Aさんの足取りは何度か見た千鳥足でした。更に、一緒に歩いて来る
嫁も千鳥足と言っていいかもしれませんでした。
私は物陰に隠れるしかありませんでした。私は飲んでいなかった事も
あってかある意味冷静でした。直ぐに着信音をゼロにしました。
Aさんの家の方へ二人が入って行きました。玄関の明かりと部屋の明かりが
点きました。様子を伺っていると、嫁が一人Aさんの家から出てきました。
私は思わずビックリしました。数分後でした。風呂場の明かりが点き湯沸かし器の
作動音も聞こえました。私は「一度連絡してよ」とだけラインを送りました。
風呂場の明かりも消えると嫁から連絡が入りました。
我が家の奥にあるプレハブの陰に移動しました。
「お帰り、どだった?楽しかった?」そんな返事を返した時でした。
庭先に面したリビング部屋のカーテンが半分空きました。
更にビックリして身を潜めました。「何もないから。けどドキドキはしたよ。」
「今もドキドキしてるのか?」「正直、ドキドキしてる。」
そこにはカーテンを半分開けた嫁が立っている姿がありました。
窓ガラスの下半分は擦りガラスでしたが、明らかに風呂上がりのままでしょう
「Aさんはどんな状態なの?」「飲んでたし、もう寝てしまてるよ」
「今日は変な気持ちにならなかったの?」「少しなったからドキドキしてる」
私から見れば、そのドキドキは自分で晒しているからだろと思いました。
嫁は窓を少し開けました。私は、バイブ設定も含め全ての着信案内をoffにしました。
私は場所を更に移動しました。我が家の裏に回りました。
「Aさんの家にはもう行かないの?」「行けばいいの?」
あの夜の様に私からの指示を待つかのような返事でした。
しかし、あの日の夜と違うのは嫁の気持ちとAさんと一緒に飲んでいる事でした。
それでも私が嫁に出した答えは「一度だけAさんの家に戻ってみようか?」
そんな返事をした時でした。Aさんの家のカーテンも開きました。
私は更に身を隠すしかありませんでした。
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