知って、自分が人の道を外れるほどの変態、鬼畜でないことにとりあえず安心しました。その後、さまざまなサイトや掲示板を覗くうちに、私の「寝取られ」願望は日増しに高まっていったのです。
着替えを終えてリビングに戻ると、妻が夕食をテーブルに並べているところでした。今日の妻は胸元がV字に開いた薄手のカットソーにソフトデニムのジーンズという服装です。普段着といえばそうなのですが、上下ともに肌にぴったりとはりついて体のラインを強調するコーディネートです。
実際、皿を田中君の前に置くときには、シャツの胸元から妻のDカップの谷間が露になり、それに気づいた妻と彼が一瞬目を合わせ、お互いに頬を赤らめ視線を逸らせるのがわかりました。以前であれば気づきもしなかった、本当に刹那の出来事なのですが、寝取られ願望に目覚めてからは、そんな瞬間ばかりを捜し求め目で追うようになっていました。
そして、今では確信していました。
妻は田中君に男性を感じ、田中君も妻を女として見ている。さらに、それに戸惑うどころか、興奮を覚えている自分がいることを。
この頃から私の中に、ある計画が湧き上がっていました。
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